第九話
男「七不思議」
名桐「そう、七不思議」
吉祥「えーと確か物理教室の異空間、誰もいないのに物音のする旧校舎の体育館、放課後の屋上の謎の人影、存在しない第二図書室、ドッペルゲンガー、血塗れの保健室だっけか」
名桐「…六つね」
吉祥「七つ知ったら死ぬんだろ」
名桐「あ、なるほど」
第九話 ウツロイ
男「というかほとんど私達の部活に関する奴のような」
吉祥「旧校舎の体育館と屋上、保健室はそうだろうけど後はどうかな」
男「物理教室…」
岸華「…」
吉祥「物理法則を越えてる私達からすれば異空間なんて日常茶飯事だしこれもそうか」
岸華「…そうね」
吉祥「てことは」
名桐「ドッペルゲンガーは自分と同じ顔の奴を見たら死ぬ、ってのよね」
男「うん」
名桐「これは鏡を見間違えたとかじゃないの?」
吉祥「いや、伝承によれば歩いてる姿をみたり他の人と話したりしてるらしい」
名桐「どうせ嘘っぱちよ」
吉祥「それを言っちゃあおしめえよ」
岸華「そんなことしかネタに出来ないのかしら?」
名桐「発案者は私じゃないわよ!」
岸華「あらそう」
吉祥「そんで第二図書室ね…」
名桐「これは図書準備室じゃないの?」
吉祥「ええーそんなオチ?」
岸華「そんなものよ、怖い話なんて」
男「まあ記事にはなるんじゃない?」
名桐「小ネタよ、小ネタ。一面は新年度行事なんだから」
男「ですね、配置は…」
吉祥「ちょっと待って、なんで私達が協力してるのさ!」
岸華「それもそうね」
名桐「いいじゃない、暇でしょ」
岸華「大会直前なのよ」
吉祥「せんせーからも何か言ってやってよ」
男「う…」
名桐「ふふん、聞いて驚きなさい。コイツは新聞部の副顧問になったのよ」
岸華「なっ…冗談ですよね」
吉祥「は?」
男「いや…えーっと本当…」
岸華「失望しました」
吉祥「はあ?」
名桐「だから!あんたらが協力しようがしまいがどうでもいいけど、コイツは私に協力するって言ってんのよ」
岸華「は…この人が何を言ってるのかわからないのですが先生」
男「あ、あはは」
吉祥「笑って誤魔化してる場合ちゃうねんで君ぃ」
男「いや…ほら、第二野球部の皆には迷惑かけないからさ…ね?」
岸華「なら今すぐ出ていってください」
男「あ…そうだね、ごめんね」
名桐「そうね、こんなとこ居ても陰気が移るだけよ、行きましょう」
吉祥「言い過ぎじゃない?」
岸華「……別に構わないわ」
………
香椎「ええー!じゃ、じゃあ先生はもうこ、こっちには来ないって事ですか!」
吉祥「うにゃ、そういう訳じゃなさそーだが」
香椎「風香ちゃんも無理矢理だなあ…」
吉祥「だなあ」
七原「取り戻しましょう」
岸華「別にいいじゃない、先生が望んでそうしてるなら放ってても」
吉祥「そうやな」
七原「私一人でもやります」
香椎「そ、そんな…先生はモノじゃないですし…」
吉祥「…あ、ろくでもないこと思い付いた」
七原「なんですか」
吉祥「ふはは、まず…」
岸華「…ええ、それでいきましょう」
香椎「うまく行くかなあ…」
七原「妙案です、早速準備しましょう」
吉祥(冗談だったんだけどな…)
吉祥「まあいいか」
…
名桐「図書室は入ったこと無いわね」
男「入学してから一度も?」
名桐「ええ、授業でも使わないし本なら家に山ほどあるもの」
男「ああそう…」
名桐「しかし…思ってたより暗いわね」
男「日が当たらない位置に部屋があるからかな」
名桐「こうも暗いとそういう噂が立っても不思議じゃないわね」
男「確かにね」
名桐「ここ、司書は居ないの?」
男「…言われてみると僕が学生の頃から見たことが無いような」
名桐「でも図書委員はあったわよね」
男「基本昼休みに図書室に居るだけって委員会だった気がするけど」
名桐「ふうん…じゃあ、二人っきり…ね」
男「…そうだね」
名桐「変な気、起こさないでよ」
男「起こさないよ!」
名桐「どうかしら、こないだ…したじゃない」
男「したって何を」
名桐「キス」
ガタンッバン!
