第十四話

名桐「おはよう」

「おはようございます、お嬢様。朝食の準備が整っておりますゆえどうぞこちらに」

名桐「ええ、すぐ行くわ」

「はい」

名桐「いつも美味しいわね…どうやったらこんなに美味しくなるのかしら」

「様々な一流ホテルやレストランを経て腕を磨くと言いますね」

名桐「一流…ねえ」

「急に如何されたのですか?」

名桐「貴女には関係ないわ、ちょっと知りたくなっただけよ」

「差し出がましい真似をいたしました、失礼しました」

名桐「いいわよ別に…私も変わったのかしら?」


名桐「さて、行ってきます」

「いってらっしゃいませ、お嬢様」

名桐「…お嬢様ってのもね、今時時代錯誤よね」

「左様でしょうか」

名桐「別に風香さんとかでも良いのよね私は」

「旦那様にはお嬢様と呼ぶよう命じられてます故」

名桐「余計なことを…そうなのよね、こういう環境だから友達も中々出来ないと思うのよね」

「は、はあ…」

名桐「…自己を演じる、か。アイツも変なことしてるわね」

「お車がついたようですのでお見送り致します、今朝は雨のようですから」

名桐「梅雨入りかしら、久々雨ね」

「そうかもしれませんね…午後で一旦止むとの事ですが傘を」

名桐「ありがとう、じゃ」

「ええ、いってらっしゃいませ」


第十四話 コウタイ


七原「うん、少し倒れちゃってさ」

香椎「う、うん…それで少し気になって…」

七原「何が原因か、で一番やりそうなのは…吉祥先輩かなって」

香椎「そ、それは失礼だよ」

七原「そうだけど一番やりかねない感じが…」

香椎「た、確かにそうだけど」

七原「只違うと思うんだよね、感じが違った」

香椎「感じが?」

七原「うん。私感知とか苦手だからそこまでは出来なかったけど、創ちゃんとか大体誰がそれを使ったかとかってわかるでしょ?」

香椎「あ、い、一度感知すればなんとなくは…」

七原「ただ部室って皆出入りするからね…なんなら過去の人のもまだ残ってたりするでしょ?その…それが」

香椎「う、うん…でも直近ならわかったかもだけど…もう綺麗にされちゃったんだよね」

七原「うん…まあ何事も無かったから良かったんだけど…」

香椎「せ、先生には影響無かったの?」

七原「みたい。鈍感だからかな」

香椎「くす、かもね」

七原「うーん気になる…」

香椎「そ、そうだね…少しの間部室に一人で入るのはき、気を付けて方がいいかも…」

七原「そうするよ、とりあえず次部員全員が集まるのは月一の定例会だろうからそれまでは少し行かないでおこうかな」

香椎「そ、そうだね」


香椎(そういえば…岸華先輩が最近変って言ってたけど…これは関係ないか)



