第四話

月曜日の朝は憂鬱なものだ、と誰かが言いましたが私はそうは思いません。友達と会えるというだけで素敵な日々の始まりなのですから…


香椎「行ってきます、お父様、お母様」

「気を付けるのよ、創」

香椎「はい!」


今日も素敵な一日になりますように…


第四話 マバタキ


私の家は学校から歩いて四十分程の距離にあり、近くには風香ちゃん…名桐さんの家があります。学校までは大抵車で送って貰えるので、登下校は大変ではありません。


「お嬢様、おはようございます」

香椎「おはようございます、今日もよろしくお願いいたします」

「はい」


私一人送り迎えするのには似つかわしくない大きさの車ですので、校門で降りるとき注目を集めてしまうのが嫌で学校にはかなり早めに着くようにしてもらってます


香椎「…っと、ありがとうございました。帰りもよろしくお願いします」

「はい。それでは失礼いたします」


教室に行く前に部室に寄って荷物を置くことに決めたので足早に向かいます。と…


名桐「あら、創じゃない。おはよう」

香椎「あっ風香ちゃん、おはよう」

名桐「ふふっ、なんだか久し振りね」

香椎「まともに話すのは春休み見学に行って以来…かな?」

名桐「そうね…まあ積もる話もあるけど…大きくなったわね…」

香椎「ふふふ、風香ちゃんに後三㌢で追い付くんだよ」

名桐「そこもそうだけど…一番はその胸に詰まった脂肪よ!」

香椎「は、恥ずかしいよお~」

名桐(…くっ)


名桐「…しかしまあ創も大変ね、こんな変な部活に入れられて」

香椎「変じゃないですよ、皆さん優しいですし…」

名桐「まあそうね、でも!あの顧問には気を付けなさいよ。男は皆狼なんだから」

香椎「ええ!?そうかなあ…」

名桐「そうなの。この間…っといけないいけない」

香椎「ええ~気になっちゃうよ~」

名桐「秘密よ、秘密…ともあれ、アイツは創見たいな可愛い娘には何をするかわからないわ、きをつけなさい」

香椎「はーい…ふふ」


やっぱり風香ちゃんは優しいお姉ちゃんです


………


吉祥「なあ、あんさん。素直になりなよ?な?故郷のお袋さんも泣いてるぜ?」

男「は…?」

吉祥「なーに俺はな、昨日岸華と何をしてたかってのだけ教えてくれれば悪いようにはしねえっつってんだ、な?どうなんだい?」

男「いやだから買い出しにね…」

吉祥「そんなことを聞いてるんじゃなあああい!!!」

男「声大きい声大きい…」

吉祥「どうだ?腹減ってないかい?…あんさんカツ丼は好きかい?俺はね七原軒のカツ丼が大好きでね…熱々さあ、一つどうだい?」

男「おまえっ…これ吉野家の牛丼じゃねーか!」

吉祥「声大きい声大きい…後それ私の朝ごはんだから、食べないでよ」

男「食わねえよ…」

牛丼「え?」


吉祥「あ、次移動教室だったな。食べる暇無かったわ」

男「…はよ行け、職員室まできて小噺してんじゃないよ本当」

吉祥「ま、どうせ買い出ししかしてないんでしょ?」

男「当たり前だ」

吉祥「その言葉が聞きたかった。じゃっ」

男「マジで何しに来たんだよ」


………


岸華「…」

吉祥「せーふっ…って自習じゃん…お?」


「そしたらさー、向こうから岸華さんと赤田先生が歩いて来るわけよ笑」「えーまじー?」「本当本当」「それで?」「『部活の買い出し』なんて言い出したからさあ、笑いを堪えるのが大変だよ笑」「どんな部活してんだよ笑」「真面目な顔してやることやってるんだ笑」「それエグいって笑」