男「うわっ」
名桐「きゃっ、なんの音かしら」
男「風でどっかの窓かドアが閉まったのかな」
名桐「そんな感じの音だったかしら」
男「いやわかんないけど」
名桐「…もう何の音もしないわね」
男「そうだね、なんだったんだろう」
岸華「…」
七原「…」
香椎「…」
吉祥「落ち着け、落ち着け…」
男「というかそっちからしたんじゃないか」
名桐「あら、キスをしたのは認めるのね」
ガチャッバン!
男「…?」
名桐「何かしら…」
男「ドアが開いたみたいだね」
名桐「…そうね」
岸華「このっ」
七原「先生!」
香椎「ふ、風香ちゃん!」
吉祥「あーあーあー…ん?」
岸華「誰もいない…」
七原「…今、中から声してましたよね」
香椎「う、うん…」
吉祥「…」
男「風かなあ」
名桐「立て付けが悪いのかしら、全く…」
吉祥「…ドアが閉まってる」
七原「…本当ですね」
香椎「と、閉じ込められたんですか」
岸華「わからない、ドアをぶっ飛ばしてみましょうか」
吉祥「そうやんな」
岸華「ふっ…」
ガアイッ
岸華「っ…堅いっ…」
七原「そんな…私の七臓十腑を一撃でぶちまける威力なんですよ」
香椎「うっ…思い出して吐きそうです」
吉祥「あれは酷かったねえ」
名桐「何もないわね」
男「そりゃそうか」
名桐「帰るわよ」
男「はいはい…」
ぎぎぎぎガタンバンッガシッバタン
岸華「!?」
香椎「ひっ」
七原「ドアから音が!音が!」
吉祥「うわあとんでもないことがおきてるぞう」
岸華「こんな馬鹿なこと、誰かのいたずらよ」
香椎「そっそうですよ!やめてください!」
シー…ン
香椎「ひう」
七原「なんなんですか、一体」
『ダレ』
『ダレデスカ』
吉祥「…」
岸華「…」
七原「…今の」
香椎「なっ何々何もきききかき聞いて無いないないですですよよ」
岸華「後ろ、見ちゃダメよ」
香椎「」
七原「…せーので攻撃しましょう」
岸華「『神術』には自信はないけど、少しは使えるわ」
香椎「ひっひっひっ」
吉祥「なんだか嫌だな~って空気がむわあっと立ち上って参りました」
『アノ…』
七原「…ッアア!」
岸華「譎しっグゴッ」
香椎「ひえ」
吉祥「おわー!」
七原「痛い、ううう」
『シンニュウシャヲハイジョシマス』
ピッ
岸華「ゲボッ…あああ!」
吉祥「修復、修復」
岸華「あり、がとう、縁」
七原「躊躇なく喉仏潰しましたよコイツ!」
香椎「な、な、なんかヤバくないですかっ!」
岸華「逃げましょう」
七原「といってもドアが」
バンッ
七原「開いたみたい…ですね」
岸華「…罠かもしれないけど」
ドガッバキッ
岸華「ぐっ…こいつの相手をするよりましね、走るわよ」
七原「はいっ」
吉祥「三十六計逃げるに如かず」
香椎「はわわわ」
…
岸華「はあっはあっ…ここ、どこ…」
香椎「か、海ちゃん達とはぐれちゃいました…」
岸華「そうみたいね、しかし…」
香椎「おかしい、ですよね…」
岸華「うん、いくら放課後といってもここまで誰一人他の生徒の姿を見ないなんて」
香椎「ま、まさか本当に第二図書室の話は本当だったんですか」
岸華「まだそうと決まった訳じゃないわ、第一あの人、かどうかはわからないけど私達にも理解できる言葉で喋ってたし」
香椎「姿はよく見えませんでしたけどシンニュウシャ…って言ってましたよね」
岸華「そう、だとすれば何かしらの防衛システムが作動したと考えたほうが幽霊より現実的よ…多分」
『こっちね』
香椎「ひっ」
岸華「…とりあえず職員室を目指しましょう」
香椎「」コクコク
七原「…ふぅ」
