第十三話

岸華「…んあ」

男「何をご褒美にするか決まった?」

岸華「ん?ああそうだったわね、すっかり…まだ決まってないわよ。これから決めに行くんだから」

男「そうだね」

岸華「さ、着いたわ」


第十三話 ホンシン


男「久々に来たなあ…」

岸華「私もよ、一人で来るような所じゃないもの」

男「それもそうか、観光地だし」

岸華「んん~しかし暑いわね」

男「もう五月も終盤、そろそろ梅雨か…」

岸華「そうね、じめじめしてるのって嫌なのよね…」

男「そう!そうなんだよ、半袖でも嫌な暑さがこもるというかべとっとした感じになるというか…学生の頃は肌着を何着か持っていってたよ」

岸華「くす、まるで潔癖ね」

男「当時は冷感シートとか無かったからね…濡れタオルが神様だったよ」

岸華「ふふっ」

男「はは…」


男(あれ…これなんだか…デートっぽくないか?)



岸華「あっここ、ここ来たかったの」

男「ん、入ろうか」


「いらっしゃいませー…」


男「海辺の雑貨屋ってなんか懐かしい気分になるんだよな…」

岸華「アンティークな感じがするからじゃない?ふふっ」

男「そうかも、こういうノスタルジックって言うのかな、雰囲気がね」

岸華「あまりこういう店、商店街には無いから良いわね」

男「ああ確かにね、あっても新しい感じのだもんね」

岸華「あれはあれで好きなんだけど趣味としてはこっちね」

男「そうだな、たまには雑貨屋もいいな…」


男(前七原さんとも行ったけど…)


岸華「…」ジトッ

男「…どうしたの?」

岸華「…私といる時に他の人のこと、考えないでほしい」

男「え?あ、ごめん。前雑貨屋に七原さんと行ったなーとか思ってた」

岸華「私のことだけ考えてれば良いのよ…あ」

男「…それは告白?」

岸華「…余所見しないでってこと、よ」

男「ん?」

岸華「気にしないで、こっちの話」

男「?」


岸華(いつも考えてたことが口から出ちゃったじゃない、もう…)

岸華「あれ、先生?」


??「…あの」

男「はい?」

??「赤田君…だよね?」

男「え?そうですが…」

??「私、覚えてる?高校の頃同じクラスだった能勢だけど」

男「…ああ思い出した、能勢小波渡さんだっけ、久しぶりだね」

能勢「うん、久しぶり…」

男「見たろ?連れと来てるからさ…じゃっ」

能勢「ちょっとくらいいいでしょ?私、ここで会えたの運命だと思うのよね」

男「いやそれは違うと思うけど…兎に角だな」

能勢「ね?ちょっとそこでお茶でも飲もうよ」

男「…飲まないって」

岸華「どうしたの?」

男「………私こいつと付き合ってるからさ、マジ今そういうの駄目なんだ」

能勢「…へえー、そうなんだ。見たことない…年下?」

男「大学の後輩、な?」

岸華「そういうことね」

能勢「ふーん、そう…じゃ、また今度ね」

男「ああ」


岸華「さらっと付き合ってることにしたわね」

男「高校の頃滅茶苦茶追いかけられてトラウマになっててだな、あれくらい言わないと引かなかったんだよ」

岸華「そうね、じゃあ今日はそういう事にしてみる?」

男「つまり?」

岸華「私たちは付き合ってて、デートしてるの」

男「ああそうしてくれるとありがたいよ。いつどこで現れるか…ほら鳥肌」

岸華「くすっ、じゃあ呼び方も先生じゃなくて…赤田先輩とか、友紀クンの方が良い?」

男「そうだな、悪いけど頼むよ」

岸華「うん、友紀クン…ふふっ、何だか可笑しいね」

男「いやあ照れるね」


男(能勢には悪いが…役得だな)

岸華(さっきの人にはお礼を言いたいくらいね)