吉祥「………」


岸華「吉祥さん、おはよっ!最近遅刻せず来るようになったね、やれば出来るってとこ、見せてもらっちゃった」

吉祥「あ、はいどーも…」

岸華「この調子で勉強も頑張ろうねっ」

吉祥「……なあ岸華お前いつまで」

岸華「あ、おはよー!」


吉祥「………」


岸華「今日?うんいいよ。実は行きたいところがあってさー…うんうん!そうなの!」


吉祥「…なんだかなあ」

名桐「嫉妬?」

吉祥「バカ言うなお前」

名桐「今まではまあ形はどうあれあんたが独占してたものね…ふふふ」

吉祥「違うって」

名桐「良いじゃないの。岸華は皆と仲良くなって素敵な学校生活を、あんたは岸華につつかれない明るい未来が待ってるのよ?」

吉祥「けっ、お前こそどうなんだよ」

名桐「私にはなおのこと関係ないわよ、元々関わり無かったもの」

吉祥「はいはいそうですね」

名桐「…つまらない意地張ってると後悔するわよ」

吉祥「それは私?お前?それとも」

名桐「さあ?ご想像におまかせするわ…じゃっ」

吉祥「ああ戻ってくるなよ」


吉祥「…」



男「お?おお?」

黒鹿毛「どうしました赤田先生」

男「いやなんか遠近感覚が急に…」

黒鹿毛「コンタクトですか?」

男「裸眼です…おっとと」

黒鹿毛「…こちらへ来てください」

男「は、はい…」

黒鹿毛「手を出して」

男「はい」

黒鹿毛「ふんっ」

男「痛っ…お?」

黒鹿毛「目のツボを圧しました、少しは軽減されると思います」

男「あ、ありがとうございます」

黒鹿毛「きちんとした治療でしたら戸ノ内先生の所へ行ってください」

男「ええ、時間があいたらそうします…痛たた」

黒鹿毛「しかし…実験台にされたようですね」

男「いえ、そんな覚えはありませんが…」

黒鹿毛「そうですか」

男「ええ、ここ最近体の調子があまり良くないみたいで」

黒鹿毛「健全な生活に健全な肉体が宿りますよ、気を付けることです」

男「そうですね…」


男「あ、凄く痛いんですね目のツボ」

黒鹿毛「ええ、痛くしましたから」


………


紅田「暇や…暇やー」

有馬「手伝えよ」

紅田「いやー私『魔術』使えないしなあ」

有馬「この野郎…ほら、内容見て判子押すだけにしといたからやれ」

紅田「仕方ないねえ…ほい」

有馬「黒鹿毛に余り迷惑かけないでくれよ」

紅田「お?妻の心配か?」

有馬「ああそうだよ、俺も滅多に帰って来れる訳じゃねーからさ。少しでも一緒の時間は作りたいんだわ」

紅田「はーそうですか、そうですか」

有馬「お前こそどうしてんだよ、夫婦生活はよ」

紅田「私が向こうに出向かないと会えないからね…最近会ってないな」

有馬「忙しいからな、今結構…俺も少ししたらまた出らねばならん」

紅田「またあ?」

有馬「しかたないだろ、対外交渉ほぼ俺がしてんだから…引き継げる奴もいないしな」

紅田「奥さんが心配しちゃうぞ」

有馬「だからさっさお前も仕事してくれ、変に溜めなければ少しは向こうにいく時間もとれるだろ」

紅田「…はいはい」

有馬「あ、それはそうと」

紅田「んー?」

有馬「夏に湖舟が会えんかと言ってたぞ」

紅田「え、あのロリババアまだ生きてんの?」

有馬「それはやめろ」

紅田「別にいいよ、私暇だし…」

有馬「そりゃ良かった、今度連絡とってやれよ」

紅田「そうする」

有馬「なんかあのー…会議らしい」

紅田「え?真面目なの?」

有馬「そうでもなさそうだったけどなんか言ってたな…」

紅田「はー…連絡とるついでに聞いておくか」

有馬「そうしてくれ…はい次」

紅田「まだあんの?」

有馬「溜めなけりゃもっと早く終わってんだよ」

紅田「く…受付嬢の言うこと聞いておくんだった…」



受付嬢『くしゅ』

戸ノ内「なんだそれ」

受付嬢『噂されたようです』

戸ノ内「そんな機能付けたっけ…」



名桐「本当に岸華に何もしてないのね?一応これ、温情だから…もしここで本当の事言わなければ全校生徒にでも休日に岸華さんを見ませんでしたか?って吉祥に聞き回らせるわよ…大事にしたいってなら別だけど」

