第十話
男「…うーん」
新田「どうかしました」
男「いや、なんと言いますか…」
新田「何が起きているか理解が出来ないという感じですね」
男「ええその通りでして…」
新田「それが『魔術』ですからね、正直私も理論派ではないので良くはわからないのですが」
男「うわ」
新田「今のは体術ですよ、極めて投げてます」
男「動きが早すぎる…」
第十話 イッセン
新田「あ、この次七原さんの試合が始まりますよ」
男「相手は?」
新田「ええと…聖籠の美良ですね、去年はベスト十六とかでしたよ」
男「強い…のかな」
新田「どうでしょう、体術は下の上、『魔術』中心のタイプだったかと」
男「うーん…香椎さんみたいな?」
新田「あれでも香椎さんは体術でもこの中では中の上ですよ、他の部員が強すぎるだけで…いえ、少し言い過ぎました」
男「…難しいですね」
新田「まあ七原さんにとって本番は準決勝ですから」
男「どういうこと?」
新田「岸華さんが相手になるでしょうから。さ、始まりますよ」
男「おおっと」
七原「いつも通りいきます」
吉祥「体術で押せば勝てる相手やから気負わずに。一発もないし詰めてええよ」
七原「了解です」
『それでは只今よりCコートにて一回戦第四試合、第二南原高校七原海選手対見枷中央高校美良ハルイエ選手の試合を開始致します』
『両者前へ』
七原「…よろしくお願いします」
美良「…よろしくお願いします」
『構え』
新田「お、美良の奴グローブ着けてる」
男「手を痛めないようにですかね」
新田「それか暗器系でしょう」
男「…物騒ですね」
新田「戦術の一つですよ」
『始めっ』
七原「…」
新田「ふむ」
男「わ、地面が…」
新田「体術系にはまず足場から攻めるのは定石ですね」
男「はー…」
美良「くっ」
新田「それに対しては距離を詰めるよりは距離をとって牽制をした方が安定した立ち回りとされます。ただ速さに自信があるなら詰めてもカウンターに気を付ければ」
『試合終了です、只今のCコートの試合は七原選手の勝ちです』
新田「絞め落としましたね」
男「早いですね…」
新田「実力がよっぽど近かったり耐久型の優秀な人でなければ試合時間自体は短くなりがちですね、実際」
男「そうなんですね、思ったより参加選手が多いので結構時間かかると思ってました」
新田「長い試合は長いですけどね…一回戦とかならこんなものでしょう」
男「ふーむ…」
新田「香椎さんの試合までは少し間が空きますね」
男「じゃあ七原さんと話を…」
新田「労うのは最後で充分ですよ、他の試合を見て勉強してください」
男「は、はい」
…
香椎「う、うう…き、きっ緊張が」
岸華「初めてはそうよね、でも案外なんとかなるものよ」
香椎「がっががが頑張りますすす」
岸華「…大丈夫かしら」
新田「相手は…聖籠の小手島ですか、まあ大丈夫でしょう」
男「香椎さん…滅茶苦茶緊張してますね」
新田「内向的な性格ですからね、心配はしていませんが」
男「その心は?」
新田「この試合、一撃で終わりますよ」
男「…嫌な予感」
新田「防御は任せて下さい、私の後ろへ」
男「どうも…」
『構え』
香椎「」パクパク
『始め』
小手島(好機…!)