男「…」

岸華「…」

男「…じゃ、じゃあ行こうか?」

岸華「…そ、そうね」


………


男「ん、そろそろご飯にしよっか」

岸華「そうね、友紀クン食べたいものとかある?」

男「特には。決めてる?」

岸華「うん、こっち…嫌いなものとか無かったよね?」

男「うん、大丈夫」


岸華「美味しそう」

男「あったなあこれ…地元バーガーとか言ってさ、一時期話題になったんだよね」

岸華「そうなんだ、飲み物は何にするの?」

男「ありがと…じゃあコーラで」

岸華「うん…潮の匂いがするね」

男「そうだね、結構近いからかな。行ってそこで食べる?」

岸華「良いわね、そうしましょ」


男「あーいい…凄く、何て言うか…良い」

岸華「少し眩しいね」

男「まあ昼間だしね…はい」

岸華「ありがと」

男「結構人、多いね…そりゃ休日だからか」

岸華「あんまり人混み好きじゃないから嫌だけど…友紀クンと一緒なら大丈夫だよ」

男「そう、そりゃ良かった…」


男(あれ?岸華さんってこんなキャラだっけか?普段とのギャップで滅茶苦茶可愛く見えるぞ…いや普段から可愛いからなおのこと…!)


岸華「美味しー」

男「あ、うん美味しいね」

岸華「ふふっ、ここ、ソースついてる」

男「えっ」

岸華「ああもう逆…んっ」

男「!」

岸華「…美味しい、ね」


男(生徒生徒岸華は生徒生徒なんだ)


男「いやー旨いなー美味しいなー」

岸華「こっちも美味しいよ?はいあーん」

男「い、いやそれはちょっと…」

岸華「恥ずかしがることないよ?だって私達付き合ってるのよ?」

男「う…あーん」

岸華「くすっ、どう?」

男「凄く、美味しいね」

岸華「でしょ?私結構ジャンクフードとか好きなの」

男「へえー、それは意外だよ」

岸華「お母さん忙しいから自分で作ることも有るけど大抵は時間が無いからこういうのを買うのよ」

男「ああ成る程…今度手料理食べてみたいなあ」

岸華「ふふっ、今度ね」


男(幸せだ)


岸華「きゃっ…」

男「おっとと…結構風強いねー、これが潮風か」

岸華「ビックリしちゃった、あはは」

男(あ、髪に埃が付いちゃってる)

男「…岸華さん」

岸華「ん…ん?」

男「いや髪にゴミがね」

岸華「…そう、ありがと」


………


岸華「これも良いわね」

男「観光地あるある、謎のご当地アイス」

岸華「ふっ、くはっ、ふふっ、あははは」

男「美味しいんだけどね」

岸華「ふふふっ、そうね、美味しいけどよく見るよね…どれがいい?」

男「じゃあ…胡桃バターで」

岸華「私はー…塩抹茶にしよ」


男「こっちあいてるよ」

岸華「ん、ありがと」

男「少し早かったかな」

岸華「季節?大分暖かいから大丈夫」

男「そう?」

岸華「あー…美味しい、冷たい」

男「ちょっとしょっぱいのが良い」

岸華「うん、友紀クンのも食べてみたいな」

男「え…じゃあはい、あーん」

岸華「ん…美味し」


男(キス思い出しちゃった…)


男「…」

岸華「じゃ、お返し」

男「あ、ありがと…うん、結構抹茶美味しいな」

岸華「たまに食べたくなるのよね、たまに…」

男「あーある、それで辛いの結構食べたくなるんだよね」

岸華「それは辛味で刺激を求めてるのかもね、ふふ」

男「はは」


………



男「暖かいね」

岸華「うん、ねえ友紀クン」

男「うん?」

岸華「今の私と、学校での私。どっちが好き?」

男「…うーんそれはキャラ的な意味合いで?」

岸華「ま、そういうことだと思って」

男「そうだなあ…今のその…デートしてくれてる岸華さんは本当に付き合ってるみたいで…凄く良い、良いんだけどさ…」

岸華「…うん」

男「無理してない?」

岸華「…無理なんかしてないよ」

男「そう?でも…やっぱりらしくない感じはするね」

岸華「らしくない…って何が?私らしいって何?普段の私が私らしいの?」

男「えっいやその…今の岸華さんと普段を比べた時に…」

岸華「そっか」


岸華(…)