男「…実は、デートに」

名桐「はあああ…そんなこったろうと思ったわよ。で、そこで何かしたんでしょ」

男「うーんしてもらったと言えば高校時代僕のストーカーしてた奴が居たから付き合ってるふりをしてもらったよ」

名桐「…それじゃないかしら」

男「でもどちらかというとノリノリだったけどなあ」

名桐「頭が痛くなるわね…そんなことだろうと思ったけど」

男「いや面目ない」

名桐「ふーん…とりあえずは良いわ、どうせ自分が何したかまでは覚えて無いでしょうし…エビングハウスの言うことが正しければ後はなんとかなるでしょ」

男「エビ…なんて?」

名桐「うるっさいわね!兎に角あんたがすべきことは岸華との会話を一言一句思い出せばいいのよ!なあんで私がそんなことまで手伝わなきゃならないわけ!馬鹿!」

男「え?…行っちゃった」


………


岸華「でしょ、ここのが美味しいんだって」

「美味しい!」「良く知ってんじゃん!」「甘いもの好きとか?きゃはは」


七原「ほ、本当だ…」

吉祥「な?」

香椎「」

吉祥「ショックが強すぎたか…」

七原「…でも、岸華先輩がこの状態になった理由まではわかってないんですよね?」

吉祥「そーなのさー」

七原「というか私達に関係あります?言ってしまえば岸華先輩の問題じゃないですか…問題というほどでもないとは思いますが」

吉祥「言ってしまうとそうなんだけどねい…」

香椎「で、でも私達に出きることって何かありますか?」

吉祥「…無いね、それに岸華自身色々考えて動く奴だと私は思ってる。余計な手出し口出しはいらないか」

七原「元々他のクラスメイトとかとは関わって無かったんですよね」

吉祥「うん」

七原「何かあってそれが切っ掛けで仲良くなったとか…」

吉祥「かもな、私もよくよく考えたらそこまでの仲じゃないし…これまで通り接しよう」

七原「そうですね」

香椎「」こくこく

吉祥「とりあえずここの揚げ鳥めちゃ旨いから食べようや、持ち帰りも出きるぞ」

七原「あ、いいですね」

香椎「ど、道理で良い匂いが…うう、お腹鳴っちゃった…」


……………


新田「岸華さん」

岸華「部長」

新田「こことここ、申請書が抜けてましたよ」

岸華「あっ…す、すみません。すぐに準備します」

新田「そんなに急いでないので大丈夫ですよ…私最近部活に顔だしないので」

岸華「部長が来てくださると皆引き締まるんですけどね」

新田「そんなに威圧感あります?私…」

岸華「おおっと」


岸華「…ふう」

岸華(久々に失敗、気を付けないと…とりあえず最優先はまとめた提出書類を職員室に持ってく、その後申請書を書いて…生徒会の稟議書も作っておかないと。そしたら予算組みも次の会議で提出できるし。勉強は帰って…あ)

岸華「疲れた…」


岸華(はっ、一瞬寝てた…今何時?)


岸華(八時半!)

岸華(一瞬かと思ったらバッチリ寝てたじゃない私の馬鹿馬鹿!急がないと…職員室の電気は付いてるから提出書類は机の上に置いてこよう)


岸華「…失礼します」

受付嬢『あら、寝坊助さんがようやく起きたのね』

岸華「あ…すみません。提出書類があったのでそれだけ…」

受付嬢『帰り、大丈夫?外はもう暗いわよ』

岸華「はい、大丈夫です…何時に閉めます?」

受付嬢『今日は…横の会議が終わり次第かしら、大体九時十時よ。私もとっとと帰りたいのだけどもね…』

岸華「ありがとうございます、迎えを呼ぶので少し校舎にいてても良いですか?」

受付嬢『ええ、良いわよ。流石にこの時間だと帰れとも言えないしね』

岸華「ありがとうございます、失礼します」


岸華(受付嬢さん、だったかしら。何か感じ違ったわね…)

岸華(兎も角一つはクリア、後は…あの部屋でしよう)



岸華「…いない」

岸華(誰が置いたか知らないけどテーブルライトがあるのが有難いわね)

岸華「ふー…さあて頑張るわよ」



岸華「とりあえず一段落…これぐらいにして帰ろうかしら」

岸華(…懐かしいわねー、ここで先生と初めてワタシが会ったんだっけ)

岸華(ふふ、思い出すだけで笑えてきちゃう、あの時の勘違いしたワタシ。恥ずかしかったな)