香椎「ーーーーーーーーー‼️ーーーーーーーーーーーーーーー‼️ーーー‼️」
ゴガッ
香椎「」ハアハア
『只今のCコートの試合は香椎選手の勝ちです』
男「…」
新田「古代『魔術』ですね、こればかしは原理を知ってようが知ってまいが撃たせた時点で大概の人は負けるでしょうね」
男「…」
新田「今のは相手の周囲を真空にして気を失わせた後にぶん殴った、というところですね」
男「…床材で?」
新田「拳を痛めないことと威力を考えれば最善手です」
男「はあ、何が何だか…」
新田「そんなに強力なのを撃たなかったのは…被害を考えたか、『魔力』消費を抑えておきたかったのでしょう」
男「何か叫んでいたのは」
新田「意味はわかりませんがあれは詠唱と言いまして主に現象のトリガーとして」
男「ごめんやっぱりいいや」
新田「でしょうね」
七原「これで二回戦までは少し時間が空きますね」
男「七原さん、戻ってきてたんですね。お疲れ様」
七原「はい」
新田「どう?」
七原「ちらほらと強そうなのがいますね」
新田「そうでしょう、例えば…次の相手は北機の仙道ですね、うーん」
七原「どうかしましたか」
新田「同じ近接型ですが身体強化ではなく武器中心の立ち回りが特徴ですね。一回戦は体術のみで勝ってますが」
七原「でも大抵のは壊せますよ」
新田「棒術の使い手って事は知ってるのですが…実際使ってるところは見たことが無いのです」
七原「それはどういう」
新田「私としたときは使わせる間もなくぶっ飛ばしてしまいましたから」
七原「なるほど」
新田「しかし大方タネはわかってます、ごにょごにょ」
七原「…成る程、それは見えないかも知れないですね」
新田「くれぐれも気を付けた方がいいですね」
七原「はい」
男「…?」
………
七原「…」
仙道「…」
『始め』
七原「…っ」
仙道「シィ」
男「わっ」
新田「速度が上がってる気はしますが避けれないほどではないですね」
男「でもかすってますよ」
新田「直撃しようが七原さんの身体なら受けきれるはずです、問題は…」
七原「ハッ…っとぉ!」
仙道「チッ」
新田「…やはりそうでしたか」
男「なにが起こってます?」
新田「ノーモーションで棒を打ち出せるようですね、踏み込ませるだけでカウンターを当てれるのは強いですね」
男「ふーむ…?」
新田「要はある程度距離を保てば当たらないはずです」
七原「ふんっ」
仙道「…」
新田「まあ当たっても余程のカウンターでなけれは当たり負けしないでしょうが」
男「ふむ」
七原「っ」
仙道「…」
新田「あれ、今の当たるんだ」
男「見えないです…」
新田「まあある程度私も予測と組み合わせてる部分はありますけど」
七原「!」
仙道「ぎゃっ」
七原「おらっ」
新田「お、おお~」
男「『魔術』…ですか」
新田「いい使い方ですね、仙道も意識して無かったでしょう」
仙道「…っ」
七原「はあはあ…」
男「緊張してるのかな…」
新田「普段より疲れが早いですね」
男「頑張れ!七原!!」
新田「ええ…」
七原「…先生」ピク
仙道「っ」
七原「私、頑張ります」
仙道「何を…」
新田「お、おお~お?おーいいぞ!ヤれ!そこだ!極めろ!」
男「ええ…」
『試合終了です、只今のCコートの試合は七原選手の勝利です』
………
新田「はしゃぎすぎました」
男「そうだね」
新田「まあこれで…いや、これからが本番でしょうか」
男「そうだね」
岸華「そろそろ私の番ですね」
七原「そうですね」
香椎「」ガタガタ
吉祥「応援行こうかあ?いらないよねえ」
岸華「そうね、いらないわね」
吉祥「あら冷たいこと」
岸華「事実よ」
岸華「ふぁあ」
吉祥「はえーな」
岸華「シードだもの…」
