第4話 バス

 私はハカセの家を出ると、隣の和菓子屋のおばちゃんにも手を振って「いってきまーす」と声をかけ出かけた。雑木林ぞうきばやしの横に続いているゆるやかな坂道を下りながら、夏の日差ひざしが作り出している木漏こもれ日の影を見て歩いた。横を見ると、ガードレールしに町の景色が一望いちぼうできる。ハカセの家は町でも高台たかだいの方にあり、平野へいやの町のどこに何があるのかを指さし確認できるほどだ。


 坂道を下っていくと、ガードレールが一か所だけ途切とぎれている部分があり、そこから急斜面きゅうしゃめんなコンクリートの長い階段がある。町を見下みおろすように、階段の真ん中にある手すりに手をかけて下りると、左手に林を大きくけずってできたくぼみに標識ひょうしきとベンチが1つ置かれているバス停へと出ることができる。


バス停のベンチはすぐ後ろから生えているブナの木の枝葉えだは木陰こかげになり、夏でも意外いがいすずしい。ブナの木は日光にっこうをあびて青々あおあおとした葉を実らせ元気よく成長しているようだ。


 私はバス停の標識にってある色あせた時刻表をながめた。今日は夏の中旬ちゅうじゅんにしてはいい風がふいていて、時刻表のはしのはがれかけている部分がパタパタと風になびいている。思っていた通り、あと5分くらいで大学まで直通で行けるバスが来るはず。


となり町で乗りえるのも含めれば大学に行くバスは多少はあるけれど、直接1本で行けるバスは少ない。だから、乗り遅れないように時刻表をケータイ電話の写真で保存をしておき、いつでも見られるようにしている。ただでさえ行くのに1時間近くかかるのに、乗り換えまでしているといつ大学に行きつくかわからない。


山の切り立ったへんぴなところに大学があるため、電車では行くことができず、公共の交通機関ではバスで行くしか手段がない。


 しばらくすると、白地に赤のラインが入ったこの町ではよく見る型のバスがやって来た。バスの乗車口じょうしゃぐちの扉が開くと、私は乗り込み、定期券のカードを車載機しゃさいきにタッチして、だいたいいつも座っている一番後ろの窓側の席に座った。


 バスはれながらゆっくりと動きだし、高台の坂を下り街中の古い民家が続く通りへと走りだした。通りには昭和に建てられたであろう年代を感じる古ぼけた街灯がいとう等間隔とうかんかくに建っており、この通りだけはまだ昔の面影おもかげが強く残っている。


バスの窓から見える町の景色は見慣みなれたけど、考え事をするときはこの景色を見ると、なんだか頭がすっきりとして考えられる。電車や車に乗って遠くへ出かけるのが好きだからかも。近いうちに計画して旅行に行くのもいいかもしれない。せっかくずっと住んでいた場所を離れ新しい町に住んでいるから、もう少しこの町や近くの観光地かんこうちを見て回りたい。




 ここに来て1年近くなるけど、振り返るといろんなことがあった。たくさんの出会いがあったし、いろんな思い出もできた。大学に行くまでまだ時間があるから、その間にこの町のことや、出来事を整理することにした。




 この町の名前は金平町こんぺいまち総人口そうじんこうは40万人程、日本海側に面してて中心産業は農業と漁業。一部に小高い山があるけどおおむね平坦へいたんな地形で、そのため人口の割合に対して自転車を使っている人が多いみたい。


町の中心には在来線ざいらいせんの電車の駅があり、その周辺しゅうへんが一番栄えていて百貨店ひゃっかてんやファッションビルが集まってる繁華街はんかがい、また小規模しょうきぼだけど企業の支社があるビジネス街にもなってる。


駅から離れるとハカセの家みたいに古い民家も多くて、どこか昔の城下町じょうかまち面影おもかげを残してる風情ふぜいもところどころにある。


この町は年々人口が増加し都市の開発が進んではいるけど、まだ地方型都市ちほうがたとしというのを抜け出せず、となり高層こうそうビルが建ちならんでる霰町(あられまち)と比べると物足ものたりない。


だけど、大きなデパートや映画館もあるし、市営しえいの美術館や図書館、あとは市民プールなんかもあって住んでる分には不自由なく楽しく暮らせてる。




 なんで1年程しかこの町に住んでない私がこんな話をできるかというと、大学の先生からお願いされている課題に関係していて、昨日の夜にこの町のことを必死にパソコンで調べたからにほかならないのだ。


 いろいろ町の話をしたけど、私的にこの町の好きなところはお祭りやイベントが多いところかな。


8月にあるお祭りや行事だと、花火大会や灯篭流とうろうながし、小中学校の場所をかりてする校区祭り。イベントだと、近隣きんりんの高校や大学、短大の学生が描いた絵や造形の作品を町の公民館こうみんかん空家あきや展示てんじして誰でも自由に見て回ることができる「学生アート通り」っていうのがある。