吉祥「なんだかとんでもないものを見た気分だぜ」
七原「実際とんでもないのが居ましたけどね」
吉祥「さてはて…ここは異空間ぽいなあ」
七原「そうなんですか」
吉祥「一時期ハマっててね…逃げられんぜこれは」
七原「そんな…」
『こっちー?』
吉祥「逃げてもいいが…迎え撃つ手もあるな」
七原「とりあえず逃げましょう」
吉祥「そうねえ…と言ってもどこにいくのか」
七原「そうだ!」
吉祥「ロッカーの中とは…」
七原「定番ですよね」
吉祥「ふう…」
岸華「ああもう、嫌になりますね」
香椎「ふあああ」
『待ちなさい』
岸華「この教室に隠れましょう」
香椎「ううう」
吉祥「あれ、岸華」
岸華「ああ縁、ここにいたのね」
吉祥「まあねえ…あれ、香椎さんは?」
岸華「えっ」
『嘘だよ』
…
吉祥「狭かった…」
七原「少し静かになりましたね」
吉祥「いやーな感じだぜ」
七原「そうですね」
吉祥「しかし出口が無いことには逃げられんぜ」
七原「…探します?」
吉祥「いや、無いんだろ大方こういうのは」
七原「…倒すしかないってことですか」
吉祥「んー…なんというか違和感があるんだよな」
七原「なんです?」
吉祥「侵入者を排除するなら初っぱな逃がさなくても出来るだけの『魔力』は感じたけどこういうやり方ってこと」
『見つけました』
吉祥「なんらか別の目的があるってこと…か?」
七原「かもしれませんね」
香椎「あれ…岸華先輩…どこ」
吉祥「駄目だ」
七原「何がですか」
吉祥「もうここに岸華はいないぜ」
七原「なっ…」
吉祥「感知できない」
七原「そんなの使えたんですね」
吉祥「まあね…っと」
香椎「ううー……あ」
吉祥「香椎か、岸華はどうした」
香椎「そ、それが気付いたら居なくなってて…」
七原「そうですか…どうやら本当にいなくなってるみたいですね」
吉祥「空間から抜け出したのかはたまた…」
『シンダノカモシレナイデスヨ』
吉祥「なっ…ぐぉ」
七原「吉祥さん!…ギャッ」
香椎「きゃあああ!」
…
吉祥「う…」
吉祥「あ?」
吉祥「くそ…」
吉祥「私一人かよ」
香椎「…先輩!」
吉祥「あ…香椎」
香椎「う、海ちゃんが…連れ去られてしまって…もう」
吉祥「あーくそっ」
吉祥「何が目的なんだ?」
吉祥「香椎」
香椎「な、何がです…?」
吉祥「てめー香椎じゃねえな」
香椎「そ、そんな…」
吉祥「匂いも見た目も喋り方も香椎だが…」
香椎「そ、そうですよ!本当に香椎ですってば」
吉祥「『魔力』の量が少ないんだよ」
香椎「…へ?」
吉祥「だから、普段より力を感じねえの」
香椎「そんな…待ってください、『魔力』量なんて日によって変動がありますし…」
吉祥「…後な、七原の下の名前はうみじゃなくてかいって読むんだよっ」
香椎「…あ」
『すっかり忘れてました、名簿しかこの頃見ませんでしたから』
吉祥「…聞き覚えがあるな、その声」
『おや、知ってるのですか』
吉祥「…私の親に似てるよ」
『そう、でしたか』
吉祥「…そろそろ戻してくれないかな」
『はい、では』
吉祥「お?」
岸華「わっ」
七原「せ、先輩!」
香椎「よ、良かった~目を覚ましましたよっ」
吉祥「ここは…図書室か」
岸華「平気?」
吉祥「丈夫なのが取り柄なんでね…皆は?」
岸華「気付いたらここにいて…」
七原「私達も始めは気絶してたのか起きたらここに」
香椎「」ウンウン
吉祥「はあ…」
岸華「しかし…本当に都市伝説があったとは驚きね」
七原「そうですね」
香椎「こ、これ以外のは嘘って言って欲しいですよ…」
