第十八話

七原「先生、アンケート集めて来ました」

男「ん、ありがと」

七原「…」

男「どうかした?」

七原「あ、いえ…なんでも無いです、失礼します」

男「ん」


七原「…うーん」

香椎「ど、どうしたの?海ちゃん」

七原「考え事…創ちゃん前先生と料理するんだーって言ってたよね、どうなったの」

香椎「あ、そ、それは…も、もうしてるよ」

七原「…そうなんだ」

香椎「う、うん、美味しいって言ってくれるから…嬉しい」

七原「良いなあ…」

香椎「ふふっ…海ちゃんは同じクラスだから関わること、多いんじゃない?羨ましいな」

七原「学級委員長になったは良いけどそっちが忙しくなっちゃって…」

香椎「そっか…」


七原(創ちゃんって先生の事好きなんだろな…)

香椎(海ちゃんって先生の事好きなんだろな…)


第十八話 ジョソウ


黒鹿毛「古代言語の資料…ですか」

吉祥「そそ、ちょーっと確認したいというか調べたい事がありまして」

黒鹿毛「ふむ…受付嬢さんに聞いた方が詳しいのですがそちらは行かれましたか」

吉祥「あ、そうなんですか」

黒鹿毛「ええ、彼女らは元図書館勤務でしたから…そこから取り寄せて貰うことも出来ますよ、話しておきましょうか」

吉祥「いや、自分で行きますよ。ありがとうございます」

黒鹿毛「ええ、また何かありましたら」

吉祥「そうですね…」


受付嬢『エエ、カシコマリマシタ。ホンジツチュウニハトドクトオモイマスノデホウカゴマタキテイタダケレバオワタシイタシマスヨ』

吉祥「すみませんね、お願いします」

受付嬢『トノウチセンセイニモキイタホウガヨロシイカトオモワレマスヨ、ケンキュウニカンシテミギニデルヒトハソウイマセンカラ』

吉祥「それもそうですね…ありがとうございます、お願いします」


吉祥「んー…」

戸ノ内「どうしたノー、薬はもう終わったヨー」

吉祥「いやねー少し考え事」

戸ノ内「授業をサボるな授業をサー…」

吉祥「…これ見てほしいんだけど」

戸ノ内「何かナー………」

吉祥「引っ越しの時の荷物整理してたら出てきてさ、読めないんだよね…」

戸ノ内「…ふむ」

吉祥「高校入る前だから二年くらいしかたってないけど明らかにこれは遥か昔のでしょ?こんなの持ってるはずも無いんだけど…」

戸ノ内「覚えは無いってことネー」

吉祥「一応。古いもの集めるのは好きだけど引っ越しの時の荷物から出てくるのはおかしいから少し気になってさ」

戸ノ内「コピーとっていいかナー?」

吉祥「うん勿論」

戸ノ内「……んー」ガショガショ

吉祥「多分古代『魔術』に関するヤツなんじゃないかなと」

戸ノ内「だネー、それもこの国のじゃないヨー」ガショガショ

吉祥「え」

戸ノ内「他国の、それも異民族系のだと思うヨー」ピー

吉祥「異民族系…」

戸ノ内「ソー、要は少数民族か…失われた民族のかナー」

吉祥「何故それが私の荷物に…」

戸ノ内「調べないとわからないナー」

吉祥「手伝ってよ」

戸ノ内「モチロン、中々興味深いシー」

吉祥「わお!それは助かる。じゃあお願いしまーす」

戸ノ内「あ、浦田監督には聞いた?」

吉祥「うんにゃ、後で電話借りないとなあ」