吉祥「やれやれ、こっちもそう簡単にいくといいのだけどね…」
岸華「なにがよ」
吉祥「言ってみたかっただけ」
岸華「でしょうね」
吉祥「なんかダイジェストすらないんだけど」
七原「なにがですか?」
吉祥「いや…うーん…」
………
新田「ようやく準決勝ですね」
男「大分すっ飛ばしましたけどね」
新田「まあ…今回に関しては次元が違いますからね、うちの部員」
男「見てるとはっきりわかるよ…」
新田「そうですね、さて…」
七原「胸を借ります」
岸華「楽しみにしてるわ」
新田「ついに当たりましたね」
男「ど、どっちを応援しましょう」
新田「ここまでくれば表彰台は独占ですから適当に眺めればいいんですが」
男「学校としてはそうかも知れないですけど」
新田「え、個人的に応援したい娘がいるんですか?」
男「な、いやなんと言うか」
新田「…はあ」
紅田「岸華に晩飯」
新田「私もそうですよ」
男「こ、校長…」
紅田「七原はなあ…まあうん、経験が足りないな」
新田「そうですね」
吉祥「いいか、何度もボコられてるからわかってるだろうが不用意に近づくなよ」
七原「はい」
吉祥「あとお前さんが見てないかくし球なぞいくらでもあるからな…まあなんだ、頑張れ」
七原「はい」
岸華「…ふう」
『それでは只今よりAコートにて準決勝、第一試合第二南原高校七原海選手対同じく第二南原高校岸華聖選手の試合を行います。両者前へ』
『構えて』
岸華「…」
七原「…」
『始め』
岸華「押せ」
七原「どわあっ」
新田「うわあ」
紅田「こりゃ駄目だ」
男「うは」
岸華「引き戻せ」
七原「ぎっ…」
新田「たはー重力系で行くみたいですね」
紅田「上下なら耐えられるだろうけど…」
岸華「…っ」
七原「…はぁ、はあ」
新田「あ、鉄線」
紅田「黒鹿毛のか」
新田「どうでしょう、付け焼き刃ならこの一度だけでしょうけど」
紅田「意識には残るでしょう?」
男「成る程…」
七原「…!」
岸華「…」
新田「…?」
吉祥「なんかやるつもりだにゃあ?」
男「な、なんですか一体…」
七原「ーーーーーーー!」
岸華「!」
新田「そんな!」
吉祥「古代『魔術』!それも催眠暗示!」
男「な、なんですってー!」
岸華「チィ!」
七原「…」
男「あ、あれ?普通に岸華さん攻撃してますけど…」
新田「どういう効果です?」
香椎「あ、あれはハメ手なんです…」
吉祥「やっぱり…岸華が効果を知ってる、わけ無いだろうな」
新田「となると…」
岸華「このっ」
七原「…」
新田「攻撃が当たらない…」
香椎「そ、それだけじゃ無いのです」
吉祥「ハメ手は自分の攻撃を当て続ける事こそが真髄だにゃあ!」
男「なんという…」
七原「…っ」
岸華「ぐっ…」
新田「当たり始めましたね」
吉祥「これは止まらないにゃあ!」
香椎「…うーん」
七原「破」
岸華「ガッ」
新田「…あれ、何か変ですね」
吉祥「暗示が弱いんだにゃ、付け焼き刃、付け焼き刃!」
香椎「こ、この短時間じゃ習得までは至りませんでしたか…」
吉祥「教えたの?」
香椎「え、え?は、はい」
吉祥(古代『魔術』を教えれるって相当ヤバいな…)
七原「スッ」
岸華「ぬ…」
新田「しかし防げても抜け出すには至りませんね」
吉祥「レベルが低くても原理が解らなければ除算も難にゃ!」
男「つまり?」
吉祥「岸華は今のところ手詰まりですな」
男「むむ」
??「やっぱり駄目、あの娘は」
「酷いなあ母さん」
??「見てられない」
「まだ途中だよ!」
??「うるさい、最後まで見ても馬鹿らしい」
「そんな!ここからが面白いじゃんか!」
??「二度目は無い、光」
岸華光「…はい、母さん」
??「…母さんは止めなさい」
光「ええ~」
??「それにどうせつまらない試合だけど」