この絵を見て回れるイベントはもう終わっちゃったけど、実は私とハカセは主催側しゅさいがわでこのイベントに参加してたの。


 ハカセが今年から商工会しょうこうかいっていう法人団体ほうじんだんたい所属しょぞくしていて、そういったイベントに参加しないですかと誘われるの。商工会っていうのは私も詳しくはわからないけど、商工業者しょうこうぎょうしゃ経営改善けいえいかいぜん地域内経済復興ちいきないけいざいふっこうなんかを目的に活動する団体だとかなんとか。


国が認定した経営指導員けいえいしどういんの人が私達みたいな小規模事業者しょうきぼじぎょうしゃ助言じょげん指導しどうもしてくれるんだって。商工会に入ると会費のお金を出さないといけないみたいだけど、メリットの方が大きいから入ったってハカセが前に言っていた。


 私たちが参加したイベントも商店街を会場にして、お店を町の人達に知ってもらい足を運んでもらうのが目的の商工会主催しょうこうかいしゅさいのものだった。


 



 そのイベントの「学生アート通り」では、家々にこの街並まちなみの風景ふうけいや地元の人達を描いた絵が飾られ、造形作品も民家やこの街の特産物とくさんぶつの食べ物なんかを樹脂じゅしやガラスや粘土ねんどで細かに作られたものを説明が書かれたプレートと共にテーブルに置かれていて、どちらも地元民じもとみんが楽しめる作品達だった。


 また、ただ絵を飾るだけじゃなく、スタンプラリーをやって絵が飾られている空き家や公民館で、お客さんにくばっておいたチラシの表にスタンプを押してもらい、スタンプが全部集まったら安いものだけどハンカチやコップやお菓子等といった景品と交換できるようにしてたの。


 駅近くの広場では、実際にモノ作りが体験できるイベントも開かれてた。ペーパークラフトと言って、細い厚紙あつがみみカゴなんかを作る方法を美術大の学生に教えてもらいながら小さい子が作っていた。


私もカゴ作りをしてみたかったけど、小さな子の間に「わー」て行ってって入るわけにもいかず、ながめるだけにとどめておいた…。そんなふうに、できるだけ多くの人たちに来てもらえるよう工夫くふうがされてた。


 そこまで私たちの利益につながるイベントではなかったけど、いつもはお世話になってる商工会主催しょうこうかいしゅさいのものなので手伝わないわけにはいかない。


 イベントでの準備は、大学の学生や先生方が絵等を空き家や公民館の場所ごとにかざるくらいで、私たちがするのはそれらを運ぶお手伝い。


 このイベントでは企画の話し合いも学生の子たちが参加していて、ハカセからそのことを聞いたときはえらいなと思うのと、私もそういったことを学生の間にしてみたいなとも思った。


 準備の手伝いをしているときは、何度も美術大の学生に間違われ、「どこのクラスの子ですか?」とよく聞かれてた。そんな風に声をかけられる機会も多くあったためか、他の大学の人達と交流を深めることができ、私的にはイベントに関われてホントに良かった。


私はアルバイトがあったため、大学のサークルには入らなかったけど、楽しそうにこういったイベントの準備をしている学生を見るとうらやましくもあった。今が楽しくないってわけじゃないんだけど、今よりもっと毎日を充実じゅうじつさせることができるんじゃないかって思えてくる。それを実現するにはきっと少しの勇気と行動は必要になってくるんだろうけど。





 イベント当日は私は公民館の片隅かたすみに準備してある長机とパイプ椅子いすの席に座り、スタンプラリーの景品けいひんを渡すお仕事をすることになっていたの。町のあちこちにある絵が展示てんじしている場所をまわり、チラシの表にスタンプを全部押してもらった人たちに、そのチラシと交換でいろんな景品を渡していく作業。


 いくつかの景品を来た人に選んでもらい、選んでもらった景品を渡したら、在庫確認ざいこかくにんの紙に正の字を書いて、残りの景品数がわかるようにしていく。机に置かれている景品がなくなると、私が座っている場所の後ろに準備している段ボールの箱から無くなった景品を取り出し補充ほじゅうしていく。その補充のための景品も無くなった場合は、来た人には他の景品を選んでもらうよう説明する。お仕事の内容はこんな感じかな。


 私は1週間すべてその作業をしていたんじゃなくて、月、木、日曜日の3日だけ参加することになってた。また、1人でこの作業をするのではなく、私ともう一人、日替ひがわりで学生が私のとなりに座って作業の手伝いをしてくれる。


