第十七話

名桐「初めまして。第二南原高等学校二年名桐風香と申します。今後ともよろしくお願いいたします」

??「硬いなー自分…聖籠国立飛渡女学院二年は海鈴ネシュットや、よろしゅう」

名桐「…なら楽にさせてもらうわよ」

海鈴「それでええよ、こっちも同級生に硬っ苦しい喋り方やと身構えてまうわ…しかしいっぺん来てみたかったんよ、南鳥国」

名桐「ええ、父から聞いてるわ」

海鈴「しかしこんな田舎とは思わんかったなーうちとあんま変わらんやん」

名桐「色々あるのよこの国は」

海鈴「せやろなあ、来るんにあーんな長ったらしい注意書もろたんは初めてやわー」

名桐「それさえ守ってくれればこの国には滞在出来るわ、よろしくね」

海鈴「ま、そのつもりや…うちの軽率な行動でおとんに迷惑かけた無いけん」

紅田「と、いうことでよろしくね」

海鈴「ええとどちらさん…」

紅田「ここの校長してます紅田です、よろしくねっ」

海鈴「えらい軽いノリやんな…よろしゅう」


第十七話 ナイガイ


海鈴「ほんで君の家泊めてくれるんやろ?昨日のホテルはあかんわ、狭い」

名桐「…まあそういう約束だから」

海鈴「なんやつれんな~もっと嬉しそうに喋ってや」

名桐「う、うわーい嬉しいな」

海鈴「ごめん私が悪かった」

名桐「良いわ…じゃあそろそろ教室行きましょうか」

海鈴「行こ行こ」


「でだな、今日は皆にお知らせがある」

「えー」「なにー?」「なんですか?」

「なんとこれから夏休みまでうちのクラスに転入生が来ることになった!」

「ホント!?」「えー男かな!」「女の子がいいなー」「来てるの?」

「もうそこに来てるから早速挨拶してもらおうかな、入って」


海鈴「失礼します」

海鈴「聖籠国立飛渡女学院から来ました海鈴ネシュットです、よろしくね」

「きゃー!かわいー!」「やったあ、女の子!」「聖籠だってさ、他国の人じゃん」

「静かに!一ヶ月半程の短い期間だが皆でサポートするように。以上で朝礼を終わります」


「えーかわいー」「凄い…」「目も透き通るような…」「美人…」

名桐「行くわよ」

海鈴「ええ」

「えー待ってよーちょっとくらい話させてよ」「ねえ名桐さん」

名桐「悪いけどまだ手続きが残ってるの、文句あるかしら」

「…いや、別に」

海鈴「後でね」


海鈴「あんな騒がれたら敵わんわー」

名桐「貴女普通に喋れるのね…」

海鈴「ん、そらな…ただ面倒やん?自己紹介位なら普通に喋られるよう訓練したんや。それでもイントネーション変やったろ?」

名桐「若干ね。気にならない程度よ」

海鈴「かーっ、恥ずかしいわー」

名桐(…オーバーリアクションね)