戸ノ内「そうネー、そっちは頼むヨー」

吉祥「ほい…じゃ、失礼します」


戸ノ内「…」

??「どったの?」

戸ノ内「少し出る」

??「えーっ、今から『大元気サバット』が始まるのに…」

戸ノ内「録画しとけ」


………


紅田「ふー…」

海鈴「あーこうな…」

紅田「そうそう」

海鈴「はー、えろうややこしいなあ…」

紅田「報告書だからね…おーけー、じゃあとりあえずは大丈夫かな」

海鈴「はー…にしても先生アレと付き合い有るとかようされますなあ」

紅田「まー昔色々とね…ていうか海鈴さんも知ってるんだ」

海鈴「商売相手やし…つってもこっちが下請けやからなあ」

紅田「ふはは、聖籠況んや世界の海鈴グループの令嬢に言わせるとはあのガキンチョも大きくなったもんだ」

海鈴「世界の言うても規模では第三位くらいやしな…それも表上は」

紅田「あ、香椎さん居て驚いたんじゃない」

海鈴「いやーそうなんですわ、香椎グループと言えば国も業種もちごうても噂は耳に入りますさかいなあ」

紅田「私からすれば皆凄いんだけどねい」

海鈴「ほうなんですか」

紅田「真面目に働いてるだけでねえ」

海鈴「ええー…」


………


岸華「あら」

名桐「何よ」

岸華「今回の転入、ナキリ商社が手引きしたと聞いたけど、本当?」

名桐「ええ、事実よ…来たいと言ったのは向こうだけどね」

岸華「そうなんだ、ふーん…」

名桐「何よ、文句でもあるの?」

岸華「まさか。うちみたいなわざわざ田舎に来るなんてと」

名桐「『魔術』使うからじゃないかしら?」

岸華「そう思ったんだけど…何か腑に落ちないのよね」

名桐「それは勘?」

岸華「割と」

名桐「ま、私もそんなに詳しいことは聞いてないからわからないけど」

岸華「…そっか、ありがと」



男「飯飯…っとお」

??「先生!」

男「お、どうしたの小窪さん」

小窪「こないだの転入生に取材した分の紙面、確認して貰いたくてですね」

男「ああいいよ…そうか僕も副顧問だからね」

小窪「放課後、また取りに来ますからお願いしますね」

男「わかった、じゃあまた」


男「特に不備は無いかな…うん」

七原「どうしたんですか?先生」モグモグ

男「ん、こないだ名桐さんが海鈴さんに取材してたろ、その新聞」

七原「そうですか、なるほどです」モグモグ

男「しかし…」

七原「どうかしました?」モグモグ

男「いや、初対面の時見覚えがあるって言われたんだけど実は僕も見覚えがあるんだよね」

七原「他人の空にではないですか?」モグモグ

男「そう思ったんだけど…ほら、海鈴さんってよく見るとああ、他国の人だなあって顔してるから似てる人が思い浮かばないんだよね」

七原「そうですね…ま、特徴ある顔なら違う人でも町で見たりすれば思い出すこともありますしその類いですよ、きっと」モグモグ

男「そうかも…しかし七原さん」

七原「はい?」モグモグ

男「何で君は職員室でご飯を食べてるのかな?」

七原「仕事してる先生の顔をオカズにご飯を食べようと思いまして…迷惑でしたか?」

男「…いや別に」

七原「良かったです」モグモグ


男(少し変態っぽいけど…)