??「聖が勝つ」
光「…まあね」
七原「くっ…」
岸華「…いるのね」
七原「?」
岸華「七原さん、付け焼き刃でどうこうできるほど私は甘くないのよ」
七原「な…ぐはっ!」
香椎「そ、そんな、暗示を解くなんて…!」
新田「まだ完治とはいかないでしょうが七原さんにとってはキツいでしょうね」
吉祥「決めるつもりの技が返されちゃあにゃあ…つーか香椎は完璧に決めれるの?」
香椎「た、多分無理です…したことないので」
吉祥「あ、そう」
七原「…っ」
岸華「…ふう、これは教えて無かったわね」
七原「ぐ…くっ」
岸華「人の話は最後まで聞くものよ」
七原「まだまだっ」
岸華「とう」ゴッ
七原「」
…
男「お疲れ様、七原」
七原「う、うう、ハメ手まで使ったのに…負けるなんて…」
新田「岸華さん相手に頑張りました」
七原「山籠りまでしたのに…」
新田「え?」
男「さてはて」
新田「準決勝第二試合ですね」
七原「吉祥先輩と創ちゃん…練習では割と五分五分な感じでしたけど」
新田「吉祥さんがどこまで香椎さんの『魔術』に対応出来るかでしょうか」
七原「逆に吉祥先輩はどれだけ体術勝負に持ち込めるか…ですね」
吉祥「なーんで誰も応援してくれないかね」
「普段の行動が問題なんじゃないかしら」
吉祥「なんだ、来てたのか名桐」
名桐「ええ、今年も招待状が届いたもの」
吉祥「…そうか」
名桐「まあ見ててあげるから頑張りなさいよ」
吉祥「さいですか」
吉祥(しかしここの招待状って『魔術』組合関連若しくは過去出場者しか届かないはずなんだが…金持ちってのはそういうとこなんだろうな)
吉祥「ま、いいか」
香椎「ひゃ、何がですか」
吉祥「ん、いんやなんでも」
『只今より準決勝第二試合、第二南原高校吉祥選手対同じく第二南原高校香椎選手の試合を開始致します』
吉祥「さ、パパっと終わらせよう」
香椎「それは…こっちのセリフですっ」
『構えて』
吉祥「…」
香椎「…っ」
『始め』
香椎「ー」
吉祥「煌めけ一閃っ、聴けよ当然!我が名有名、くたばれ2700!」
香椎「なっ…きゃっ」
男「…は?」
新田「独自開発の『魔術』ですね」
岸華「…酷い詠唱」
七原「あれで威力があるのが恐ろしいですね」
吉祥「ふーははは!ふはは!」
香椎「ぐっ」
岸華「体術に持ち込みましたね」
新田「流石に古代『魔術』を撃たれては怖いのでしょう」
七原「ところで古代『魔術』と通常『魔術』と呼ばれてるモノの違いは…?」
吉祥「!」
香椎「!」
新田「まず、言語ですね。今では使われてないものだそうです」
岸華「『魔族』の言語とも言われてますね」
七原「私のは比較的簡単だと創ちゃんはいってましたが」
新田「そうですね、簡単な暗示なら対人限定ですから難しくはならない…らしいですね」
岸華「ただ戦闘に使うレベルとなると知識があっても普通の人は無理ですけどね」
香椎「…」
吉祥「…デイジーカッターも真っ青だな」
香椎「ふぅ、はぁ…棄権して下さい」
吉祥「腕の一本位で闘いから降りたらご先祖様もお怒りになるだろうよ」
香椎「…」
吉祥「さ、やろうか」
香椎「…はい」
男「き、吉祥さん!」
岸華「死んでも後で戸ノ内先生が治して下さいますよ」
新田「あまりお薦めはしませんが」
七原「死ぬほど痛いですからね…」
吉祥「まあ…血は直ぐ止まるんだけど体術は無理だなこりゃあ」
香椎「ーーーー!ーー!ーーーーーーーー!」
吉祥「ちっ」
香椎「ー!ーー!」
吉祥「とっお…爆!」
香椎「ひゃっ!」
男「うおっ…今のは?」
新田「基本的な簡易爆破ですね」
岸華「わざと拡散させて威力を落としてませんか?」
新田「威嚇が目的ならあるいは…」
七原「たまに体制を立て直すのにしますよ」