名桐「失礼します」

海鈴「失礼します」

黒鹿毛「おはようございます」

名桐「こちら、うちの副校長の黒鹿毛先生です」

黒鹿毛「よろしくお願いします、海鈴さん」

海鈴「よろしゅうたのんますわ」

黒鹿毛「さて、今からお伝えしますのは先にお送りした注意書にも書いてあった内容になりますがお願いします」

海鈴「はい…えらい真面目な人やな」

名桐「この学校一真面目よ」

黒鹿毛「えーまず海鈴さんは『魔術』が使えるという話ですがこの事は他の生徒には決して言ってはなりません」

海鈴「承知や、苛められるんやろ」

黒鹿毛「…そうかはわかりませんが何かしらの形で迫害は受けるでしょうね」

海鈴「…それは苛めちゃうんか」

黒鹿毛「そこでこちら…入部届けですが第二野球部に一時的に入ってもらいます」

海鈴「ああそれ書いとりましたな、野球させるんですか?」

黒鹿毛「いいえ、この部活だけがうちで唯一『魔術』の話が出来ますので」

海鈴「…ああそげんこつか、異文化交流やんな」

黒鹿毛「はい」

海鈴「名桐は入っとるん?」

名桐「入ってはないけど入り浸ってるわ」

海鈴「つまり『魔術』は使えんと」

名桐「そういうことね」

海鈴「はー、わかりましたわ」

黒鹿毛「後は校舎の案内ですけどこれは名桐さんにしていただきましょうか」

名桐「わかりました」

黒鹿毛「ではよろしくお願いします」


名桐「じゃ、午前中は確か歓迎会が開かれる筈だからとりあえずクラスに戻りましょうか」

海鈴「しゃあしいなあ…」

名桐「そういうものよ」


………


名桐「ふう、昼休みね」

海鈴「そうですね」

「ご飯どうするの?」「一緒に食堂行かない?」「お弁当食べる?」

海鈴「えーと…」

名桐「ごめんなさいね、今日は会食があるから駄目なの。明日からは自由だから皆と食べても良いわ」

「そっかー」「じゃあ明日はお弁当食べようね!」


名桐「すんなり馴染んだわね」

海鈴「危うく訛りが出かけたけんど…ふー、気ぃ使うわ。で、会食とか聞いとらんでうち弁当持ってきてもうたんやけど」

名桐「嘘よ」

海鈴「あ、そうですか…」


名桐「ここが第二野球部の部室よ」

海鈴「えらい上にあるんやな…しかもコンテナて」

名桐「それは何故かは私も知らないけど…さ、入りましょ」


名桐「邪魔するわよ」

吉祥「おう」

岸華「ええ」

海鈴「どうも、転入生の海鈴ネシュットです」

吉祥「同じ二年の吉祥や、よしなに」

岸華「岸華よ、よろしく」

名桐「二人とも二年三組だから何かあって私が居ないときは声をかけてちょうだい」

海鈴「わかりました」

吉祥「…聖籠の出って聞いたけどあまり訛って無いんだ」

海鈴「え?自分わかるん?」

吉祥「おお…それが普通の喋り方やんな」

海鈴「そなんよー、いやー硬っ苦しいのは勘弁やけんなーこう喋れると楽やな」

吉祥「それでいいよ」

岸華「ここに来たってことは『魔術』が使えるのね、聖籠といえば…誰がいたかしら?」

海鈴「あ、あかんねん。うち大会とか出とらんからそこら辺全く知らんのや」

吉祥「成る程ね、箱入りガールって訳だ」

海鈴「そなんよ、ここにも宅配便で届いたけんな」

吉祥「…」

海鈴「…」

吉祥「ふははは」

海鈴「くははは」


ガシッ


吉祥「吉祥縁だ、二南高の事なら任せとけ」

海鈴「海鈴ネシュットや、心強い味方ができて何より」


岸華「何あれ」

名桐「さあ…」



吉祥「へー、本当に箱入りガールなんだな」

海鈴「そなんよ、今回も頼み込んだんよ、どうしても行きたい、行けんなら家出てくって」

岸華「やるわね…」

吉祥「しかし海鈴グループか…聞いたことあるような…」

海鈴「うち大会のスポンサーにはなっとるけんそれや無いんか?」

岸華「確かに横断幕を見たことある気がするわね」

海鈴「せやろ?」

名桐「何でこの時期なのよ」

海鈴「そらあれや、夏休み前一ヶ月に絞れば短期間の受け入れをしてくれるゆう話やったけん…別にうちは二学期丸々でも良かったんやけどおとんがなー…」

名桐「成る程、過保護ねぇ」

海鈴「せやろ!ほんまうるさいねんあのジジは…」

吉祥「ははは」


男「失礼します…っとお昼ご飯中だった?」

吉祥「おう、ほい転入生」

男「あ、例の…こんにちは」

海鈴「こん兄さんも生徒か?えろう老けとうね」

男「あの…一応教師です…赤田友紀と申します…」

海鈴「あっ…そらすんません、女子校やさかい年頃の男の面がようわからんねん」

男「ははは…」

海鈴「しかし…」ジー

男「?」

海鈴「見覚えのある顔やんか、自分出身は?」