私の隣に座るのは町の美術科の高校生で、3日とも女の子の予定だった。さすがに長時間2人でやる作業を男女でさせるわけにもいかないだろうし、高校側もそこは配慮はいりょしたのかなとも思った。


私が作業をしてない日にその公民館をのぞいてみると思った通り男の子の学生2二人がペアになって作業をしていた。この、2人でやる景品の受け渡し作業だけど、高校生と一緒にすると聞いたときはどうなるんだろうと心配になった。向こうにして見ると私はすごく大人だろうから、へんな話や行動はできないなと身構みまがえたのを覚えてる。





 イベントの初日に一緒に作業をしてくれた子は、名前は若羅珠 多途祢(わからず たずね)という子で、地元の高校に通う3年生。鼻が高く日本美人といった顔立ちの子だった。背が私より少し低くやせ型で、長い髪は後ろにひとくくりにしてむすんでおり、前髪もまっすぐ切りそろえられていた。学校の制服のうすい青色のシャツを着ていて、首元には赤のネクタイをしている。最初見た感じは優等生のような印象いんしょうをうけた。


 美術科の子だからかな。アウトドア派というより外に出ず家にいるほうを好みそうに見えた。緊張していて素朴そぼくな姿を見ていると、私も3年前はこんな感じだったなぁとその子を見て昔を思い出しなつかしくなった。一通り簡単な自己紹介をした後、「よろしくおねがいします。」と2人で言いあって、作業をはじめた。




 「景品の受け渡しの流れとか大丈夫?用紙の書き方はわかる?」

ようすをうかがいながら私はその少女に話しかけた。

「あ、はい…たぶん。先生から一通り教えてはもらったので」

緊張なのか、その子は一歩引いてる様子ようすだった。今思えば、お仕事は簡

な作業だったけど、初めてのことで自信がない姿がそう見えたのかもしれない。


 「初めは、私が景品の受け渡していくね。見ててわからないことがあったら何でも聞いて、私も分からなかったら、ケータイで電話をして他のかかりの人に聞くこともできるから」

今、ハカセは学生の作品が展示されている他の空き家で受付とスタンプを押す係りをしてる。そこまで忙しくはないだろうからハカセに電話して聞くことはできるはず。


 「ありがとうございます。あの、私昔からすごくミスが多いんです。手際てぎわも悪いし、まいごさんに迷惑をかけるかもしれません」

その子が申し訳なさそうに言うので、私が「大丈夫、ミスしたら私のせいにしたらいいよ」と言ってあげると、その子は首を横にふりならがらも、笑顔がこぼれていた。


 私は仲良くなるチャンスだと思いそこから話しを広げ、その子のことを聞き出した。自分が相手のことに興味があることを伝えるのが相手との距離きょりちぢめる最初のステップだと考えてた私は、アピールをねた質問をその後も続け、その子がどんな子かだんだん理解することができた。



 この子は言うとおり少しぬけてる部分があるみたいで、1度学校のカバンを忘れて登校とうこうしたことがあるらしく、今でも友達からそのことをやかされるとなげいていた。ただ、考えや発想はっそうはユニークで、他の人とズレがある分その子の話しはどこか新鮮しんせんさをび、聞いていて楽しい。


 「美術専門の高校ってどんなところ?全然想像がつかないけど大変なの?」

「絵を描いたりするのは好きですし、楽しいから大変ではないんですけど、まわりの子が美術が上手で、劣等感れっとうかんを感じるのがちょっと悩みです。

 ある絵の課題を学校へ提出ていしゅつする時期じきに、友達に自分の絵が下手だから提出できないことを相談したら、『私も下手だから、全然気にする必要ないよ!』って言ってくれて安心してたんですけど、次の日その友達にルーベンスみたいな絵持ってこられて、裏切うらぎられたんです」

その子は目を細め、苦い思い出を頭の中で浮かべてるようだ。

「あぁ、学生のときはそういことよくあるよね。勉強してないよって言って、本当は勉強してたり」

「はい、最初その子のことを仲間だと思ってたんですけど、仲間じゃなかったんです。てきだったんですよ!」

「友達よ」




 そんなこんなで雑談をしながら2人で親睦しんぼくを深めた。ちょっと話しただけだけど、フィーリング?って言うのかな、人と人ってどうしても相性あいしょうみたいなものがあったりするけど、この子とはすごく気が合うと感じた。


 わたしはその子のことも他の友達と同じように下の名前で呼んでいいか了解を得て、「たずね」と呼ぶようにし、たずねも私のことをまいごと呼ぶようにと少しムリを言ってお願いしておいた。