岸華「…」

吉祥「…」


「でさー昼からもうイチャイチャしててさー」「まじ?盛りすぎじゃん笑」「猿かよ」「もー見ててヤバかった笑」「ぎゃははは笑」「うけるー笑」


吉祥「…やー面白い話してるねえお姉さん方、ちっと混ぜておくんなせえ」

「え…なに?笑」「吉祥さんには関係ないから」「つーかその喋り方なに?」

吉祥「ほら岸華とは同じ部活だしよう、気になんのさ」

「…はあ」「別に何でもないよ」

吉祥「そうかい?ならなんかあったらまた教えてくれよ」


「なにあれ?」「吉祥さんって、空気読めないよね~」「そーそー」


岸華「…どうしたの?」

吉祥「うんにゃ?昨日なにしてのかにゃ~って気になるじゃああん?」

岸華「…そう」

吉祥(おめーがキレた時の方がヤバそうだったとは言えにゃあ)

吉祥「…ま、恩着せがましく感じたならジュースの一本でも奢ってくれよ」

岸華「そうね、善処するわ」

吉祥「あっ因みに一昨日は本当にそーゆー事はしてないんで?」

岸華「…何を言ってるの?」

吉祥「あっ(死)」


………


男「あー飯どうしよ。購買行くかな…」

名桐「アンタちょっといいかしら?」

男「ん?」

名桐「ついてきてくれる?」

男「…構わないけど」

名桐「そう、じゃあ屋上行くわよ」


………


男「そういや名桐さんって部員じゃないのに鍵持ってるんだね」

名桐「そこはほら、世の中金よね」

男「…なるほどね」

名桐「…さて、ここらへんがいいわね」


そういうと名桐はなるべく日の当たってない所を選び屋上にシートをひく。四つん這いになり短いスカートが危うくひらひらと揺れるのから目を反らし男は尋ねる


男「作業中申し訳無いけど何の用事かな?」

名桐「見てわからないの?昼食の準備よ」

男「あー…今日は購買で何か買おうと思ってたから何も持ってないんだけど…」

名桐「わかってるわよ、さっきもそこでぶつくさ独り言言ってたじゃない」

男「一緒に食べるのは良いがせめて何か準備させてくれよ」

名桐「あら、奴隷に食事が必要かしら?」

男「働いてるから一応ね…」

名桐「生意気ね…ま、そこまでいうなら仕方ないわね、私のを分けてあげるわよ」

男「いや別に買ってくるから…」

名桐「分 け て あ げ る か ら」

男「…ありがとうございます」

名桐「よろしい、じゃあ準備するわよ」


名桐はシートを敷き終わると持ってた鞄から弁当箱と箸を取りだし、こちらに視線を投げ座るように促した


名桐「あんまりこっち寄らないでよね」

男「わかってるよ」


シートは二人で座るのにはやや小さく、正面に座る名桐のスカートは危険な領域を写し出しており、やはり赤田は顔を反らさざるを得なかった


名桐「…何を見てるのかしら」

男「いや?何も?空がいい天気だなーって?」

名桐「アホみたいね…」

男「そりゃどうも…」


そうしてるうちに赤田の目の前には名桐の用意した弁当が置かれた


男「…豪勢な弁当だねえ」

名桐「私はいつもこんなに食べれないって言ってるんだけどね…」

男「ははは、なるほどね」

名桐「さ、食べるわよ」

男「…箸が欲しいんだけど」

名桐「あらここにあるわよ」

男「名桐さんのでしょそれ」

名桐「そうとも言うわね。というか察しが悪すぎないかしら?」


そういうと名桐はおもむろに箸を掴み弁当から具を突きだす


名桐「これで食べなさい」

男「いやいやいやそれはちょっと…」

名桐「…私の着替えを覗いたのに?」

男「いただいまーす!」

名桐「それでいいのよ、はいあーん」

男「ええ…」

名桐「やってる方も恥ずかしいのよ!早くしなさいよ!」

男「わかったよ」


ぱくっ


男「…」ムグムグ

名桐「ど、どうかしら」

男「…」ゴクン

名桐「美味しい?」

男「すごく美味しいよ!いやあ毎日でも食べたいね」

名桐「そ、そう?それは良かったわ」

男「うん、僕も自炊はしてるけどこんなに上手くは作れないなあ」

名桐「当然でしょ?うちのはシェフに作らせてるんだから」

男「シェフに?それはなんというか…凄いね」

名桐「生まれたときから一流のモノを食べて育ってる、という訳よ」

男「なんとなく吉祥に聞いたよ、ご両親がナキリ商社の経営者なんだってね」

名桐「…そうね」

男「…もう少しくれないかな?」

名桐「え、ええもちろん。はいあーん」

男「あーん…」

男(家族関係があまり良くないのか?表情が曇ったな…詮索はしないでおこう)


………


名桐「ごちそうさまでした」

男「ごちそうさま、美味しかったよ」

名桐「それは良かったわ、さてと…」

男「ん?どうしたの?」

名桐「少し寝るから膝を貸しなさい」

男「そのくらいならお安いご用だよ、はい」

名桐「ふぁあ…授業の五分前には起こしなさいよ」

男「わかったよ、お休み」

名桐「ええ…」

男(疲れてるのかな?若干クマがあるようにも見えるし…)

男(しかしこうして見ると美人だよなあ、髪もさらさらだし…身体は出るとこ出てるけど細身でこう、なんというか…)


名桐「…人をじろじろ見ないでよ、変態」

男「…はい」


男(性格は…まあ高校生らしいって感じかな)