………


「あ、雨」


ある生徒の一言を皮切りにか窓の外はバケツをひっくり返したように雨が降り始めた


「傘持ってないよー」「天気予報見てないの?」「まだ梅雨だねー」


海鈴「おろ、雨かいな」

名桐「梅雨ねえ…」

海鈴「あ、あれやろ。よう雨ん降る時期ん事」

名桐「そう。そっちは無いの?」

海鈴「雨季はあるんよ…二、三ヶ月ずーっと降りっぱじゃけ困るとよ」

名桐「くす、それは嫌ね」

海鈴「ほんにね…ま、そのお陰で作物も育つし水不足にはならんけえ文句は言えん」

名桐「そうね…」

香椎「失礼します…あ、風香ちゃん」

名桐「創」

海鈴「おー」

香椎「ほ、他の皆は?」

名桐「見てないわよ」

香椎「そっか…じゃあ今日の復習しようかな」

海鈴「真面目やんな」

名桐「本当…それじゃあ邪魔しない程度に私達も何かしようかしら」

海鈴「言うてもここなあ…」

名桐「何よ」

海鈴「ゲームしかあらしまへんえ」

名桐「…」

海鈴「…」


香椎「…」カリカリ



男「はい、問題無さそうだよ」

小窪「あ、ありがとうございます、失礼しますね」

男「印刷は大丈夫?」

小窪「そうですね…じゃあお願いしても良いです?明日朝取りに来ますから」

男「うん、それじゃ」

小窪「お願いしますね」


男「えーとクラス分だから」ピッ

岸華「先生」

男「岸華さん」ガショガショ

岸華「…今お忙しいですか」

男「印刷終わったら大丈夫だよ、どうかした?」ガショガショ

岸華「あ、いえ…もしよろしければ、ですけどこの後…いつもの場所に」

男「わかったよ」ガショガショ

岸華「待ってますから」

男「うん」ガショガショ


男「おしまいっと…とりあえずは私の机の上に置いておこうかな」

男「さて…」



男「お待たせ」

岸華「遅い」

男「…ごめんなさい」

岸華「ま、いいわ。呼んだのは私だから」

男「何か用事があったんでしょ、どうしたの」

岸華「それなんだけど…」


岸華「キスして」


男「」

岸華「…」

男「はっ、頭が沸騰してた」

岸華「馬鹿な事言わない」

男「あのね、私と岸華さんは教師と生徒なんだよ…冗談でもそんなこと出来ないよ」

岸華「これまで二度もしたのに?」

男「うっ…そ、それは不意討ちでぇ」

岸華「…私とするの、嫌なんだ」

男「…そういう問題じゃなくてね」

岸華「じゃあ、何で?」

男「何でって…岸華さんは?何故私とその…したいのかな?悩みでもあるの?」

岸華「馬鹿ね、理由なんて…」

男「へ」

岸華「…たからよ」

男「え、今なんて…」

岸華「好きになっちゃったからよ、先生の事が」

男「え…」

岸華「先生がお見舞いに来てくれたあの日から…寝ても覚めても、何してても先生の顔が浮かんできて、声がリピートして…好き、なの気付いちゃったのよ…」

男「…」

岸華「…もう一度だけ」


岸華「好きです」


男「…」

岸華「…嘘」

男「…だよね」

岸華「何度でも、言うから」

男「…」

岸華「好きです、好きなんです。これ以上思ったらどうにかなっちゃいそうな程…」

岸華「返事は、今はいりませんから、ただ…」

岸華「キスして、下さい」

男「…ごめん」

岸華「…そうですか」


すみませんでした、と頭を下げ彼女は薄暗い部屋から出ていった。その目にうっすらと涙を浮かべながら…


男「…出来ないよ」


誰かの笑い声が聞こえた気がした。それはとても懐かしく、今では何一つ思い出すことの出来ない笑い声だった


………


その夜


岸華(ああ言う迫り方じゃ駄目か…)

岸華(二回もしてるのに、案外強情なものね)

岸華(でもこれで私が先生の事を好き…ってことは伝わったし)


岸華(…ん?今考えたら私、滅茶苦茶恥ずかしい事したのでは)ぴく


岸華(…)かああ


<うわああああああ!バタンバタン!ガタン!


光「わっ」ビクッ


……………


香椎「えへへ」

男「は、ははは」

香椎「楽しいですね、人とお買い物するのって」

男「そ、そうだね」


男(何故…何故こうなった…!)