吉祥「いや、案外本当かもしれないぜ」
『ソウデスヨ』
「「「ぎゃああああああ!!!」」」
吉祥「本当かモシレナイゼ…ナア」
……………
『少し、驚きました』
戸ノ内「ん?ああアイツらにはまだ紹介して無かったからかな」
『いえ…私の、私達の存在の事です』
戸ノ内「どういうことさ」
『部員の一人が私のこと、親の声に似ていると言ったのです』
戸ノ内「…ああ吉祥だったかな、アイツは施設育ちだからな」
『成る程、納得いたしました』
戸ノ内「しかしまだこの歓迎会するかね」
『はい、中々面白いのですよこれが』
戸ノ内「悪趣味だ」
『これは手痛い』
戸ノ内「さて、こんなものかな」
『ありがとうございます』
戸ノ内「しかしよくそんな顔、作ってたな」
『趣味ですので…私じゃないですよ』
戸ノ内「悪趣味だな本当に」
『伝えておきます』
戸ノ内「このあとは?」
『打ち上げがあるので』
戸ノ内「…ああそう、じゃあまた学校で」
『はい』
戸ノ内「…」
??「どうしたのー?」
戸ノ内「いや、あの人も変わらないなと思って」
??「受付嬢さん?」
戸ノ内「ああ、本当に昔からいるからな」
??「そうだよね」
戸ノ内「お前もな」
??「あう、あう…」
………
受付嬢『と、言うことで』
岸華「…」
七原「…」
吉祥「…」
香椎「」
受付嬢『改めまして、こんにちは。図書室司書代理の受付嬢と申します』
岸華「…こんにちは」
七原「…よろしくお願いします」
吉祥「…どうも」
香椎「」
受付嬢『普段はここではない場所に勤めておりますがこの度数年ぶりにシャバの空気を吸いに出てきました』
岸華「ええ…」
受付嬢『何分世間知らずでご迷惑をかけることもありますでしょうがよろしくお願いいたします』
七原「悪い人…じゃないんですよね」
受付嬢『はい、古くから紅田様に使えております』
吉祥「…古くから、ね」
受付嬢『はい』
香椎「あっあっあっあのののぉ?かっかっかっ顔がかわかわかわ変わってたのはドドドドドドドドドッペルゲンガーとかではないないない無いですよねえ?」
受付嬢『はい、私はれっきとした人間ですから』
七原「いや人間でも無いでしょ…」
受付嬢『そうでした』
岸華「人造人間…にしては巷のとは比肩にならない性能ですね」
受付嬢『人造人間、というよりは神造兵器の方が近しいでしょうか』
吉祥「道理で強いのかあ、ふんふむ」
受付嬢『はい、とても強いです』
岸華「…もう大丈夫よ」
香椎「わかっ…わかってるんですけど!頭が!トラウマで!」
岸華「そう」
受付嬢『くす、ごめんなさいね。ドッキリ、好きなモノで』
吉祥「とーぶんドッキリはごめんですぜ」
七原「本当ですよ」
受付嬢『くすくす』
受付嬢『というか香椎様はパーティーで何度か顔を会わせたことがあるはずなのですが』
香椎「そっそそそうでしたか?きっ気がどうどう動転してまして」
受付嬢『でしょうね…』
…
名桐「…あら」
男「ん?」
名桐「珍しい顔ね」
受付嬢『これは名桐様、お久しぶりです』
名桐「何?貴女ここの関係者だったのね」
受付嬢『はい、図書室司書代理で勤めさせて頂いております』
名桐「そうだったの、それならそうと教えなさいよ。あれ、昨日の放課後はいたの?姿を見なかったのだけれども」
受付嬢『はい、他のモノ共々おりましたよ』
名桐「あらそう」
男「知り合い?」
名桐「ええ、社交場で少しね」
男「社交場…?ええと一年一組副担任の赤田友紀です」
受付嬢『赤田…さんですか、よろしくお願いいたします』