………


香椎「ふぁあ」

七原「ねむい…」

男「だね」


七原「暇ですね」

香椎「ですね」

男「だね」


男「よし!こうしていてもなにも始まらない!」

七原「何かします?」

男「そうでさあねえ…この部活について勉強しようかな」

香椎「な、何を学ぶのですか?」

男「うーん歴史とか…?」

七原「知ってどうするんですか、先生」

男「それもそうだね…」

香椎「たまには、こうして皆でのんびりするのもいいですよ」

男「…だな」

七原「ですね…」


戸ノ内「そうもいってられないのネー」ガチャ

男「お疲れ様です、戸ノ内先生」

七原・香椎「「お疲れ様です」」

男「どういうことですか?そうも言ってられないとは…」

戸ノ内「毎年五月にはこの部活でなにがあるか知ってるかネー?」

男「存じ上げませんが…」

七原「…新人戦、ですか?」

戸ノ内「ざっつらいと!そう、新人戦だネー!」

男「え…つまり『魔術』を使える人間がそんな学生大会が開けるほどいるって事ですか!?」

戸ノ内「そうだヨー、といってもこの国は秘匿にしてる人間が多いからね、近隣四か国が集まってするのヨー」

戸ノ内「大会の事は前も言ったんだけどネー…」

男「そう…でしたっけ…?」

戸ノ内「あ、うん。言ってなかったかモー?」

男「ですよね…」

戸ノ内「でだネー、今回は開催がうちが主催だからサー、頑張りましょー!」

男「はい?」

戸ノ内「ものわかりが悪いネー、要は持ち回りの順番が来たってことヨー」

男「それはわかりますけど…」

戸ノ内「あ、君も実行委員に無理矢理…入ってもらってるからネー、頑張ろうネー」

男「きっ聞いてませんよ!」

戸ノ内「あれ?言ってなかったっけ?」

男「聞いてませんよ…」

戸ノ内「あらら、そら悪かったワー」

男「な、何をするんですか?」

戸ノ内「んー会場はもう押さえてるし、出場選手の管理は私の担当だし、お偉い人達には紅田が話をつけてるシー…」

戸ノ内「すること…ないかなあ…」

男「ええ…」

戸ノ内「マーこういうのは経験が大事ってもんサー。わからないことは私とか有馬に聞きなよ、それか部長さんでもいいシー」

男「確かにそうですね、頑張ります」

戸ノ内「ぐっどらっく!」


香椎「た、大変そうですね…」

男「まあね、というか他の国では『魔術』とかってどういう扱いなんだろうか…」

新田「機械と同じような感覚で使ってる人が多いみたいですよ、ただ使える人間の比率自体はこの国と殆ど変わらないみたいですが」

男「なるほどね…って新田さん、いつの間に…?」

新田「情報が余り入ってこないのは情報統制されてるかららしいですけどね」

男「はーなるほど…」

新田「だからこの国で『魔術』に携わらない一般人は差別的な人が多いんですよ」

男「…ふむ」

新田「この部活が作られた理由もそういう人を少しでも減らすためらしいですしね」

七原「道徳心ですね」