岸華「でも…それもお仕舞い、か」


男『らしくない感じはするね』


岸華『らしくない…って何が?私らしいって何?普段の私が私らしいの?』


男『今の岸華さんと普段を比べた時に…』


岸華「……ぐすっ、帰ろ」


………


男「お疲れ様でした…」

紅田「お疲れ様…」

黒鹿毛「お疲れ様です」

有馬「お疲れ」

受付嬢『お疲れ様様です、お茶を淹れましょうか』

紅田「よろしく…」

男「ふー…」

有馬「赤田」

男「は、はいっ」

有馬「この後暇?飯行こう飯」

男「はいっ是非!」

黒鹿毛「な………ま、流石に良いですよ。男同士語らいたいこともあるでしょうから」

紅田「じゃ、私達はガールズトークといきます?」

黒鹿毛「イタいですよ」

紅田「きっつ、言い方きつ!」

受付嬢『あら、終わってたのね』

受付嬢『ええ、今丁度』

受付嬢『そう、なら私も帰らせてもらうわよ…眠くて堪らないわ』

紅田「健康的だね…もう眠気も吹っ飛んじゃったよ」

黒鹿毛「会議中頭揺れてましたけどね」

紅田「…きつー」

受付嬢『夜の番は私が致しますので』

受付嬢『当然よ、持ち回りでしょ。別のが控え室で寝てるから叩き起こして良いわよ』

受付嬢『そうします』

黒鹿毛「ではお先にどうぞ、内容をまとめたら帰りますので」

紅田「そう?ごめんねー…」

男「先に失礼します!」

有馬「じゃ、後でな」

黒鹿毛「ええ」



有馬「乾杯」

男「乾杯」

有馬「…あー長い会議の後のレモンは効くな」

男「すっぱ!すっっぱ!」

有馬「どう?仕事には慣れた?」

男「中々…自分より一回り若いのが相手だとどうも」

有馬「はははだろう?それが妙齢の女性ともなるとな…ははは」

男「ごもっともです…」

有馬「部活はどうだ」

男「いやー上手く出来てるのかどうかすらわからないですね、探り探りな感じです」

有馬「今年の一年はよく知らないが二年の吉祥な、あれは良いぞ。成績と性格はアレだが周りがよく見えてる。手助けしてもらえ…調子には乗せないように」

男「そうですね…しかしなんと言いますか身近に慕ってくれる女学生がいるのは良いですね」

有馬「始めはな」

男「と言いますと?」

有馬「当然こっちは一定の距離感を保たねばならない。しかし向こうは遠慮なく距離を詰めてくる、心においても体においても」

男「体というと生々しいですが日々実感はしています」

有馬「教師が生徒に手を出した日には…死ぬ」

男「デスヨネー」

有馬「ある程度断る勇気と毅然とした態度がいるんだけど…ただ間違っても突き放しちゃいけないよ」

男「…心します」

有馬「昔ね、それはそれは俺を慕う学生がいてね…今だから言うが告白もされたしキスも受けたし危うくホテルにも引っ張りこまれたこともあったよ。」

男「」ドキッ

有馬「ただある時その生徒が気付くんだよ。『あ、これは尊敬の念だな』って…第二野球部の奴等は育ちが荒れてるのが多いんだ。『魔術』が使えるってだけでな…だからこれまでそういう感情を持ったこと無い分混同しやすい。だからこそはっきりわかるようになるまで手を出してはいけないんだ」

男「そうですね、そうですよね…」

有馬「出してしまえば終わりだ。バレないにせよその生徒の一生を間違いなくぶち壊すことになる…覚えておいてくれ」

男「…はい!」

有馬「まあその女学生ってのは現部長の新田だったりすんだがな」

男「ぶっ…げほっげえっ…ほ、本当ですか!?あの新田さんが…」

有馬「あんなすました顔して『先生、ホテル行きましょう』とか言いやがったからな…いやヤバいだろ?」

男「…ヤバいですね」

有馬「俺も危うく家庭が無かったらふらふらっと手を出してたかもわからんな、ははは」

男「ははは…は」

有馬「お?どうした?ああ飲み物が無いのか。店員さー…」


黒鹿毛「…」


有馬「…お約束か」

男「…みたいですね」



黒鹿毛「ぷはーっ…美味しい、美味しい…」

有馬「うう、今月の小遣いが…」

男(完全に尻に敷かれてる…)