男「はい、現国を主に教えてます」
受付嬢『現国でしたらもっと図書室を利用されては如何でしょうか』
男「何分新米なもので…」
受付嬢『そうでしたね、学生の頃から余り図書室には来られなかったようですし』
男「え」
名桐「なにしに来たのよ」
受付嬢『部室の清掃です』
名桐「それは今してることでしょ」
受付嬢『強いて言うなら大会直前の指導…でしょうか』
名桐「どうりで保健室が空いてない訳だわ…」
男「…強いんですね」
受付嬢『はい』
名桐「しかし今日は一人なのね」
受付嬢『はい、忙しいので』
名桐「そう、ところで貴女昨日アイツらに何かした?」
受付嬢『アイツらとは…』
名桐「第二野球部の連中よ」
受付嬢『歓迎会を』
名桐「そう…その割には今日沈んでたようだけど」
受付嬢『喜び疲れたのでしょう、大騒ぎでしたので』
名桐「…そういうことにしておくわ」
男「七原が物音に滅茶苦茶敏感になったのと関係が…?」
受付嬢『さあどうでしょう』
名桐「そこら辺本当人間染みてるわね」
………
受付嬢『私のことを忘れてるようですね』
紅田「赤田か?まあそうだろうな」
受付嬢『あの娘以外では関わりがありませんでしたから』
紅田「そうさな、まあ久々に呼び戻したのにも理由があってな」
受付嬢『はい』
紅田「一応言っておくが残ってる面子に不備などはない、よく働いてもらってるよ」
受付嬢『それは朗報です、今度労います』
紅田「そうしてやってくれ」
受付嬢『はい』
紅田「でだ、これ何だと思う?」
受付嬢『…記憶の残滓』
紅田「ご明察、解析を頼む」
受付嬢『把握いたしました』
紅田「紫檀目のだ、取り扱いにはくれぐれも気を付けろ」
受付嬢『かしこまりました』
紅田「…早ければこの十年以内にケリがつく」
受付嬢『長かった、いや、短いような気もしますね』
紅田「時間はかかりすぎた」
受付嬢『そうですね』
紅田「報告は?」
受付嬢『第二野球部に関しては特に申し分ありません』
紅田「そうか」
受付嬢『計画はこちらも予定通り推移してます、後は…』
紅田「それの結果が出次第新田に連絡を」
受付嬢『承りました』
紅田「いつまでこっちにいるつもりだ?」
受付嬢『ここも図書館も私が居なくても順調ですので気が向くまでの予定ですが』
紅田「わかった」
受付嬢『たまには息抜きが必要なんです』
紅田「…いるか?」
受付嬢『…一応?』
……………
七原「準備してきましたけど」
吉祥「じゃ、いこうか」
七原「集合場所はええと…」
吉祥「皆はもう来てるってさ」
七原「わ、急ぎましょう」
岸華「遅いわよ」
吉祥「いやあ目覚めが悪くてねい」
香椎「…ふあ」
男「おっ全員揃ったね」
黒鹿毛「こちらも準備は整いました」
男「では向こうで」
黒鹿毛「はい、新田部長と戸ノ内さん、紅田校長は先にいますから」
男「了解です」
黒鹿毛「では」
香椎「うっ」
岸華「…」
吉祥「わお」
七原「ひゃ」
男「とっとと」
戸ノ内「誤差がない…流石は黒鹿毛さんかナー」
男「お疲れ様です」
戸ノ内「ドウモー」
男「全員揃ってますが…」
戸ノ内「あっちが出場選手の席ヨー」
男「引率もですか?」
戸ノ内「そうネー」
黒鹿毛「お疲れ様です」
戸ノ内「お疲れ様でスー」
紅田「お、皆いるねー」
受付嬢『紅田様』
紅田「じゃ、まだ来てないとこもあるしのんびりしててよ」
岸華「了解です」
吉祥「のんびり…のんびり…」
香椎「き、緊張してきました…」
七原「そ、そうだね…」
男「まあそう構えずいこう、楽しんだもん勝ちだよ」