新田「ま。兎も角ですよ、他の顧問の先生方はそれぞれの準備で忙しいのが現実なので部活の方は赤田先生に責任者になっていただくことになりそうですね」

男「そうか、そういうことか…まあできる限りのことを頑張らせてもらうよ」

香椎「い、一緒に頑張りましょうね!」

男「うん、そうだね」


七原「ところで新田部長は何故他国の事について詳しいんですか?」

新田「私※北機の出身なので」

七原「えっそうなんですか…」

新田「まあ育ちはこっちだから殆ど覚えてないけど親がむこうに住んでるから色々…」

男「へー」


※北機…南鳥国(この国)より北にある大国(国ではない)。多くの自然に囲まれており、人口も多い。気候が寒冷な地域が多い。


………


吉祥「…うわ完全に寝てた」

岸華「何度か起こしたんだけどね」

吉祥「そりゃすまん…ああ肩痛…」

岸華「一応言っておきますけど補習で合格でなかったら大会出られないんですからね、頑張って下さいね」

吉祥「わあーってるよ。わかってる、よっと」

岸華「なら良いのですが」


男「あ、いたいた」

岸華「先生」吉祥「んお?」

男「戸ノ内先生から伝言でね。『明日から新人戦に向けての練習が始まるから全員参加でよろしくネー』だそうです」

吉祥「うひゃー補習どうすっかな…まあ明後日の朝だからへーきか」

岸華「了解です、吉祥さんは間違ってでも赤点を取らないように」

吉祥「ぱーぺきよぉ…じゃあもうちょっと勉強すっかな」

岸華「その意気、頑張ってね」

男「じゃあ僕が吉祥さん見てるから岸華さん部活に行っておいで、部長も来てるから」

岸華「良いですか?じゃあお言葉に甘えて…」

吉祥「ん。なんかあったら明日教えてくれ」

岸華「了解。それじゃあお先に」


岸華が図書室から出たのを確認すると吉祥がこちらをじっと見つめ口を開く


吉祥「岸華は真面目過ぎるんだよなあ…と、言いたいところだけど」

男「ん?」

吉祥「なんかなあ…壁がある気がするんだよなあ」

男「そうかな?」

吉祥「いや実際わからんよ?端から見れば成績優秀の真面目娘でみんなと仲の良い…良い?まあ大体の人とは仲良く見えるんだけど」

男「うん」

吉祥「実際遊んでたりはしないしそういえば私達ともプライベートの話はしたことない気がするんだよなあ…」

男「聞いたことある範囲で教えてくれたりするかな?」

吉祥「…せんせーなら何か岸華の悩みを解決出来るかもしれないけど、そこは本人に直接聞いてもらいたいかな」

男「岸華さんの悩み…か」

吉祥「十中八九私の勘違いだとは思うけど…もし、本当に岸華が悩みを抱えていたとしたら、いつか爆発しちゃうんじゃないかなって」

男「真面目だとストレス溜まりやすいって言うしな…うん」

吉祥「まあ難しいと思うよ、私に勉強を教えるのと同じ位ね」

男「そんな悲しいこと言うなよ、さあ頑張ろう」

吉祥「終わんねえ~泣」


………


岸華「部長、いますか?」