 イベントの作業は順調じゅんちょうで、公民館に来たお客さんに景品を受け渡すのを私がやって、たずねが在庫数確認用紙ざいこすうかくにんようしにえんぴつでチェックしていくといったように、役割分担やくわりぶんたんをして作業をした。たずねはすごくフレンドリーで人にかべをつくらず、だれとでも仲よくなれる子だったため、高校生ってなんとなく恐いっていうイメージを私から消してくれていた。


 そして、作業をしながら話していくうちにたずねが今年わたしが通っている大学を受験することが分かった。聞くと、たずねが受験をする大学の学生(私)がこのイベントの手伝いをするから、一緒に参加して大学の話を聞いてみたらどうだと先生に言われたそう。どうりで私とよく話をしてくれるわけだ。


もっと早くそのことを言ってくれたらいいのにと聞くと。「イベントのお手伝いが1番の目的で、大学のことは余裕よゆうがあったら話そうと思ってたんです」と返してきた。

どうやら、たずねはたずねなりに考えながら私と話してくれていたようだ。


 本題の大学の話しになると、私はとりあえず、たずねにとって目の前の受験が心配だろうと思い、自分が昔よく使っていた問題集の本を教え、試験に出やすいところも覚えてる範囲で教えてあげた。夏休みが終わると新しいことを覚える勉強から、次は覚えたことを活かして問題を解いていくことが多くなってくるはず。とにかくいて、テストであたふたとしないように慣れていかなくてはいけないからだ。



私はたずねがいつも持ち歩いてるらしい参考書を見ながら、「この教科のこの範囲ははほとんど出ないから、勉強するのは後回しにしていいよ」とか自分が昔受験生だった頃の記憶を辿たどりアドバイスするのを、たずねはフンフンとうなずきながら聞いていた。


熱心に私の話しを聞くたずねを見ていると、どうにか合格してほしい気持ちがいてくる。

「まいごさん、3年前習ってたことも教えることができるんですね」

たずねは私の話を一通り聞き終わると、参考書にメモをして言った。

「うーん…私は受験の時は余裕がなくて必死だったから、その分、記憶に強く残ってるのかも」

「そうですか…。それにしても試験に出やすい範囲も覚えてるなんて、驚きました」

たずねは、不思議そうに私を見た。


 「もしかして、まいごさん。最近、うわさになってる選ばれた人なんじゃないですか?」

たずねは口元を笑顔にしながら私に聞いてきた。

「選ばれた人?」

「知りませんか?ウチの学校ではこの噂みんな知ってますよ」

たずねは楽しそうに私に話してくれた。

「世の中の人たちで稀(まれ)にいる、身体能力が異常に発達している人たちがいるって噂です」

「身体能力?そういったことは聞いたことないかな…。それって例えばどんな人のことを言うの?」

「そうですね。例えば記憶力が良くて、視界に入ったものや自分が胎児のときのことまで細かく覚えてるとか、目が良くて物体を粒子りゅうしレベルで見ることが出来るとかですかね。その類稀(たぐいまれ)なる才能を伸ばし守るため、選ばれた人達は国があらゆる面の援助をし、将来は国を背負しょって立つ重役にくとか」


「そんな人がいるの?」

「いえ、ただの噂話です。でも、その話しだと、その選ばれた人たちには共通点があって、みんな血管が見えそうなくらい色白で、月1回、必ず大きな病院に通って体の検査を受けてるそうです」

「噂話にしては内容がこまかいのね」

「もしかしたらまいごさんも気づいてないだけで、隠れた才能が眠ってるかもしれませんよ。もし違ってたとしても、まいごさんは私の中では博識はくしきな選ばれた人です。私が認定にんていします」

「うん…ありがとう」




 その後も作業を進めながらたずねと他愛のない話をして笑った。大学の話しを聞く目的があったにせよ、相性の良さを感じた私は、来年たずねが大学に来たら仲よくなりたいなと思った。だから、私は自分が働いている喫茶店の名前をそれとなく教え、大学のことや勉強で分からないことがあったら教えてあげるからと言っておいた。また、大学の文化祭に暇だったら来てほしいとも伝えた。大学を自由に見て回れるいい機会きかいだし自分としても来てほしい理由があったため、けっこう本気で誘ってた。


 町のイベントは朝の10時から17時までの7時間もあったけど楽しかったからか、あっという間に時間が過ぎて行った。


イベントが終わりかたづけをして外にでると空がちょうどオレンジ色になろうとしているところで、青とオレンジのグラデーションで綺麗になっていた。公民館のドアを閉め鍵をかけているとたずねが話しかけてきた。