有馬「…ところでよ、赤田。高校の時の事って思い出せるか?」

男「ええ、ざっとですけど…あ、でもたまに忘れてることありますね」

有馬「ほおー、例えば?」

男「これ旧鬼さんにも言われたんですけど良く一緒に遊んでた奴がいたとか、良く昼飯食べた奴がいたとか…あ、先生は知ってますよね。あの部屋、誰かと良くいた気がしたんですけどねー…」

有馬「あるある、俺も若いときのこととか殆ど覚えてねーもん」

男「…そういえば先生って私が学生の頃からかわりませんよね、黒鹿毛副校長も紅田校長も…」

有馬「ん?まあたった六年じゃな」

男「私は結構色々変わったんですけど先生方からすればまだまだひよ子って事ですかね」

有馬「ひよ子かひよっこかは知らんが俺から見ても赤田はよくやってると思うよ。なあ黒鹿毛」

黒鹿毛「そうですね、ええそうですとも。貴方に良く似てますわ、危うく生徒にふらふらっと行ってるとこも」

有馬「…きつー」

男「ははは、は…は」


……………


男「うわあ天気怪しいなあ…」

七原「あれっ先生おはようございます」

男「七原か、今日は早いね」

七原「風紀委員会の仕事で少しありまして」

男「持ち物検査か。しかし学級委員長に風紀委員か…凄いね」

七原「そんな私なんてまだまだですよ、岸華先輩なんて生徒会なんですから」

男「まあそうだけどさ、そこは自信もっていいと思うよ」

七原「くす、ありがとうございます」

男「しかし持ち物検査ねえ、懐かしいなあ…」

七原「先生が生徒だった頃もあったんですか?」

男「勿論。抜き打ちだったけど日にちは友達に教えて貰ってたから引っ掛かったことは無かったんだけどね…」

七原「そんな見つかったら不味いものを持ってきてたんですね…」

男「あ、いやそんなヤバいものじゃないよ、カメラだよカメラ。趣味って言ったろ?」

七原「じゃあそのカメラの中には女子のあられもない格好が写ってたりですか?」

男「…そんな訳無いだろう」

七原「怪しいですね、くす」

男「その頃はまだ僕も若かったからね…」

七原「今はどうなんですか?」

男「流石に駄目でしょ、はは」

七原「…撮ってもいいのに」

男「駄目だってば」

七原「ふふ…あ、そういえばこないだ吉祥先輩がバイクの免許をとったそうですよ」

男「へーっ…よく受かったなあ」

七原「皆さん第一声がそれなんですよね…」

男「あ、これは失言」

七原「まあ確かにそのお陰で再補習を受けたみたいですが…」

男「うーん流石吉祥」

七原「先生は車の免許持ってますもんね」

男「バイクも一応持ってるんだ。バイク持ってないけどね…」

七原「海岸線沿いを走るの、気持ち良さそうですよね」

男「ああ良いね、色々吹っ飛ぶだろうなあ…」

七原「…私もとってみようかな」

男「まずは原付からが良いと思うよ、一応…」



吉祥「これはあのーアレですよ!今後の進路の勉強の為に…なあ名桐!」

名桐「馬鹿ねアンタ、お先」

吉祥「おっ…テメッ」

旧鬼「流石に持ち物検査だからな、バイク雑誌はアウトだ…放課後とりに来いよ」

吉祥「うはあ…七原~教えてくれても良いじゃんかよ~」

七原「駄目ですよ、先輩。普段からピシッとしないと」

旧鬼「出来た後輩を持ってるよ、吉祥。少しは見習ってくれ」

吉祥「あい…」


吉祥「こーいうとき毎回私がこーいう役回りなのは納得いかないのですが!」

旧鬼「じゃあもう少しちゃんとしてくれ…な?」

吉祥「正論!」


………


男「ご飯、忘れた…食堂いこ」


男「……日替わりAにしよ」ピッ


男「食券、日替わりAで…ええ、お願いします」


男「ありがとうございます」


男「ご飯大盛りにすればよかったな…」

新田「あら先生、横失礼します」

男「新田さん」

新田「食堂では初めまして、ですね」

男「え、ええそうですね」

男(クールビューティー、と言うのか?七原がどことなく少女の面影を残す感じとすれば新田さんは放つオーラがもはや大人!凛!)