その日の朝


男『あー今日は暇だな…久々にゲームでもしようかな』

男『…実は僕もヴァルハンは持ってたりするのだ、弱いけど』ピンポーン

男『勝てない…ん、はーい!今出ますよ…』


男『…はい』

香椎「お、おはようございます、先生」

男『…おはよう香椎さん』



男(で、こうなったと…)

香椎「あ、朝ごはん食べました?私食べてきたのですがもし先生が食べてなければ…」

男「あ、朝ごはんね、朝ごはんは食べたよ…うん」

香椎「そうですか、では少しゆっくり散歩でもしましょうか」

男「…そうだね」


男(しかし、こうしてみると案外…平和だな、岸華さんと出掛けたりするとなんというか多少負い目がある故に気を使うこともあるけど香椎さんとなら何もないし…うん)

男(前向きに考えよう)


男「いつも商店街で買ってるんだ」

香椎「は、はい。その…自分の足で探すのが好きで…えへへ」

男「偉いなあ…」

香椎「そのお陰であまり量が買えないので…今日は沢山買いますよ、ふふ」

男「荷物持ちは任せてね」

香椎「あっ、重かったら言ってくださいね」

男「大丈夫大丈夫…」

男(優しいなあ)ホロリ


香椎「少し休憩しましょうか」

男「いいよ、どこか行きたいとこあるの?」

香椎「あ、い、いつも行ってる珈琲屋さんがあるのでそこで…」

男「了解」


香椎「こんにちはー…」

男「こんにちは」

「いらっしゃい…」

香椎「ブレンドコーヒーと…先生はどうします?」

男「同じので」

「はいよ…」

香椎「ここ、静かで日中は余りお客さん居ないので休憩には丁度良いんですよ」

男「へえー、知らなかったなあ…」

香椎「といってもうちで出してるコーヒーの卸業者さんのお店なので私もついこの間知ったんですけどね、えへへ」

男「軽食もあるんだ…」

香椎「何か食べますか?」

男「小腹は空いてるけど…お昼はどうする?」

香椎「な、何も考えてません…そんなにお腹減ってはないのでまだ大丈夫ですけど」

男「ならとりあえず少しつまんで行こうか」

香椎「そうですねっ」

男「何にしようかな…」

香椎「あ、わ、私ホットサンドにします」

男「ホットサンド…ああこの日替わりホットサンドね。うん軽食には丁度いいなあ、僕もそれでお願いしようかな」

「はいよ…ブレンドコーヒー二つね」

香椎「あっありがとうございます」

男「ありがとうございます」

香椎「砂糖とミルク…っと先生は…要らないですね、ふふふ」

男「ありがとう、大丈夫だよ」

香椎「コーヒー好きなんですけど、甘くしないと飲めないんですよね…」

男「それも楽しみ方の一つだよ香椎さん」

香椎「えへ、えへへ…」

男(何て言うか…凄く良いな、この空間。平和だし、のんびりしてるし…それに)

香椎「ん…どうかしましたか?」

男「ううん何でも」

男(こうして見ると香椎さん滅茶苦茶可愛いな…いや元々可愛いとは思ってたけどこういう空間で見ると尚のこと…綽約多姿?窈窕淑女かな…)

男(目が大きく口は小さく、少しおどおどした感じも庇護欲をそそられるがどこか母性も感じる…そして何と言っても胸が)