 「まいごさん、今日はいろいろとありがとうございました。お手伝いのはずが話しばかりしてすみません」

「いえ、こちらこそ若い子の話しを聞く機会なんてあまりないから楽しかったよ。文化祭よかったら来てね。忙しかったら仕方ないけど、来てくれたら嬉しくて泣いちゃうから」

そう言うとたずねは目を細めて口元を笑顔にした。

「本当ですか?泣くまでずっとまいごさんの顔見てますからね」


そんな話をしながら二人で笑った。このときは、楽しくてなんだか私も高校生のときに戻ったような感覚になって嬉しかったのと、会って数時間だったけど別れるさみしさが合わさったような高揚こうようしている気持ちだった。


 「じゃあまたね」と私が言うと、「はい、おつかれさまでした」とたずねも言って手をり別れた。まだ、イベントの初日だったけどこのさびしい感じはなんなんだろと思いながらハカセの家に帰ったのを覚えている。


きっとあの子の人を引き付ける力が強いせいで、別れた後の反動が強いんだろう。ああいった相性あいしょうがいい子と出会う機会って、きっと人生で何回かしかない。だからこそ一期一会で会った人たちとのかかわりは大事にしていきたいし、仲よくなる機会を逃したくないと思った。





 イベントの手伝いに参加した2日目も同じように私と他の高校生のペアで作業していった。そのときペアになった子はどうやらたずねの友達のようで、友達同士の2人で一緒にイベントに参加することに決めていたそう。


2日目にペアになった子の名前は花佐須 津奈木(はなさず つなぎ)。たずねと同じように学校の制服を着ており、背丈せたけはたずねよりさらに低く、髪を二つに結んでるせいもあり中学生のようで、どことなく小動物を思い出させる雰囲気を感じた。


 たずねの話をすると「あの子と一緒にいるとすぐミスするし大変じゃなかったですか?疲れませんでした?」と聞かれた。

景品の受け渡しもちゃんとしてくれてたよと言うと、「いつもさんがいたから、きっとすごく気をつけたんだと思います。あの子この前だって帰りに乗るバス間違えて、となり町のほうまで1人で行ってたんですよ」と話してくれた。

私は笑ってその子の話を聞いていた。


 その子は困ってる感じでたずねのことを話していたけど、表情は明るく見えた。きっとたずねが友達であり、ほっておけない存在になってしまってるんだろう。


 その子は遠い目で部屋の空間を見ながらたずねのことを話した。

「なんかあの子、いつもふらふらしていて突拍子とっぴょうしがないというか。大学もみんな美術関係の大学や短大を受験するのに、あの子だけ普通の大学を受験するんですよ。どう思います?せっかく3年間美術の勉強してきたのに全部無駄になっちゃうし、正直もう、たずねがよく分からないんです」


 私はそれを聞いてハっとした。そういえばたずねは美術科の高校に通っていて、それなのに私の美術とは関係ない大学を受験するのは確かにかなりの方向転換ほうこうてんかんだ。たしか、美術科って数学や国語といった科目の授業がほかの科より少なくて、その分美術の授業が多くなっていたはず。私が言うのもなんだけど、私が通っている大学はこのあたりでもかなり偏差値が高く、合格ラインの点数を取るのは至難しなん。そのことに気が付いた途端とたん、私は不安になってきてしまった。


 「ごめんね、ちょとプライベートなこと聞いていい?」

「え?はい、大丈夫です。」

その子はきょとんと、なんだろうという表情で私の顔を見た。

「たずねの美術以外の科目のテストの成績ってどうだったか聞いていい?」

私は、かなりんだ質問を小声でおそるおそる言った。


「あぁ、良いですよ。私のクラスでは1番いいです。たずね、中学校のころから成績優秀だったみたいで、本当は高校ももっと偏差値が上の高校を受けるつもりだったそうなんです。それが、急にたずねが美術の高校を受けるって言い出して、受けるのに親からすごく反対されたって聞いたことがあります。昔から性格は変わってないみたいです…」


 私はそれを聞いてホっとした。そういえば、大学受験もあまりに上の大学を受けようとすると高校の先生が説得して、その子にあった大学を受けさせるはず。すると、今のところは大丈夫なのかもしれない。


 たずねの話を終えるとその子はうつむいて、なにか考えごとをしているように見えた。私にはその子の今の気持ちがなんとなく読み取れる。きっとこの子はたずねが同じ美術大学に通えるかもと思っていたのだろう。3年間同じ高校に通ってせっかく友達になれたのに、急に普通の大学に行くとたずねが言いだしショックだったに違いない。