………


岸華「じゃあ今日はありがとう」

男「ううん、こっちこそ楽しかったよ」

岸華「じゃあね、先生」


男「…ご褒美は決まったのかな」


……………


吉祥「あ…あった」

吉祥「つ、ついに自動二輪免許、取得っ…!」

吉祥「ああ、バイトも勉強頑張った甲斐がついに報われたのだ…!バイクも選ばないとなあ、ふははは」


吉祥「ふんふふん」カチッ

吉祥(この原付ともおさらばだぜ、長いようで短い間だったけど…サンキュー)

吉祥「……お?」


香椎「…」

吉祥「香椎、どうした」

香椎「あっき、吉祥先輩。お、お疲れ様です」

吉祥「お疲れ様。家この近くとかじゃないよな、どうした」

香椎「あっいえその…習い事で」

吉祥「ああ成る程、迎え待ち?」

香椎「は、はい」

吉祥「そりゃ本当にご苦労様」

香椎「吉祥先輩こそどうしたんですか?」

吉祥「ん?ふふ、ふはは、聞いて驚け!ついに自動二輪免許を取得したのだ!これでバイクに乗れるのさあ」

香椎「お、おめでとうございます!ついに、ですね!」

吉祥「ああ、学業の合間を縫いバイトに勉強と頑張った甲斐があったよ…!バイク買ったら乗せたるからな」

香椎「えっ…」


香椎「いや良いです」

吉祥「デスヨネー」


………


吉祥「ふははは、教室!着座!」

名桐「ふう、珍しく早いね。うるさいのが」

吉祥「なんとでも言え、ははは」

名桐「ふーん、その様子じゃ受かったみたいね」

吉祥「勿論よ、これで西南原の星になるぜ」

名桐「…どういうこと?」

吉祥「だからバイクを駆るスターダストになるわけよ」

名桐「……あんた補習行かなかったのね」

吉祥「アッ」


吉祥「はいぃ、ずびばぜんん、わずれでまじだぁ…」

旧鬼「遊びも程々にな」

吉祥「あい…ごべんだざい…」

旧鬼「…今度ツーリングでも行くか?」

吉祥「いきます!行きたいです!」

旧鬼「…補習、頑張りなよ」

吉祥「はい!」


旧鬼「しかしよく受かったな…」

吉祥「本番に強いので」

旧鬼「あ、そう…」



吉祥「岸華?今日いたけど…まだ話してはないな」

名桐「そう、何か様子が変なのよね」

吉祥「毎度世話焼きだね君は」

名桐「…!別に気になっただけだから」

吉祥(それは反論にもなってないんですが)