「ホットサンドです…」

男「ありがとうございます」

香椎「ありがとうございます」

男「結構熱々だね」

香椎「焼きたてですからね、ふー」

男「サクサクだなあ、中は…少しピリ辛かな」

香椎「はふはふ…美味しいですねっ」

男「うん、サイズも丁度いいし…穴場だなあここは」

香椎「そうなんですよ、良いところです。はむ」

男「コーヒーも美味しいなあ…」


男「ごちそうさま」

香椎「ごちそうさまでした…すみません、払って頂いて…」

男「いいのいいの、これは男の意地だと思ってくれれば」

香椎「そうですか、ではすみませんがありがたく頂戴します」

男「そんなに畏まらなくても…」

香椎「そ、そ、そうですね、えへへ」

男「は、ははは」


男「あ、僕も少し食料品を買っておこうかな」

香椎「そ、そうしましょう!」

男「卵が無かったかな…あ、なまもの買ったら帰らないといけないな…どうしよう」

香椎「い、いえ!私はもうほぼ買い物済んでますし後なまものだけだったので…今日はこれくらいにしておきましょう」

男「そう?何か悪いね…」

香椎「そ、そんなにき、気にしないで下さい」

男「じゃあそこのスーパーでいいかな?それともお肉屋とか八百屋もあるけど…」

香椎「スーパーで充分ですよ、行きましょうっ」


男「…えー、こんなものかな」

香椎「結構買いますね…」

男「少なくとも一週間分は買っておかないと持たないからね…よっと」

香椎「こ、これで一週間分ですか…」

男「まあね…香椎さんは何を買ったの?」

香椎「秘密です。今度の料理、楽しみにしてて下さいねっ」

男「はは、成る程ね」

香椎「ふふふ」

男「お、丁度いい時間だしお昼食べに行こうか」

香椎「は、はいっ」

男「さっきは香椎さんのオススメの所に連れていってもらったから今度は僕のオススメに連れて行こうかと思うんだけど…どうかな」

香椎「ぜ、是非お願いしますっ」

男「了解!じゃ、すぐそこだから行こうか」


旧鬼「らっさい…なんだ赤田か…!?」

男「こんにちはー」

香椎「な、な、に、なん、き、旧鬼先生!お疲れ様です!」

旧鬼「お、おー香椎さん珍しいな…じゃなくて赤田ァちょっと、来い」

男「え…はい」

旧鬼「香椎さんは空いてる席に座って待ってて」

香椎「は、はい」

旧鬼「………」

男「…あの?」

旧鬼「あのな、こないだ岸華を連れ込んだと思ったら今度は香椎?この女の敵め…」

男「いやっ今日はというかこの前も一緒に買い物しただけでそんな滅相な」

旧鬼「だと思ったよ、お前にそんな度胸は無いからな…全く」

男「は、ははごもっともで…も、戻って大丈夫ですかね?」

旧鬼「ああ注文決めとけ…程ほどにしておけよ」

男「は、はい」


香椎「な、何でした?」

男「…いや何でも、仕事の話…一応」

香椎「そ、そうですか」

男「はいメニュー…驚いた?」

香椎「は、はい、まさかきゅ、旧鬼先生が居られるとは…お、驚きました…」

旧鬼「手伝いしててな。全くようやく昼のピークが過ぎたと思ったらお前らか」

男「すみませんね、忙しいとこ」

旧鬼「良いってことよ、さ、香椎さん何するかい?」

香椎「え、えーっとそうですね…」

男「味に期待はしないでね」

旧鬼「お前が言うなッ」ペシー

男「スミマセンッ」

香椎「じゃ、じゃあ…月見うどんでお願いします」

男「…じゃあ僕はごぼ天うどんで」

旧鬼「はいよ、月見うどんとごぼ天うどんと天丼ですね」

男「…まだ揚げ物苦手なんだ」

旧鬼「熱いんだよっ」

香椎「私うどんあんまり食べないので楽しみです先生」

男「そうか、最高の月見うどんをたべさせてあげるからね…」ちらっ

旧鬼「うっ…月見うどんなら大丈夫だ…多分」

香椎「わあっ素敵ですっ」

旧鬼「少し待ってな、作ってくるから」


香椎「…先生と旧鬼先生って仲がよろしいんですね」

男「ん?ああ高校の頃から知り合いだからね。大学進学の時も世話して貰ってね」

香椎「そ、そうだったんですね…知らなかったです」

男「結構良くして貰ったんだよ、優しいからね旧鬼さん」

香椎「そうですよね…高校の頃からの知り合い、ですか…」