 「そうだね。ちょっとあの子も自由すぎる性格かもね。きっと後悔しないように自分に正直に生きてるんだろうとは思うけど」

私は、その子の落ち込んでいるような顔を横目で見ながら言った。

「あの子、将来の進路は自由に決めてるけど、友達とは高校を卒業しても変わらず同じように会って遊びそうじゃない?」


 たずねの友達は顔をあげて「そうですか?」と私に聞いた。

「高校時代の友達って、忘れたくても忘れられないから。私もいまだにその時の友達のことを考えて悩んだりしてる。考えすぎて、ときどき嫌になっちゃうけどね」


私はこの子が信じてくれるかなと思いながら自分のことを話した。その子の顔を見るとさっきより表情が元気になってるような気がした。


 「いつもさんは、たずねが受験する大学にかよってるんですよね?」

「そうだよ」

「もし、たずねがいつもさんの大学に入学したときは、少し面倒めんどう見てやってもらえませんか?あの子変だから、友達とかできずに1人でうろうろしてるかもしれないので、いつもさんと一緒ならきっとあの子も安心できると思います」


 この言葉を聞いて、なんて友達思いのいい子なんだろうと思ったのと、こういったことを恥ずかしがらずに言えるのは若さの特権とっけんだなとも思った。


 わたしはその子に「たずねが入学したら必ず声かけるから心配しなくていいよ」と言うと、ホっとしたようで、「よかったです。ありがとうございます」とおちついた口調でその子がお礼を言ってくれた。


 その後、その子ともたずねと同じように下の名で呼び合うまで仲よくなることができた。また、私の大学の文化祭によかったらたずねと一緒に来てねと誘っておいた。勉強の息抜きにはなるだろうし、大学は違うけど、これからも仲よくできたらと思ったからだ。



 たずねとつなぎの2人を見ていて、ずっと昔の自分とねむりのことがダブってしまいしかたがなかった。つなぎがたずねのことを話しているとき、自分はねむりのことをこんなふうに話すことができるだろうかと考えた。他の人にねむりがどんな人だったか聞かれたら、あの子みたいに表現できるかな…。


 その日のイベントも何事もなく無事に終わり、イベントの参加が2日目だったためか、かたずけも2人でスムーズに終わらせることができた。


 そして、公民館のドアのカギを閉めた帰りぎわに、つなぎは私に「すみません、少しいいですか?」と声をかけてきた。


「どうしたの」とたずねると、

「まいごさん、たずねから何か、私に秘密にしていることがないか聞いたりしてませんか?」と聞かれた。

「秘密?いえ、たずねからは何も聞いてないけど、どうして?」

「たぶん、たずね、私に隠し事してるみたいなんです」


 この時期は恥ずかしいという感情で、いろんなことを隠したがる時期でもあるので、それを聞いても特に変に思ったりという感情はなかった。


 「なんでそう思うの?」

「わたし、今年は受験もあるんで、たずねと遅くまで教室に残って勉強して一緒に帰ってるんですけど」

「うん、仲いいね」

「はい、ただ、毎月一日だけたずねが用事があって、一緒に帰れない日があるんです。理由を聞いても、たいした用事じゃないからって言うだけだし、いつも不思議に思ってたんですけど。」

つなぎはなんとも言えない困った表情で話してた。


 「先月、たずねがまた同じように用事があるってどっかに行った日、わたしもその日は親戚の家に行く用事があったんです。帰りのバスを途中とちゅうで降りて、街の駅近くの交差点で信号が青になるのを待ってたら、向かいの歩道でたずねを見つけたんです。さすがに遠くて声をかけることができなかったんですけど、見てたら、たずねが谷山病院に入って行くのが見えて。谷山病院って、この街でも一番大きな病院だし、私心配になって。でもたずねは何も言わないし…」

「病院…」

私は反射的にそうつぶやいていた。


 つなぎの話しを聞いた途端とたん、この前たずねと話していた噂が頭の中に浮かび上がってくる。

『ウチの学校ではこの噂みんな知ってます。その選ばれた人たちには共通点があって、みんな血管が見えそうなくらい色白で、月1回、必ず病院に通って体の検査を受けてるそうです』

たずねのあまり外に出ていなさそうな白い肌がよみがえる。

「つなぎ、ちょっと聞いていい?」

ありえないけど、私は確認のためにどうしても聞きたくなった。

「はい?なんですか?」

つなぎが不思議そうにこちらを見る。

「ある噂なんだけど」

「噂?」

 外は夕焼け空が黒く変化しつつ、今日が終わろうとする空に星がぼんやりと見えていた。

「選ばれた人って噂聞いたことある?」

夏の夕暮れ時には珍しく、夜に近づく冷たい空気が流れていた。

「選ばれた人?なんですかそれ?」






 リビングの時計を見ると、午後6時にはハカセの家に帰ることができていた。帰った後イベントの作業の進み具合を確認するため、ソファーで寝っころがってるハカセにこっちは問題なく順調に進んでるよと話した。ハカセの方も何も問題なくできてるみたいだったけど、絵が展示されてる空き部屋の受付を1人でしていたらしく、孤独感こどくかんがすごいと私に愚痴ぐちこぼした。