新田「そうですね」
吉祥「揺らめけ二千七百、放てマイマスター、供物、剥奪、瓜二つ、よろしくネッ!」
香椎「…な、しょ、召喚術!」
岸華「今のを一瞬で召喚術と看過する香椎さんも香椎さんですね」
新田「…ああ成る程」
岸華「なんです?」
新田「決勝で当たるかもしれないので今は秘密です」
男「…何か居ません?」
新田「あれ、見えるのですか」
男「うっすらと…煙の向こうに」
七原「…なんですか、あれ」
吉祥「名付けてハレンチ岸華ってとこか?」
香椎「な、な、なんという…」
岸華「…」ガタン
新田「駄目ですよ、試合の邪魔をしては」
七原「あ、あんな格好恥ずかし過ぎます…」
男「わっ、わあっ」
岸華「………騒がないで下さい、みっともないですよ」
新田(今一番みっともないのはあの姿の岸華さんだと思うけど…くはは)
名桐「…うわあ」
吉祥「いけっハレンチ岸華」
香椎「ぐっ…」
吉祥「そもそもだな、今現在古代『魔術』を使う利点は詠唱内容を相手にわからないようにするくらいしかないだろう?」
香椎「そっ…きゃあ」
吉祥「勿論普通の詠唱も強いよ…ただ術式を相手に教えてしまう時点ではアドバンテージは相手にあるから古代『魔術』を使うのはあながち間違いでもないのかもな」
香椎「なっなんの話をっ…ぐっ、してるんですかっ」
吉祥「さあね…」
新田「うわあ凄いですよあれ、跳んだり跳ねたりする度にひやひやしますね…」
七原「ひゃー」
岸華「………」グッ
男「岸華さん?ちょーっと目を押さえる力が強すぎるんじゃないかな?なんか変なものが見えてきたんだけど…あ、痛」
岸華「…」ミシ
吉祥「大分勉強したんですぜ、召喚術は」
香椎「ーーー!」
吉祥「まあ重要なのは召喚術とはまた別物なんだけど…」
香椎「そ、そんな…オートガード、いやこれは…」
吉祥「一から造るのは大変だったよ、いやなかなか上手くいってくれて良かったがね」
香椎「人造精霊…ですか…」
吉祥「…流石は香椎、そういうのには精通してるのな」
香椎「ーーーー!」
吉祥「おっと危ない、因みに半分正解」
香椎「この硬さ…人造精霊と『魔物』を、そ、それも生半可じゃないのを」
吉祥「大当たり。凄いね、どこでそういう知識着けてくるの?」
香椎「はあっ」
吉祥「げ」
新田「うーんどうもあの岸華さんは本物と比べると動きが悪いですね」
岸華「トレース仕切れて無さそうですね」
男「何も見えない…」
新田「…そろそろ香椎さんもエンジンがかかってくる頃合いでしょうか」
岸華「そうですね」
香椎「そ、それならこっちにも考えがありますっ…ぐ」
吉祥「なに?」
香椎「…つらとらん、めせん、はねるがつもり、よってつらん、みぃごとく、なせん、とらんやついぞ、みぃごとく、めせん、めせん、つらとらんくやぶ」
吉祥「まさか…」
岸華「……」
新田「召喚術のトレースですか」
七原「凄い…凄いことはわかりますが…原理がさっぱりわかりません!」
男「見えない、見えない…」
ドガッバキッ
吉祥「ひゃはっ、しかもっ、私のより…うはっ、強いじゃん!」
香椎「こ、構築に手を加えました…ーー!」
吉祥「げ、マジか…」
爆音、空気を切り裂く音、鈍く重い音…様々な音が鳴り響きそしてそれが静まる
吉祥「げほ…まさか、私の『魔力』が先に尽きちゃうとはね」
香椎「ひゅう…ごぼっ」
吉祥「幸い経験の差で私の勝ちってとこかな」
香椎「うう…ばたんきゅー」
『只今の準決勝第二試合は吉祥選手の勝利です』
…
吉祥「右腕と『魔力』を持っていかれるとはね」
戸ノ内「腕はもう動くヨー、『魔力』は規定値まで戻すネー」
吉祥「どうも…」
戸ノ内「ほいっ」
吉祥「しかし、はあ…また岸華とか」