吉祥「で、どんな感じ?」

名桐「明るいのよ」

吉祥「明るい?」

名桐「最近の若者みたいなのよね」

吉祥「いや…岸華も一応最近の若者じゃないかな」

名桐「それが…あっ」

岸華「どうしたの?吉祥さん、名桐さん」

吉祥「んにゃ、野暮用でね…そっちこそどうした?」

岸華「ん?何か話してたから困ったこととかないかなーって」

吉祥「……いや無いよ」

名桐「ええ、無いわね」

岸華「そう?何かあったらすぐ声かけてね」


吉祥「気が狂ったのかもな…」

名桐「そうね…」

吉祥「…とりあえずこないだの休日の動きを追おう、任せた」

名桐「ええ…って何で私が?」


………


男「起立、礼。お疲れ様」

七原「先生、少しよろしいですか?」

男「ん、なんだ七原」

七原「ええっとその…」

男「ああ、うんわかった。部室でな…」


男「鍵…っと」

七原「どうしました?」

男「いや、あいてる…」

七原「誰かいるんですかね」

男「…入ってみようか」

七原「そうですね」

男「失礼しまーす…」


男「誰もいないや」

七原「本当ですね…うっ」

男「どうした?」

七原「急に気分が悪く…なっちゃいました」

男「ほ、保健室行こう」

七原「はい…」


男「一旦失礼します、すぐ戻って来ますので」

戸ノ内「あいあーい…これは何かにあてられたみたいだネー」

七原「何か…でも、結界とかは感じなかったですよ」

戸ノ内「うーん余程高位のもの、もしくは『魔力』由来のモノでないかなんだけどモー」

七原「まさか…幽霊…」

戸ノ内「かもネー」

七原「まさか…そんな」

戸ノ内「たまに出るんだよネーあそこ…過去私達に殺された奴等の霊が…」


戸ノ内「気絶しちゃった」

??「ビビらせるからでしょ」

戸ノ内「学生をからかうのは楽しいなあ…」

??「で、なんなのさ」

戸ノ内「毒気だ、発動したあとなら『魔力』を感知しづらいから十中八九な」

??「あの娘、そんなに『魔力』耐性もなさそうだし感知も苦手な風だったもんね」

戸ノ内「そういうこと、ほかの奴だったら感知してただろうから不幸にもってとこか」

??「問題はこの学校内で誰がそんな『魔術』紛いを使ったか…でしょ」

戸ノ内「いや、もうそれはわかったよ。大体」

??「流石科学捜査隊」

戸ノ内「違う」


戸ノ内「とりあえず部室だな」

??「犯人は現場にいる!」

戸ノ内「ふむ…実際さほど強くないが先程よりは弱まったと考えるべきかな」

??「鍵閉まってるよ」

戸ノ内「ほい鍵」

??「わあい、私錠開けるのだーいすき」

戸ノ内「ふうっ…もういないな」

??「本当だ…」

戸ノ内「とりあえず浄化してと」

??「ごみごみしてる」

戸ノ内「それは浄化できないかな…」

??「ぷあっ、苦しかった」

戸ノ内「とりあえず、いつもの状態だな」

??「記憶の残滓は?」

戸ノ内「そうだな…いや、そこまで踏み込む事でもないだろう」

??「取り忘れたんでしょ」

戸ノ内「うるさいなコイツ」


………


男「大丈夫?」

七原「…んがっ、う、酷い夢を見た気分」

男「まだ横になってていいよ」

七原「はい…いてて」

男「水飲む?」

七原「ありがとうございます…ごくごく」

男「急に倒れちゃったからビックリしたよ…病院行く?」

七原「ぷぁっ…大丈夫です、ここには戸ノ内先生がいますから」

男「それもそうだね」

七原「しかし…今思うとアレは…」

男「ん?」

七原「い、いえ、なんでもありません」


七原(過去感じたことのある瘴気のような…)


戸ノ内「ただいま」

七原「あ…すみません」

戸ノ内「とりあえず解毒薬と栄養剤だヨー」

七原「ありがとうございます」

男「立ちくらみですかね」

戸ノ内「かもネー、あそこ空気薄いかラー」

男「…そうですかね」

戸ノ内「上の方は空気が薄い、これ鉄板ヨー」

七原「…赤田先生、そろそろ授業、始まっちゃいますよ。…戻ってください」

男「わ、本当…じゃあすみませんが戸ノ内先生、お願いします」

戸ノ内「任せてヨー」


戸ノ内「さテー気づいてるんじゃないかな?」

七原「何にですか?」

戸ノ内「一、鍵のかかった部室に入れる、そして鍵を閉められる。二、七原さんがダメージを受けるほど高い『魔力』由来の毒気。三、それを七原さんでは感知出来なかった…」

七原「毒気だったんですか?」

戸ノ内「多分…七原さん感知とか得意じゃないでショー、気体の『魔力』感知って結構分散するし元々あそこは『魔力』が多いからネー」

七原「あ…成る程」

戸ノ内「当人には勿論そのつもりは無かったんだろうけどモー…運が悪かったね」

七原「…誰かの仕業ってことですか」

戸ノ内「仕業って程の事じゃないヨー、自然発生の炭鉱ガスみたいなものネー。本人には私から言っておくから、体調よくなったら戻りなヨー」

七原「はい…ありがとうございます」


戸ノ内(ま、私が当人に言うわけにもいかんからな)