新田「ああ、岸華さん。丁度皆帰ったとこ」

岸華「明日から全員参加と聞いて…その…」

新田「OB来るってさ」

岸華「…ちなみに、誰でしょうか?」

新田「光さん」

岸華「…やっぱりですか」

新田「嫌?」

岸華「嫌ですね」

新田「きっぱり言うなあ」

岸華「嫌なものは嫌ですから」

新田「実力はある人だからね…」


新田「なんと言っても君のお姉さんだし」

岸華「それが嫌なんですよ…」



岸華「はぁ…」

男「あれ、今帰り?」

岸華「ええ、部長と少し明日からのことについて少し…」

男「何か疲れてるみたいだね」

岸華「ええまあ…」

男「良かったらどこか寄って帰らない?新人戦のことも少し聞きたいし」

岸華「…そうですね、商店街にでも行きましょうか」

男「そうだね」



岸華「どこに行きましょうか」

男「そうさね…夕方だし沢山食べると晩御飯入らなくなっちゃうけど…」

岸華「良いですよ。先生も独り暮らしだと帰って準備するの、大変ですよね?」

男「正直ね…親御さんには外で食べるって連絡した?」

岸華「そうですね、しておきます…ちょっと待ってて下さい」


岸華は少し離れたところにある公衆電話に走り一言二言話しすぐこちらに戻ってきた


岸華「大丈夫です」

男「じゃあどこに行こうか」

岸華「そうですね…商店街にはあまり来ないのでお店は任せます」

男「おっけ、じゃあいつものとこにしようかな」

岸華「何です?」

男「うどんさね」

岸華「それなら入りそうです、行きましょう」


………うどんやさん


??「いらっしゃいませ」

男「こんにちは~」

岸華「…旧鬼先生?」

旧鬼「なんだ赤田…と岸華か」

男「どうも」

旧鬼「ん?生徒をつれてなんだ?早速手を出したのか?」

岸華「そうなんですよ」

男「違うから、本当違うから…」


岸華「ええと旧鬼先生は…なんでここに?」

旧鬼「実家でね、たまに手伝いに来てるのさ」

男「初めて私が来たときは大学生でしたっけ」

旧鬼「ああ、そうだったな。当時からこいつの世話をしててね、教師になりたいって言ってたから色々教えてたんだ」

岸華「うちの学校て副業良かったんですね…」

旧鬼「一応ね。許可がいるけど」

男「私もなにかしようかな」

旧鬼「君は教師をしながらなにかできるほど器用な人間じゃないだろう」

男「ごもっともです」

岸華「結構すいてますね」

旧鬼「夕方だからな、これからが一番混む時間なんだよ」

男「じゃあ混む前にぱっと食べてしまおうか」

岸華「そうですね」

旧鬼「そうしてくれ」


岸華「何にしましょう…」

男「好きなのを頼みなよ」

岸華「では…月見うどんで」

男「おっいいねえ、じゃあ私は」

旧鬼「ごぼ天天かす多め大盛ですね?」

男「…それで」


岸華「いつも頼んでるんですか?」

男「いや、旧鬼さんがごぼ天を揚げすぎたんだろ、しかもあの人揚げ物下手だからな…」


<聞こえてるぞ!あっつ!