男「えーと生まれも育ちも南鳥国ですけど…」

海鈴「そうなん?うーんうちここ来たんは初めてやからなあ…うんよろしく」

男「よろしくね」

海鈴「ん、気に入ったわ」

男「ど、どうも…」


吉祥「どう思いますか?判定員の岸華さん」

岸華「まだ判別は付きませんがどうでしょうね、先生はみり…なに言わせてんのよ」

吉祥「みり…?」

岸華「みりんみたいな顔してますからね」

吉祥「え…」



海鈴「ごっそさん」

吉祥「ごちそうさま」

岸華「ふー…さてと」

吉祥「どこか行くのか?」

岸華「ええ、顔合わせはしたしもう少し居たいんだけど…生徒会の仕事があるから」

名桐「じゃあ海鈴さんのこと、何かあったらよろしく頼むわよ」

岸華「言われなくても、よ」


男「クーラー入れていい?」

吉祥「構わんよ」

海鈴「…」ジー

男「な、何かな」

海鈴「…うち先生の事気に入ったんよ」

男「う、うん」

海鈴「せやから今日学校の周りあないしてくれまへん?」

男「え…別に良いけど…名桐さんが」

海鈴「そこで何で名桐はんが出てくるんや…まさかっデキとるんかっ」

男「いやいやいや、なあ」

名桐「別に良いわよ、どうせ今日からうちに泊まる事になってるから私もついて行くけど」

海鈴「そういうことや、まさか二人きりやと思ったん?」

男「う…」

海鈴「なんや、かいらしなあ」


男(また変な娘だなあ…)

吉祥(こりゃ一波乱ありますで…多分、いやあってくれ…)


………


岸華「…」カリカリ

岸華「フー…」

新田「どう?」

岸華「ひとまずは、というところでしょうか…」

新田「……うん、良い感じね。後はこっちでしておくわ」

岸華「有り難う御座います」

新田「ふふ、これなら後期からは岸華さんが会長になっても安心ね」

岸華「そ、そんな…私なんて部長に比べたらまだまだです、頑張ります」

新田「そんなに根を詰めたらだめよ、適度に息抜きしながらが一番長続きするんだから」

岸華「…そうですね、体を壊しては元も子もありませんから」

新田「そうですよ…っと、今日は部室に行くの?」

岸華「そうですね、今から行こうかと」

新田「ええ、転入生さんによろしくね」

岸華「はい」



岸華「失礼しま…す」

七原「う…」カチカチ

香椎「はやー…」

吉祥「…おー」

海鈴「…」カタカタカタカタ

名桐「あら遅かったわね」

岸華「生徒会の仕事で少しね…はい差し入れ、ジュースとお菓子しか無いけど」

名桐「ありがと」

岸華「で、この状況は何かしら」

名桐「彼女ゲーマーらしいわよ」

岸華「へーそう…」

名桐「さっきから没頭してるわ」

岸華「強いの?」

七原「結構強いですね、惨敗しました」

海鈴「かかってくるよろし」

吉祥「ふははは、奴は四天王の中でも最弱!西南原イチのダークネスイリュージョンを見せてやろうじゃないの!」カチャカチャ

海鈴「かもん!」カタカタ

岸華「…」

名桐「…少ししてみたいわね」

岸華「やめときなさい」

名桐「冗談よ」


吉祥「勝ったぜ」

海鈴「そのモリーガンの動き…まさかヴァルハンランキングトップランカーのキッシーやないんかあんた…」

吉祥「ふっ…バレてしまっては仕方ない、西南原センターの全一モリーガン使いのキッシーとは私の事よ!」

海鈴「な、なんやって…かぁーこら勝たな終われまへんわ!」

吉祥「なあに、そっちこそレーレートップクラスのネシュウだろ?わかるぜ…」

海鈴「ふっ…まさか直接対決することになるとは思ってへんかったけど…今日こそは勝ったるわ、サー・レーレーの名に懸けて!」


岸華「…これは終わらないわね」

名桐「ネッシーだかキッシーだか知らないけど今日学校周辺の案内をする予定なんだけど…」

吉祥「んなもんセンセー待たせとけっ」カチャカチャカチャカチャ

海鈴「それまでにケリつけたるっ」カカカカカチャカチャ

七原「勉強になる…」

香椎「頭痛い…うううう」



男「ごめん遅くなっちゃって…」

岸華「こっちはまだかかりそうよ」

吉祥「おら!おら!」カチャチャカチャカチャ

海鈴「くっ…きさん…ぐ…」カチカチ

名桐「あーあー」

吉祥「くにへ、かえるんだな。おまえにもかぞくがいるだろう……」

海鈴「うう…あかんわ、今のは無し、も一回、も一回や!」

吉祥「まあ待て…お嬢さん、あんたゲーセンでこのゲームプレイしたこと、あるかい?」

海鈴「ゲーセンではあらへんよ…家に筐体置いとんねん」

吉祥「まじか…」

岸華「ええ…」

名桐(うちも昔ぽよぽよとか遊興室に置いてたわね…)