??「言おうよーひっちゃかめっちゃかにしちゃおうよー」

戸ノ内「なんなんだお前マジで…」



戸ノ内「…と、言うわけだヨー」

男「じゃあ今日七原さんが倒れたのは岸華さんの所為だってことですか」

戸ノ内「そうなるネー、ただ本人はそんなことになってるって自覚はないだろうけどネー」

男「あったら犯罪じゃないですか」

戸ノ内「自覚無くても犯罪だヨー…」

男「ともあれ証拠も無いのにそんな…」

戸ノ内「証拠?証拠ならあるヨー、あそこに漂ってた毒気が岸華さんのと一致したのよー」

男「…?」

戸ノ内「分かりやすくいうと遺伝子検査みたいなものでネー、『魔力』ってのは大抵自身の身体を通して発現するのよネー?だからそれのオーラだとか癖とかでわかっちゃうんだなこれがサー」

男「なんとなくわかりました」

戸ノ内「筆跡鑑定と思ってくれても良いヨー」

男「じゃあ岸華さんだったとして何故そんなことを」

戸ノ内「そんなの私が知ったこっちゃないヨー、それを調べろって言ってんのサー」

男「…わかりました」

戸ノ内「じゃ、よろしくネー」


戸ノ内(変わんないな、トモキ君は…)


………


男(と、言われてもね…)

男(そこまで踏み込んだことを、しかも証拠をこの目で見たわけでもないし理由も思い当たらないし…難しいな)

男(…)

吉祥「おい」

男「…教師に向かっておいは無いだろおいは」

吉祥「細かいね、私の髪の毛かあ?」

男「その例えはわからん」

吉祥「ふん、まあいいさ…ちょっと時間あるか?」

男「え、あるけど…先に用件を聞かせてくれるかな」

吉祥「なんだ用心深いな…まーちょーっと人の来ないとこじゃないと話せないもんでね…センセーも、そうだろ?」

男「な、何故それを」

吉祥「直感。じゃ、行こっか」

男「行くってどこに…」

吉祥「旧校舎」

男「まあ…そこなら来ないか」


吉祥「じゃあー単刀直入に聞くけど!この休日岸華になにかした?」

男「何か?何かって言われても…ははは」

男(デートしたとは言えないな…)