吉祥「げ」
新田「お待たせしました」
岸華「部長、どうでした」
新田「二人ともシードでした」
吉祥「それはわかってますよ、岸華と私はどうでした?」
新田「対岸でしたよ」
吉祥「決勝かー」
岸華「まだわかりませんよ」
香椎「て、ことは…」
岸華「どっちでした?」
新田「岸華さんと七原さん、吉祥さんと香椎さんが順当にいけばそれぞれ準決勝で当たりますよ」
香椎「や、やっぱりそ、そうですか…ううう」
新田「本番は練習と違うこともありますから」
吉祥「香椎~手加減はしないゾッ☆」
香椎「お手柔らかに…う、吉祥さんとおもうと心臓が…」
新田「大丈夫です、努力は実りますよ」
七原「そうですよね、頑張ってきましたから」
…
??「…………久しい」
戸ノ内「鯨井」
鯨井「……戸ノ内」
戸ノ内「今年も引率なんだな」
鯨井「……新田さんは色々忙しいから」
紅田「おっ鯨井ちゃんおひさー」
鯨井「紅田さん」
紅田「今年も天ちゃん来てないのねえ」
鯨井「…忙しいみたい」
紅田「だろうねえ…こっちも大詰めだよ」
鯨井「……そう」
吉祥「久しぶり~」
「でた!」「去年みたいに簡単に勝てると思うなよ!」「ぶっ◯◯てやる!」「◯ね!」「くたばれ!」
吉祥「大歓迎だなあ…」
男「…なにあれ」
香椎「えっえっ怖い…怖いです…」
七原「き、吉祥先輩がなぜ?」
岸華「…去年の話なんだけど、彼女、あれでも総合三位だったのよ。一位は新田部長、二位は私だったわ」
岸華「普通にしてても強いのだけれども…吉祥さんの技って少し…外道な所あるのよね、最近の流行りと比べると。もちろんあそこまで言うのは論外だけど…」
吉祥「まあ悔しいなら勝ってみせなよ、なあ?」
「てめーっ!」「今に吠え面かかせてやるっ」「◯ね!」「生きて帰れると思うなよ!」
吉祥「…人気者は辛いぜ」
岸華「ふう、まともに戦えばいいのに」
吉祥「理念があるからね」
岸華「新手一生?」
吉祥「そそ、そーいうことよ」
岸華「難儀な性格よね」
吉祥「たはーお厳しい!」
男「大丈夫か?吉祥」
吉祥「ん?あんなのは極一部だからねい、他の人は戦術として評価してくれてるよん」
男「だがあれはいくらなんでも…」
吉祥「私も煽ってるんだからお互い様だよ、お互い様」
男「しかし…」
吉祥「もーせんせーが気にする事じゃないってば」
男「…吉祥さんがそういうならいいけど」
吉祥「それでいーの、わかった?」
男「むう…」
鯨井「…荒れそうだ」
戸ノ内「そうだな」
紅田「たまーにいるよね、会場のヘイトを一身に受ける人」
鯨井「…なまじっか強いから、嫉妬だ」
紅田「だよねい、私もあんな時期が…」
受付嬢『無かったですよ、元々圧倒的だったじゃないですか』
紅田「…まーね」
鯨井「……有馬さんはいないのか」
黒鹿毛「居ないんですよ…最近家にも帰ってきませんし…ううう」
鯨井「……ごめん」
紅田「他に女作ってるんじゃない?」
黒鹿毛「は?」
紅田「嘘!ジョーク!冗談!妄言!たははは…はは…」
黒鹿毛「次そんなこと言ったら当分暇をもらいますから、有馬さんと一緒に」
紅田「ごめん、それだけは…何卒…」
カミングスーン
全国高校最強決定新人戦が遂に幕を開けます。格闘技はもちろん、『魔術』から能力者まで何でもありの戦いは苛烈を極めますが"最強"の称号を賭けて頂点を目指しまします。次回、「イッセン」…先生、見ていてくださいね(岸華)
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