岸華「互いにベストを尽くして頑張りましょうね」
吉祥「…目が笑ってないぞ」
岸華「…ソンナコトナイデスヨ?」
吉祥「まあなんだ、一ついうなら造りやすいのがお前さんだったんだよ」
岸華「だからってあの格好は無いわよ」
吉祥「いやー融合元の意匠が思ったより反映されちゃってね」
岸華「…そう」
岸華「まったく…恥ずかしかった…先生の前であんな…」
男「気にしないでよ」
岸華「にぎゃ!」
男「うわっ」
岸華「驚きたいのはこっちです…他の人は?」
男「いないよ。吉祥さんと香椎さんについて養護室に…次、決勝だね」
岸華「言われなくてもわかってるわよ」
男「頑張ってね」
岸華「吉祥にも言ってあげなさいよ」
男「ああ、もう伝えたよ」
岸華「…そう」ゲシッ
男「痛い、蹴らないで、蹴らないで…」
岸華「言われなくても…頑張るわよ」
……………
岸華「皆様お疲れ様です、まずは今年も無事上位独占したことを祝って、乾杯」
「「「乾杯~」」」
七原「お疲れ様です」
岸華「お疲れ様」
香椎「け、決勝す、凄かったですね…」
岸華「久々に…おっと来たわね」
吉祥「おっす乾杯…回復痛とか誰が考えたんだ?滅茶苦茶痛いんだけど…」
岸華「あら、もう喋れるのね」
吉祥「何とかな、口の中感覚ねーけど」
七原「ご飯食べます?」
吉祥「止めとくわ…何食っても味しねーもん」
香椎「こ、今度またご飯行きましょう?」
吉祥「そうするわ…いやーしかし岸華」
岸華「何?」
吉祥「優勝おめでとう」
岸華「…ええありがとう、と貴女に言うのも変な話だけれども」
七原「あの決勝を見た後私なんかまだまだだなって思いましたよ」
吉祥「そんなことはないさ、また来年頑張りなよ。今度は香椎とワンツーフィニッシュでさ」
七原「それまでには先輩方に負けないくらい強くなってみせますよっ」
岸華「言うわね、七原さん」
吉祥「はは。さ、どんどん飲んで食べてくれ、気にせずな」
…
男「ごめんごめん、遅れちゃった」
七原「あ、来た。遅いですよ先生」
吉祥「さあ座った座った」
香椎「ご、ご飯あまり無いですけど…何か頼みます?」
男「いや、そこまでお腹減ってないし大丈夫。ええと飲み物は…」
吉祥「ほい」
男「ああ、ありがと…なんか混ぜただろコレ」
吉祥「さあ?」
男「さあじゃないが…岸華さんは?」
香椎「そ、そういえばどこに行ったんでしょう…」
七原「コップ持ってどこかいってましたけど…」
男「少し見てくるよ、主役が居ないとね」
男「あ、岸華さん」
岸華「お疲れ様」
男「岸華さんこそ、お疲れ様。優勝おめでとう」
岸華「ええ、ありがと」
男「…戻らないの?」
岸華「そうね…でもその前に後ろを向いて目を閉じてて」
男「ん?」
岸華「…ん」
男「…え」
岸華「よく頑張りました、ってとこね」
男「え、え」
岸華「戻るわよ」
男「ま、待って、岸華さん、鼻…血」
岸華「鼻?………あっ」
男「ええと…その…岸華さんも案外純情なんだねっ」
岸華「う、うるさいわねっ」
男「ああほらハンカチ…」
岸華「……ふう、取れた?」
男「大丈夫そうだけど鏡で見た方がいいかも」
岸華「そうする、その間に戻ってなさいよ」
男「ああうん…ええと」
岸華「何?」
男「いや…じゃあ…また後で…」
男「…柔らかかった」
カミングスーン
ま、また不純異性交遊ですか、先生…二度も不意討ちを喰らうなんて戦場だったらし、死んでますよ…極端ですが…で、でもこれって私にもチャンスがあるって事ですよね、そうですよね?次回、「フジュン」できるできるやればできる風香ちゃんだって頑張ってるんだできるできる…(香椎)
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