新田「先生?」

男「あっいやー何頼んだのかなーって」

新田「日替わりBです…先生はAなんですね」

男「ああうんなんとなくだけどね…ははは」

新田「私も少し悩んだんですけど、揚げ物を控えようかと」

男「そんな気にするほどかなあ…」

新田「女の子にとっては大事なコトなんです」

男(案外中身は年相応?しかしこの人にホテル行こう?とか言われたら…耐えられないかも)

新田「有馬先生がですね」

男「っはい、有馬先生がどうされました!」

新田「…元気が有り余ってるようですね」

男「あ…すみません」

新田「ふふ。有馬先生がですね、赤田先生の事を凄く評価してるって事、ご存知ですか?」

男「なんとなく期待されてるのは背中に感じますが…」

新田「そうですよ、私も期待してます。なんせ有馬先生の代わりに第二野球部の顧問になられたのですから」

男「そうですよね、有馬先生は私が学生の頃から尊敬を集める方でしたから…私と比べる事すら烏滸がましいですよ」

新田「そうですね、知識だとか経験に関しても…当然比肩しないですね」

男「…はい」

新田「ただですね、やはり人それぞれなんですよ。赤田先生には赤田先生の良さがあり、有馬先生には有馬先生の良さがあります。当然です」

男「私が有馬先生に勝ってるところはありますかね…」

新田「………単純?」

男「ええ…」

新田「冗談です。それは、先生ご自身で見つけることですよ。それでは」

男「えっもう食べてる…あっはいすみません、ありがとうございました…」

新田「後。私も生徒なんですからそんなに畏まらないで下さい…ふふ」

男「は、はい」


男(凄く大人…だ)



紅田「うは~雨降ると蒸すなあ!」

黒鹿毛「そろそろクールビズにしましょうか」

紅田「それ採用!」

黒鹿毛「…で、そのタンクトップ、半パンからどうやってクールビズにします?」

紅田「…キャストオフ?」

黒鹿毛「さ、服を着てください」

紅田「はい…」


男「あれは…大人のはず…大人ってなんだ…?」


………


吉祥「失礼しまーす…おろ?香椎どうした」

香椎「あ、えっと…その…」

旧鬼「来たか、ほい雑誌と反省文」

吉祥「たはー」

旧鬼「とっとと書いて持ってこいよ」

吉祥「凜然!冷酷!」

旧鬼「うるさいなこいつ」

香椎「あは、あはは…」

吉祥「んー、さては香椎!お前も引っ掛かったんだろー?」

香椎「あ、う、じ、実は…」

吉祥「へえー真面目ガールかと思ったら意外だな!」

香椎「う、うう…」

旧鬼「香椎さんのは…はい人形」

香椎「あ、ありがとうございます…ふふ」

旧鬼「…」


旧鬼・吉祥(かわいい…)


吉祥「え、香椎は反省文ないの?」

旧鬼「お前一年の頃から合計で何回引っ掛かったと思ってるんだ?八回目だぞっ八回目!」

吉祥「ひっ…」

旧鬼「今日という今日は許さん」

吉祥「ごっ…助けて!香椎!助けて!」

香椎「…」

旧鬼「…」


吉祥「あ、駄目なのね…はは、ははは…」


吉祥「こーいう役回りはこりごりだぁ!」


カミングスーン


吉祥は死んだ

さて、楽しい学校生活は梅雨に入りじめじめとした日が続く。ただそんなことはお構い無しに第二野球部の熱い人間関係のトリックプレーは加速し始めるようだな。しかしなんだ…赤田、頑張れよ。次回、「サイテン」一学期ももう後半。だけどまだまだこれからだよ(旧鬼)

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