第2話犬耳少女

「ちょっと! しっかりしなさいよ!」

犬耳少女の声が頭の中に響いた。

(ああ、聞こえる… 近くから声が聞こえる…)


「--? ……、--っ!?」

目を開けると、目と鼻の先に犬耳少女の顔があったことに驚き、瞬時に起き上がり、立ち上がった。

「な、なんだよ! びっくりするじゃねえかよぉ!」


あまりにも犬耳の顔が近かったため、リュウセイは動揺を隠すことができなかった。

「はぁ、何?その態度!! 誰が助けてあげたと思ってんの?」


「お前が助けてくれたのか?」


「そうよ、はじめてみたわ、自分からあんなに危ない滝に突っ込むアホがいたなん てある意味すごいわ。しかも、私を一目見て化け物呼ばわりするなんて失礼な男 ね。」


(おい、ミカド!)


――はい!どうしました?リュウセイ様!――


(この犬耳少女は、モンスターではないのか?)


――モンスターでは、ありません。彼女は『亜人』ですね。簡単にいうと彼女は人間と犬のハーフみたいなようなものです。――


(襲ってくるわけじゃないよな?)


――まあ、亜人でも様々な種族がいますからね。でも、彼女をみるとワードッグ(犬族)なので、大丈夫だと思います!――


(なんで、大丈夫だといえる?)


――ワードッグは一般的に善良な種族と言われているので。しかも、リュウセイ様を助けてくれたのですから大丈夫でしょ!――


(確かに… なら安心か。てか、なんで、それを早く言ってくれなかったんだよ!早く言ってくれれば逃げずに済んだんじゃないか!)


――だって、おもしろそうだったんですもん――


(なんだそれ……)


――じゃあ、頑張ってくださいね!――

ミカドとの会話が途切れた。


「ほんとに化け物じゃないんだ………。」

少し安心した、リュウセイだった。


「さっきから言ってるじゃないの!! 私の能力がなかったら助からずに死んでたんだからね! 感謝しなさいよ。」


犬耳の言葉に引っかかった。

(……今、こいつ能力って言ってなかったか・・)


「おい、今、『私の能力で』って言ったよな?」

「い、いったわよ、私の能力であなたを水中から助けてあげたのよ。」


彼女の言っていることが全然理解することができていない、リュウセイの目は丸くなっていた。

「ちょっと、待て 全然整理ができていないんだが……まず、能力ってなんだ?」


「本当にわからないの? この世に生きている人ならば、普通は少しは知っているものなのに!」

馬鹿にしたような言い方をされたリュウセイは自然とふくれっつらな顔になっていた。


そんな顔に対して、犬耳は

「何よ、何か言いたそうな顔ね、よくそんな態度ができるわね、誰が助けてあげたと思っているの?」

犬耳の言葉に言い返せない。


「まぁ、あなたのおかげでこの世には常識を知らない人もいることが分かったから。 しょうがないわね、能力について教えてあげる。」        


「ど、どうも……」


「じゃあ、教えてあげる」

「この世界に生きる者はそれぞれ生まれ持った能力を持っているの、例えば、まるで写真のように正確にそのシーンを正確に覚えていたり、一度聞いただけで暗証できたりできるのよ」


「なんだ、そういう人はこっちの世界でもいるぜ。」


「でもね、その能力にはさらに上があるのよ。」


「能力の上?」

リュウセイは不思議そうに○○の顔をみた。


「そう、自分たちの種族特有の能力を使えるものがいるということよ。」


「私の先祖は獣族。アニマノイドというわ。まあ、私が住んでる里は昔、獣族が住んでいたところだから。みんな獣族だけどね。」


「じゃあ、他にも種族がいるということか?」


「そうよ、エルフもいるわ まあ、私が知らない種族はまだ、たくさんいると思うわよ」


「能力についての話に戻るわね。さっき言った、先祖の能力を使えるという話ね、私の先祖は獣族だから、獣族特有の能力を使うことができるの。この世界ではそれを『特有スキル』というわ。」


「じゃあ、他の種族の能力は?」


「使えないわ、自分の先祖の特有のスキルしか使うことはできない。」


「ま、まじかよ…」


「マジよ、でもね、獣族でもまたいろいろな種類があるのよ。私は獣族だけど、そ の中のワードック(犬族)という種族なのよ。だから、同じ獣族といってもいろいろ な奴がいるのよ。」


「じゃあ、さっきはあんたの種族特有のスキルを使って俺を助けてくれたのか?」


「いや、違うわ。」

リュウセイの質問に対して、○○は即答で答えた。


「どゆこと?」


「つまりね、特有のスキルもあれば共有できるスキルもあるということなのよ。だ から、私は、その能力を使って助けてあげたわけよ。わかった?」


言っていることは理解できていたが本当にスキルなんてあるのかとまだ、半信半疑であったため、

「じゃあ、その… 俺を助けたという共有するスキルというもんをみせてくれよ」

リュウセイは興味津々な顔で○○をみた。


「信じていないのね、いいわ 見せてあげる」

そう言った犬耳は近くにあった木の枝を拾い手に取った。

「見てなさい」

すると、木の枝の先から青い光が伸びて、まるでロープのようだ。

「どう? これで信じてくれた?」


「お、おう… でも、お前じゃ、俺の体を持ち上げるのは難しいだろ、どうやった んだ?」


犬耳は微笑んだ。

「こうやったの。」

すると、犬耳の体が青い光がまとった。

そして、先程の木の枝の青い光が近くにあった、大木の枝に巻きついた。


「行くわよぉー。せーの、うぉりゃああああ‼」

かけ声とともに大木は根ともにひっこぬいた。

犬耳は満面の笑みで

「これで信じてくれたわよね!」


「は、はい…… 今のが共有のスキルというわけですね……」


「そうよ! 道具の強化と身体強化よ 他にもいろいろあるけどね!」


「マジでスゲェなぁ……」

驚きと凄さでどんな顔をしていいのか分からないリュウセイ。


犬耳はどうだ!みたか!というような顔をしていた。


そのあと、たまたま腕時計を確認した。

「こんなことしていたら、あっという間にお昼ね。」

すると、

ぐううううう…… 

ぐるぐるぐる……

ぎゅるぎゅるぎゅる……


リュウセイは真っ赤の顔で恥ずかしそうに眼を合わせようとしない。

「もしかしてお腹の音?」

声を出さずに軽くうなずいた。


「ハハハハハハハハ」

犬耳は腹を抱えて笑った。


「はぁー、こんなに笑ったのは久しぶりよ。 あんた、面白いやつね」

リュウセイはまだ目を合わせようとしなかった。


「しょうがないわね、この森を出ると近くに私たちの里があるのよ、私の家で、何かごちそうしてあげる!こんなに笑わせてもらったお礼よ。」

やっと目を合わせた。


「あ、ありがとな、犬耳。」


犬耳の表情は険しくなり

「私の名前は犬耳じゃない!私はレオナルド=ワンショットよ!レオでいいい   わ!」


「ああ、悪かったよ。レオ。」


「で、あんたの名前は?」


「リュウセイ。」

「そう、じゃあ、リュウセイ、行きましょうか」

「おう……」


その後、

二人は森を出て獣族の里に向かっていた。



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