 私が、こっちはたずねやつなぎ達と作業して楽しかったことを話すと、ハカセは「はぁ?」と不服ふふくそうに言って、「来年は俺も男子高校生と一緒に作業させてもらうよう要望ようぼうしておこう」と真剣な顔で言っていた。


「そうなったら若い子に変なことまないでよね。未来をになう創造者(そうぞうしゃ)たちなんだから」

「俺は楽しく話して有意義(ゆういぎ)な時間を共に過ごしたいだけだ。ただ、イベントの最後は仲良くなった証(あかし)として、俺と肩を組んで写真を撮ってもらがな」





 布団に入り、暗い部屋の中を夢見うつつ、今日あったことを振り返る。今日のイベントの帰り、つい自分をおさえられなくなりツナギに噂のことを聞いてしまった。なんでもないとごまかしたけど、変に思われたかな…。


 きっと、たずねは何か隠してる。でも、それはたずね自身の問題であって、私がそこに踏み込むことはできず、たずねがみずから話してくれるのを待つしかできない。知られたくないことは誰にだってある。きっと、それを分かってあげることが、たずねにしてやれる唯一のことだ。そんな考えを自分に言い聞かせながらその日は眠りに落ちていった。





 私が参加したイベント3日目は、イベントに来るはずだった子が風邪を引いたみたいでお休みになり、私もハカセみたいに1人で作業しないといけなのかなぁ…と落ち込んでいたら、急遽きゅうきょかわりに商工会の会員のおばちゃんが一緒に作業を手伝ってくれた。来れなかった子のことは残念だったけど、その日もおばちゃんと楽しく作業をすることができたし、自分としては満足してこのイベントの最後をむかえることができた。



 今月だと、この街のことや出来事できごとはこのくらいかな。ここに来てから多くの人とかかわり、それは私自身望んでいたことでもあったので本当に良かったと思ってる。思い出もたくさんできたし、これからも作っていきたい。まだまだこの街でできることはあるはずだから、自分でも探していかないと。






 そんな考えにふけっていると、バスの窓の風景ふうけいが人の多い街並みからいつの間にかのどかな田園風景でんえんふうけいへと変わっていた。


あたり一面田んぼ畑で風に吹かれていねが波のようにれている。遠くには山がつらなっているのが見え、近くで見ると巨大であろう鉄塔てっとうが電線をわたしながら山にくつか建っているのが遠目からでも確認できる。その風景を見てもうここまで来ていたのと時間の過ぎる早さに驚く。


 いつもバスに乗っている間は、ケータイ電話をいじっているか、最初にある大学の講義の教科書や参考書を眺めているかのどっちかで、まだ着かないかなとバスの到着時刻と自分の時計を見比べたりすることが多いけど、今日は心なし早く着きそう。このあたりまでくると大学はもうちょっと。もう少し行くと木が鬱蒼うっそうとしている森の中を通る道へと変わり、木々をうような坂道を上ったあたりで大学につくはず。


 私は、窓の景色をながめた後、思い出したようにカバンからねむりの手帳を取り出した。あと少しの時間だけど、大学につくまでねむりの手帳を読んで、探し物の手掛かりを探しておこう。もう何回も繰り返し読んでいる手帳。だいたいいつも1ページめから読んでいってるけど、これからは探し物のことが書かれているページ中心で読んでいかないといけない。どこに書かれてたかなと手帳のページをぱらぱらめくった。





『4月12日

 今日は学校で先生に名前を呼ばれることが多い日でした。国語の授業では、「しかし、次の文読んで」と言われて、あわてて教科書何ページのところか友達にたずね、数学の授業では「しかし、この公式覚えてるか?」って聞かれて、え?公式なんて先生言ってた?とノートを必死に見返し、化学の授業では「しかしさん、この細胞の名前覚えてますか?」って聞かれて、思い出すことができず、友達のまいごのほうを見ると、くちぱくで私に答えを教えてくれていた。だけど分からず、「え?何?」と小声のやり取りをまいごとしていると、先生に「復習しとくように」と怒られるし、まわりからも笑われてしまい散々さんざんでした。


 その後、「ちゃんと私のくちの動き読み取ってよ」ってまいごに言われ、あの状況じゃ難しいと言うと、「今度は空中に指で文字を書くから当ててね」って言われた。授業中にそんなことできないし、まいごは私を助けるというより楽しんでいるように見える。


 まいごはクラスでは人気者で、化学の授業で先生から私が当てられた時も、みんな私ではなくまいごを見て笑ってた。周りからは、私はねむりではなくてまいごの友達って認識にんしきのされかた。


まいごみたいになれたら毎日楽しいだろうなってうらやましくなる。でも、ああいったものは簡単にはマネできないし、その人の持って生まれた才能と言うしかない。そんな子と友達になれてるんだから、自分は幸せ者だと思わないと。