吉祥「ともかくだな、私はゲーセンでワンコインかけて毎回戦ってきたわけだ。金を使ってるからな、やるからには負けたくない…その気持ちが私を強くしたんだ!」

海鈴「くっ、そんな差があったとは…次はぜぇったい負けへんからな!見とれよ!」

吉祥「ああ…待ってるぜ、上のステージでな…くははは」

岸華「…そろそろ良いかしら」

吉祥「ん」

海鈴「いやー楽しかったわ」

名桐「えい…あ、終わった?」

香椎「わわっえーとえーと」

岸華「そっちはそっちで何してるのよ…」

名桐「見てわからない?ぽよぽよよ」

岸華「それはわかるわよ…」

香椎「す、すみません私が少し遊びたくなっちゃって…っあ」

名桐「はい私の勝ち」

香椎「ばたんきゅー…」

男(懐かしいな…)

男「じゃあ早速学校周辺を案内しようか」

海鈴「せやね、行こっ」

男「うん」

岸華「…いってらっしゃい」

吉祥「ん、いってらっさい」

香椎「いってらっしゃい」

七原(次は…勝つ)



男「とりあえずここが正門ね。地図で言うとここ」

海鈴「家はどこや?」

名桐「えー…ここね、少し遠いけど迎えが来るわよ」

海鈴「そらありがたいわ、これから暑うなるけんね」

男「で、ここらへんが住宅街でここが商店街…日用品とかはここで買えるかな」

海鈴「ほう」

男「まあそんなとこかな、何か質問は?」

海鈴「ん?無いなあ…ほな商店街行ってみたいわあ」

男「そうだね、どんなお店があるか見てみようか」

名桐「…」


男「こんな感じだよ」

海鈴「はあ~これは中々盛況やんな」

名桐「ま、田舎だからね」

海鈴「いやーうちが元々住んじょったんはこげえ人居らんかったけんなあ…」

男「一応スーパーとか薬局も入ってるよ」

海鈴「ほー」

名桐「安っぽいのは間違いないけどね」

男「そりゃ名桐さんが普段行ってるとことかと比べるとね…」

名桐「買い物も殆ど自分でしないもの」

海鈴「そりゃあかんわ君、物価やら地域性を見るんならこーいう場所に来んと」

名桐「あら意外、海鈴グループの令嬢はご自身で買い物なさるのね」

海鈴「せや、欲しいもんは自分の目で見らな納得いかん性分でな…それにうちは手伝いさんとかおらへんかったからおかんにお使い頼まれることが多かったんや」

名桐「ふーん…」

男「結構家庭的なんだね」

海鈴「せやろ、料理とかも出くるんやー」

男「偉い!」

海鈴「ふっふー」

名桐「別に私も料理くらいやろうと思えばできるわよ…多分」

男「多分…」


海鈴「ええ雰囲気やん」

男「結構来るんだよねここ、カレーが美味しくてさ…」

名桐「あんたカフェでカレーとか食べるの…?」

男「学生の頃はまずここでカレー食べて次は向こうのケーキ屋で甘味を食べて最後はうどんで…今はもう入らないな、はは」

名桐「え…最後にうどんなの…」

「失礼します、ご注文のブレンド珈琲とホットミルク、レモンティーです。熱いのでお気をつけ下さい」

男「ありがとうございます」

名桐「熱っ…」

海鈴「ふーふー…んく」

男「ああ、汗かきそう…」

名桐「朝夕も大分暑くなってきたわね」

男「そうだね、もう夏か…早いなあ」

名桐「まだ学校始まって三ヶ月だけどね」

海鈴「ふー…ところで先生は誰が好きなん?」

男「ぶっ」

名桐「げほっごほっ熱っ…何聞いてんのよアンタ」

海鈴「ん?なんぞ悪かったかいな。見たところさっきの部員はみーんなかいらしいのが多かってんけどお気にの娘とかおるんやない?」

男「…あのね、僕はこれでも教師だから見た目中身で扱いに優劣をつけることは無いよ」

