父娘の言葉にならない切なさと優しさ

 父親と娘、普通の親子でも複雑な関係になりがちです。
 そして、この物語の娘は、母親が托卵するかのように父親に預けた2人です。
 長女の視点で静かに、それでいて苦労が絶えなかったであろう日々をさらりと語る様は、感情的に辛さをぶちまけるよりも私たち読者の胸に迫ってくるものがあります。
 片親に2人の娘、時に協力し、時にぶつかり合い、それでも一緒に暮らしていく。
 世間一般からみると、母親に捨てられた彼女たちは不幸せなのかもしれない。
 それでも、父と娘の間には、ほんのりと温かい愛情がある、切ない温度の物語です。