吉祥「……ま、体に聞くまでか。ほあた!」

男「うごっ…何を」

吉祥「人間に七百八ある秘孔のうち、解唖門天聴を突いた。これで私の質問には強制的に答えてもらうよ、ふははは」

男「なっ…」

吉祥「昨日の晩御飯は?」

男「唐揚げ」

吉祥「単体?」

男「ご飯、漬け物、味噌汁、キャベツのサラダ付き」

吉祥「え、キャベツのサラダ?何かけた?」

男「ごまドレッシング」

吉祥「え~、ごまドレ…まあ美味しいけどさ」

男「それ聞いてどうするの?」

吉祥「いんや特には…まあこういうのは違う気がしてね」

男「そう…」

吉祥「ひとつだけ、最後に。…センセーは好きな人、いる?」

男「いるよ」

吉祥「そう、それがわかれば…用無しだ!死ねぃ!人中極!」

男「おごっ…」

吉祥「…わくわく」

男「…何もおこらないんだけど」

吉祥「ん、間違ったかな?」

男「おいおいビックリしたよ…ん!?あ、歩けない…!!」

吉祥「…なんだ、椎神か」

男「なんだじゃなくて、早く解いてくれよ…!」

吉祥「………わからん」

男「…」

吉祥「わからん」

男「え…?」

吉祥「…え?」



男「…え?」


………


男「おわあっ!!」

受付嬢『おはようございます赤田先生』

男「あ、おはようございます…」

受付嬢『旧校舎で倒れてるところを朝発見しまして…如何されたのですか』

男「え…ん…お、覚えてない…何も!」

受付嬢『そうですか、頭でも打ったのでしょう。安静になさってください』

男「そうですね…」

受付嬢『とりあえず着替えられてはどうですか?』

男「そうします…」

受付嬢『では』


男「?何故旧校舎で倒れてたんだ私は…気づいたら宿直室だったし…」

男「まあいいか!」


吉祥「頭顳はちゃんと合ってたようだな…」

受付嬢『吉祥さん、ちょっと』

吉祥「ひっ…」


……………


名桐「じゃあ何も聞けて無いわけ?」

吉祥「そーいうこと。記憶は消しといたけど」

名桐「…で、なんでそんなに怪我してるの?」

吉祥「聞くな、治りが遅くてな」

名桐「そう…」

吉祥「岸華は?」

名桐「あの調子よ」

吉祥「…はあ、こういうときは本人に聞くのが一番早いんだが」


「えー本当?岸華さん面白ーい!」「凄いねー、羨ましー」

岸華「そんなことないよー、偶々だったけど…やっぱり面白かったかも」


あははは


吉祥「…」

名桐「…このままの方が平和な気がしてきたわね」

吉祥「さもありなん」

名桐「まあ様子見ね、このままでも私は一向に構わないけど」

吉祥「張り合いがない、か?」

名桐「そんな訳無いじゃない。じゃあそろそろ戻るわよ」

吉祥「はいはい」


吉祥「ふーむ…」



吉祥「と、言うわけなんスわ」

戸ノ内「へーえ、それはそれは面白いネー」

吉祥「でしょ、ははは」

戸ノ内「君赤田先生になんかした?」

吉祥「どわっふ…急にぶちこんできましたね…」

戸ノ内「まあ少しネー」

吉祥「大したことはしてませんよ」

戸ノ内「今日職員室で一騒ぎあったみたいだけどサー」

吉祥「…あっそうなんですかへー」

戸ノ内「悪用は止めることヨー」

吉祥「悪用というか濫用というか…ははは」

戸ノ内「ははは」

吉祥「いや中中面白かったですよ」

戸ノ内「今度してみようかナー」

吉祥「ま、その件は受付嬢さんにこってり絞られましたからね、当分は黙ってますよ」

戸ノ内「それがいいヨー」

吉祥「…で、さっきの件ですけど」

戸ノ内「ああ岸華さん?休日に何があったかは…知らないネー」

吉祥「そうですか、ふーむ」

戸ノ内「なんでワタシのとこに来たノー?」

吉祥「色々知ってそうじゃないですか」

戸ノ内「学問に関してはだヨー、習ってく?」

吉祥「いや、遠慮しておきます…後ですな薬、薬そろそろ飲まなくても良いのではないですかね?大分良くなったのですが…」

戸ノ内「んー…そうだねー、一応まだ飲んだ方が良いかもネー」

吉祥「がっくし」

戸ノ内「仕方ないヨー、これで飲むのやめて後々支障があったら大変ヨー」

吉祥「うう、わかりました…」


吉祥「うーん不味い」



名桐「と、言うわけなのよね」

香椎「そ、そうなんだ…知らなかった」

名桐「ま、学年違うとね…しかし八方手詰まりね」

香椎「休日の岸華先輩が何してるか、全然知らないです」

名桐「そうよね…彼氏でもできたのかしら」

香椎「そ、そうかもしれませんね…」

名桐「…別に赤田先生とは言って無いわよ」

香椎「そっそそそんな!べっ別に私もそんな岸華先輩の彼氏が赤田先生だったら嫌だなあなんてひとひと一言もも」

名桐「動揺し過ぎよ」

吉祥「駄目だ駄目だ、さっぱり」

名桐「あら、うるさいのが来たわね」

吉祥「手当たり次第行ってみたが誰も口を割らないんだ」

名桐「じゃあ私達に出来ることはないわね」

吉祥「…それもそうか、あいつがそういう生き方をするってならこっちに止める筋合いも無いしな。慣れるしかあるまいよ」

名桐「…そうね」

吉祥「今となっては元々あんな感じだった気もしてきたし」

名桐「そうね、それはあるわね」

香椎「?」


………


岸華「…あ、そろそろ下校時間だね。私用事あるから、お先にね」

「うん」「じゃーねー」「また明日~」



岸華「…」カリカリ

岸華「………」カリカリカリカリ

岸華「……………」ガリガリガリガリガリガリ


カミングスーン


また面倒な事に巻き込まれちゃった気分ね…自分から頭を突っ込んでる?馬鹿なこと言わないでよ!…そりゃ少しは気になってるけどあくまで友達としてよ!友達として!ほんの少しよ、小指の爪の先位よ!ふんっ!次回、「コウタイ」。まあ成り行きに任せるしかなさそうね今回は…(名桐)

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