海鈴「ほうなん?ふーん…ほな君は先生のことどう思っとるん?」

名桐「…あのね、私はこんな庶民に興味は無いわよ」

海鈴「はーそうでっか…ふー」

男「ははは…これが普通だよ」

海鈴「他んはどないや?」

名桐「さあ?本人達に聞いてみなさい」

海鈴「それもそうやな…ふー」


名桐「…なんでホットミルクなの」

海鈴「牛乳好きなんや…」



海鈴「ん、迎えか」

名桐「ええそうよ、じゃあ先生さよなら」

男「ん、二人ともお疲れさん。明日からもよろしくね」

海鈴「おう」

名桐「言われなくても、よ」


……………


海鈴「変態さんや、おはよっ」

男「おはよう…誰の事を言ってるのかな」

海鈴「いややなー、先生しかおらんよ?」

男「ははは、そうだね。でも僕は変態呼ばわりされる覚えは無いよ」

海鈴「ええっ何呆けたこと言うとるんやこの変態さんは」

男「……ちなみに何で変態だと思うのかな?」

海鈴「えっ…そ、そげなこつ乙女ん口から言わせっのはいけずやよ…」テレテレ

男「何それ怖い…じゃなくて何を名桐さんから聞いたの?」

海鈴「着替え中の女生徒に無理矢理迫ったとかなんとか…いやー見た目によらず獣やねえ」

男「いやいやいや迫ってないよ!」

海鈴「…ほな着替え中を覗いたんはほんまなんやな」

男「そ、それも偶然で…悪意有っての行動じゃなりませんから!」

海鈴「ふぅん…ま、ええわ」

男「誤解だよー」

海鈴「そういうことにしといたるわ」

男「うーん釈然としない」

名桐「何言ってるのよ」

男「名桐さん!」

名桐「アンタが私の着替えを覗いたのは事実でしょ、それと同じように私がそのとき襲われると思ったのも事実よ」

男「…確かに」

海鈴「な?」

名桐「肯定するのはどうかと思うわよ」

男「ごもっとも…」


………


海鈴「あーうんわかっとるわかっとるほなな」

『まて』


ガチャン


海鈴「えろうすんまへんな、電話借りまして」

紅田「良いってことよ」

海鈴「いやーしかし楽しいわやっぱり…自由が一番やんな」

紅田「それは何より」

海鈴「何時から長期休暇なんやっけ」

紅田「…例年通りなら七月の後半かな」

海鈴「知らないんやね…」

紅田「いつからだったかな…」

海鈴「一ヶ月は短いやんなあ、何とかでけへんやろかあ…」

紅田「お父さんに頼んでみたら?」

海鈴「そいなあ、結構頼み尽くしたところあるけんなあ」

紅田「なるほど」

海鈴「あくまで表面上は名桐さんとことの取引の一端で来てることになっとんのよ」

紅田「ふむ」

海鈴「そやけわや言えんつーのはあるわ」

紅田「そうねい、うちからしても客人扱いだもんねい」

海鈴「はー…まあしゃあないなこればかしは」

紅田「さいでんなあ」

海鈴「ほな電話ありがとうございました…また」

紅田「ええ」


海鈴「邪魔するでー」

岸華「どうぞ」

海鈴「そこは邪魔するんやったら帰ってーやろ…ん?」

香椎「…」カタカタ

名桐「うわ」カタカタ

七原「…あー」カチャカチャ

吉祥「…」カタカタカタ

海鈴「…ここはゲーム同好会なん?」

岸華「一応違うわね」

海鈴「一応…」

名桐「ふー…かなり上手くなったわね、創」

香椎「えへへ、家で少し練習したの」

名桐「負けてられないわね…じゃなくって」

香椎「?」

名桐「独占インタビューさせてもらおうと思ってたのよ」

海鈴「うち?ええよー」

吉祥「新聞部みたいなことするんだなお前…」

名桐「一応これでも新聞部よ私」

岸華「一応…」

名桐「ま、記事にするのは私じゃないから質問も部員から任されたやつだし軽く答えてくれれば良いわよ」