男「僕が教師になった理由の一つが旧鬼さんが教職についたってのもあるし…今も色々教えてもらってるよ」

香椎「なんだかそういうのって…良いですね」

男「そうだね、いい上下関係だと僕も思ってるよ…向こうはどうだか知らないけどね」

香椎「そう、ですか」

男「?」

香椎「…」


旧鬼「はい月見うどん。で、ごぼ天やまかけわかめうどんと天丼と牛そばだったな」

男「多くない?ねえ」

旧鬼「そうか?」

男「…いただきます」

香椎「いただきます、ふふ」

旧鬼「今日のは失敗作でなく余り物だからな、進歩してるんだよこれでも」

男「自己流でするから調整調整で量がふえるんじゃないですかね…」

旧鬼「うっ」

香椎「ずるずる…美味しいですー」

旧鬼「だろ?ははは」

男「味は美味しいんだよな」

旧鬼「ふー…さて私も昼飯にしようかな、他の客も捌けたし」

男「良いですよ、一緒に食べましょう」

香椎「ずるずる…そうですねっ」

旧鬼「はー…天丼貰うぞ」

男「どうぞどうぞ…こっちに座るんですね」

香椎「…ずるずる」

旧鬼「いただきます」

香椎「…あ」

旧鬼「ん?」

香椎「指輪、されてるんですね…」

男「そう言えばそうですね」

旧鬼「これ?ああ色々あってな…赤田には高校の頃言ったぞ」

男「え、そんな前から着けてましたっけ」

旧鬼「そうだよ、学校でも着けてるんだからな全く…」

香椎「お、お付き合いされてる方が居られるんですかっ」

旧鬼「食いつくね…流石女の子かな」

香椎「あっあうすみません…」

旧鬼「ま、着ける場所はどこでも良いんだがな…大切なモノだから」

香椎「あ、そ、それって…」

旧鬼「良く見てごらん」

香椎「ま、まさか…魔造の遺物…」

旧鬼「そういうこと」

香椎「…凄いもの持ってますね」

旧鬼「先祖代々のモノでね…これつけてないと大変なんだよ」

香椎「成る程…しかし…何処かで見たことあるような…」

旧鬼「図鑑にも載ったことあるからな…有るんじゃないか?君の家なら」

香椎「…有るかもしれませんね」

旧鬼「流石は香椎家、か。ははは」

香椎「そ、そんな…」


男「???」ずるずる


香椎「ごちそうさまでした」

男「ごちそうさまでした」

旧鬼「ごっそさん…ふぁあ、飯食べると眠くなるな」

男「じゃ、夜まで頑張ってください、お代置いておきますから」

香椎「美味しかったですっ」

旧鬼「そらどうも…じゃあねい」


男「帰りどうするの?」

香椎「そうですね…実は今日こっそり家を出たので歩いて帰ります」

男「え」

香椎「と言うのも先生と会うとは言えなくて…出掛けると言えないうちに気付いたら先生の家の前に居たのでよく覚えて無いです」

男「ええ…大丈夫かな…」

香椎「大丈夫ですよ!」

男「そうかなあ…」

香椎「そうですよっ…ん?」

男「ん?」


「香椎様、お迎えに上がりました」


香椎「な、何で場所が…」

「私共の情報網を駆使したまでです。丁度帰られるようでしたので良かったです」

香椎「そ、それはそうなのですが…」

男「凄いなあ」

「創!帰るわよ…あら」

香椎「お母さん!」

男「こんにちは、いつもお世話になってます」

「こ、こんにちは。ええと…」

男「第二野球部顧問の赤田と申します、初めまして」

「あら!貴方がそうなのね…創がいつもお世話になってます」ペコ

男「いえいえこちらこそ…」

「部活に入ってから創が学校から帰ってくる度楽しそうに話してくれるようになって…本当に感謝してます」

香椎「お、お母さん…」

「今後とも、よろしくお願いいたしますね」

男「こちらこそ」

「向こうに車を回しておりますので」

香椎「あっ、わかりました…では先生、また学校で」

男「うん」

「失礼しますね」


男「…滅茶苦茶似てるな、あの親子」


カミングスーン


あんたねぇ、創に手を出したら承知しないわよ…ふん。季節はそろそろ梅雨も明けごろ、遂に迎えるは七月よ。暑いの嫌なのよね…また部室で涼ませてもらうわ。何?悪いって言うの?次回、「アクドウ」あっ海鈴!そっちは私の寝室よっやめてー!

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