 学校が終わった後、友達は部活に行っちゃうし、唯一ゆいつ私と同じ帰宅部のまいごは、今日は用事があるみたいで、ホームルームが終わったあと「ごめんね」と言ってすぐに帰ってしまった。ちょっとさみしかったけど、コレはいい機会だと思った。


前からまいごに渡そうと思っていたものを探さないといけなかったから。今日は時間もあってまいごもいないことだし、町の駅前や商店街の方に行ってみよう。見つかるといいな…。』






『4月19日

 今日はお休みだったから、借りていた本を返しに町の図書館に行ってきました。昔からこの街にある図書館は、元は大正たいしょう時代に建てられたそうです。かべ白塗しろぬりで、窓の一部にはステンドグラスがはめ込まれてる和洋折衷わようせっちゅうの良さを詰め合わせた素敵なところです。


 受付で本を返した後、次はどれを借りようかと悩み、背表紙せびょうしの絵に目を引かれ、古そうな本を借りることにしました。表紙ひょうしには制服を着た少女が時計の針に指をかけて動かしている絵が綺麗きれいに描かれています。

 本の紙がもう茶色く変色していました。けっこう分厚いから、返却日までに本を返せるように急いで読まないと。


 図書館を出た帰り道に、ふたが壊れてしまった筆箱ふでばこのことを思い出し、買い直そうと近くの商店街の文房具屋さんに立ち寄りました。いろんな色や形の文房具を見るのは好きで、たな整頓せいとんされて規則正きそくただしく並んでいるのを見ていると手に取ってしまい、ついつい関係のないペンや消しゴムまで買ってしまいます。


 どうやら自分には物を買いすぎるクセがあるようで、そのことをまいごに話すと、「わたしがねむりのお財布さいふ管理かんりしててあげるよ」って言って両手を差し出していました。


 そういえば、まいごに渡そうと思っているものが見つかりません。この商店街も歩き回って探したけど、どこにもありませんでした。ネットで調べると、そんなに探すのに苦労しないと思ったんだけど…。やっぱり隣町となりまちまで探しに行かないといけないのかな。自分もこういうものを買った経験がほとんどないから、ネットの情報に頼るしかなく、わからないことが多いです。すごく人気があって売り切れってことでもなさそうだし、なんで無いんだろう。とにかく今度また探しに行ってみます。』






 ねむりの日記を読むたびに思うのが、昔の私はこんなに明るかったのかと恥ずかしくなる。若さゆえなんだろうけど冗談ばかり言ってないで、もうちょっとねむりと向き合って話してほしいと、自分のことながら胸につっかえるものを感じる。


 今でも、学校で笑って話していたねむりの姿を鮮明せんめいに思い出すことができる。ストレートの長い髪にきゃしゃな体と白い肌。小さな顔には長いまつ毛の丸い目。綺麗な見た目なのにおとなしい性格のせいで、まわりからはそのことに注目を受けることはなかった。でも、誰よりも優しい性格で、ねむりにはなんでも相談ができるような包容力ほうようりょくがあった。周りの人たちが気付いていないだけで、どれだけねむりが誠実せいじつで人として成長しているかを私はちゃんと理解していた。


 日記に書いてるように、ねむりが私にあこがれを持っていたこは知っていた。ときどき私がうらやましいと話すのを聞いたことがある。確かにあのころの私は明るくて、いつもまわりには人が集まってきていた。でも他にとりえがあるわけでもなく、それだけしかなかった。ねむりにはそんな私のようにはなって欲しくなかった。


 それは昔の私でもそう考えてた。ねむりには人を裏切うらぎらないという大きな安心感があり、そのことに私がどれだけ助けられたかねむりは分かっていない。ねむりが私のことがうらやましいと言うたびに、ねむりには良いところがたくさんあるんだから、うらやましがる必要ないよとそれとなく本心を言ってたけど、なかなか理解してもらえず歯痒はがゆかったのを思い出す。


 ねむりが亡くなると分かっている今なら、好きなようにさせてあげればと思うけど、あの時はねむりの良い部分を消さないためにも変わらずにいて欲しかった。




 ダメだ、ねむりの手帳を読むと、探し物を探す考えからねむりとの思いでを懐かしむ脇道わきみちれてしまう。


 手帳から顔を上げると、バスが樹木じゅき鬱蒼うっそうとしている森の坂道を車体をらしながら上がっているのが分かった。前の電光掲示板でんこうけいじばん峠坂大学北口前とうげざかだいがくきたぐちまえという文字が見える。バスが何度かこをを描くようなカーブの坂道を進んでいくと、森の暗い景色が急に明るくなり、視界しかいが一気に開けた。

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