海鈴「わかったわ、ほなパッとしますかねい」

名桐「名前と年から」

海鈴「海鈴ネシュット、齢十七や」

名桐「出身は?」

海鈴「聖籠国は瑞哭族」

名桐「今回はなぜこの学校に?」

海鈴「南鳥国の文化を学ぶためや」

名桐「趣味特技は?」

海鈴「ゲームやな」

名桐「…他には?」

海鈴「…?」

名桐「えーじゃあ旅行と地方民俗学にしておくわね」

海鈴「堅すぎるわそがあなん」

名桐「良いのよ、どうせ他の奴らと仲良しごっことかするつもり無いんでしょ」

海鈴「そらそうやけど…」

名桐「でしょ。転入前の学校は?」

海鈴「聖籠国立飛渡女学院や」

名桐「座右の銘は?」

海鈴「外連味」

名桐「為せば成る為さねば成らぬ何事も、と…」

海鈴「ええー…」

名桐「身長体重は?」

海鈴「身長は百六十三の体重は秘密や」

名桐「ふーん…まあまあね」

海鈴「ここの部員に囲まるると自分が小さい気ぃがしてくるわホンマ…君はなんぼなん?」

名桐「百七十一よ」

海鈴「はー高いなあそら…」

名桐「無駄にね…えーっとこんなモノね、後はこっちで推敲するから」

海鈴「はいよ…インタビューいらへんやろこれ」

名桐「一応よ、一応。さっきも言ったけど記事書くのは私じゃないもの」

海鈴「そないなもんですか、難儀やんなあ」

岸華「私からも一つ良いかしら」

名桐「珍しいわね」

海鈴「かまへんよ」

岸華「どのくらいの『魔術』が使えるか、見せてほしいのだけれども…勿論差し支え無ければ、よ。嫌なら嫌と断ってくれても構わないわ」

海鈴「んー私はかまへんよ、私大会に出たりせえへんけんね…ただ」

黒鹿毛「駄目ですよ」

岸華「きゃっ」

海鈴「わっ」

名桐「ひゃ」

岸華「く、黒鹿毛副校長…」

海鈴「そなんよね、注意事項で使っちゃあかんらしいねん」

黒鹿毛「私達同伴で無ければ」

岸華「…タイミングばっちしですね」

黒鹿毛「偶然ですよ、偶然。では早速地下室に行きましょうか」

名桐「私パス」

海鈴「来ないん?」

名桐「インタビュー渡さないといけないしね」

黒鹿毛「…そこのゲームしてる人達も来なさい」

吉祥「あ、はいよ」

七原「か、勝てない…」

香椎「あっは、はい…」



海鈴「こんなもんや」

七原「はー…見たことない技ですね」

吉祥「割とテクニカルやんなあ」

海鈴「『魔術』七割体術三割位の比率なんよ、うち」

香椎「わ、私と同じ位ですね」

岸華「身体強化は?」

海鈴「無しや」

吉祥「あれかな、吹き飛ばしとかは圧力系でしてるのかな」

海鈴「せや、反発と引き込み、張力を変化させたりしてんねん」

吉祥「ほー…」

香椎「念動力は…」

海鈴「相手本体にかくる事は少ないなあ、周りごと振り回す感じや」

岸華「…一戦したいのだけども」

黒鹿毛「駄目なんですよ」

岸華「ですよね…」

海鈴「うちはかまへんのやけどおとんがなあ…」

吉祥「なんで大会に出ないの?」

海鈴「それもおとんがなあ…」

香椎「わかります、私も始めは反対されましたから…」

海鈴「お、どないして説得したんや?」

香椎「…」


香椎「暗示ですね」

海鈴「実の親にか…」


カミングスーン


最近出番が少ない様な気がするのですが…気のせいですかね、先生?ともあれ転入生を迎えた第二野球部ではのんびりとした日々が始まりそうですね、そうであることを願いますよ。次回、「ジョソウ」ああ、吉祥先輩に勝ちたい…(七原)

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