岸華「…旧鬼先生ってそういえば下の名前たすくって読むんですよね」

男「珍しいよな」

岸華「そうですね…どこかで聞いたことがあるような」

男「っと、本題に入ろうか」

岸華「そうですね、新人戦について…とのことですが」

男「まず会場はどこになるのかな?」

岸華「持ち回りですので年によって違いますが過去の通りなら総合国立体育館ですね」

男「なるほど…時期は五月の第二週の日曜日で、大体何人くらい参加するのかな?」

岸華「年によってバラバラですが一先ず南鳥国は私達しか参加しません」

岸華「他の国は一国辺り10~20人位だったかと」

男「ふむ…どんな内容になるのかな?」

岸華「先日ごらんになられた通りです、総合格闘技みたいなものですね」

男「それは…なかなかすごいね」

岸華「まあ一般人は立ち入り禁止ですからのびのびと出来るわけですが」

男「なるほど…じゃあ団体戦とかあるの?」

岸華「いえ、トーナメントだけです。団体戦があった時期もあるらしいのですが団体戦で怪我人が続出して個人戦の棄権があまりに多かったそうなので無くなったと聞きました」

男「だろうね…じゃあ最後に一つ、うちの学校は強いの?」

岸華「ふふ、かなり強いですよ。先生、責任重大ですね」

男「マジですか…」



旧鬼「お待たせしました、月見とごぼ天天かす多めわかめおろしの大盛です」

男「…なんか増えてないですか?」

旧鬼「わかめを戻しすぎたのと大根をおろし過ぎてな…」

岸華「隠さなくなりましたね…」

男「開きなおらないでください」

旧鬼「まあ味は美味しいからさ、食べてくれよ」

男「そうするかな、いただきます」

岸華「いただきます」


待ってましたとばかりにズルズルとうどんをすする岸華をじっと見ていると視線に気付いたのかこちらに目を向ける


岸華「ゴクン…先生?人が食べてるところをまじまじと見るのは趣味が悪いですよ」

男「あ、ああすまんつい…」

岸華「なにが『つい』なんですか?」

男「いや…ほら、自分の子供がご飯食べてたらこんな感じなのかなって…」

岸華「ゲホッ…子供って、先生そんな年じゃないでしょう…」

男「まあそれはそうだけどね…」

岸華「それに…子供扱いしないでください」

男「…そうかな」

岸華「もう…」


旧鬼(…なぁにイチャイチャしてんだよ本当にできてるんじゃないだろうなコイツら…)


………


岸華「私、月見の玉子は最後に食べるようにしてるんです」

男「あ~そういうのあるよね、私はピザ食べるとき最後の一切れにタバスコかけることにしてるよ、拘りとかじゃないんだけどね」

岸華「なんとなくわかりますよ」

男「だよなあ、どうも辛いのを先に食べると味がわからなくなってだな…」

岸華「ふふふ」


少しプライベートな話題を振ったお陰で緊張感は無くなったようで、笑顔も見えだした。普段は大人びた表情をしているが笑った顔は年相応であり、可愛らしい


男「ごちそうさま」

岸華「ごちそうさまでした」

旧鬼「食べ終わった?はいはい…」

男「少し多かったですね」

旧鬼「麺の茹で具合が未だによくわからなくてな」

男「うどん屋するつもりあります?」

旧鬼「当然」


旧鬼さんはケタケタと笑いながら器を下げ「ごゆっくり」なんて言ったかと思えばふと何か思い出したようにこちらを見て言った


旧鬼「そういえば高校の頃良く来てたよな?」

男「ええ」

旧鬼「よく一緒に来てた奴がいたよな、同い年の…」

男「そうでしたっけ?私がここに来るときは大抵一人でしたが」

旧鬼「…そうか、そうだったな」


旧鬼さんは一瞬目を伏せ残念そうな顔をしたが、すぐに顔をあげると料金を告げてきたのでそれを払った


岸華「また奢ってもらっちゃいましたね」

男「これぐらいさせてくれ、何の役にも立たない顧問なんだからさ」

岸華「そんなこと…」

男「岸華さんは旧鬼さんにも見習ってほしいくらいちゃんとしてるなあ」

岸華「そんな…」

旧鬼「そんな…」



旧鬼「じゃあな、またいつでも来いよ」

男「ええ、また部員の娘達と来ますよ。美味しいですから」

岸華「旧鬼先生、また学校で」

旧鬼「おう」


「あー…あれ岸華のやつじゃね?」「ほんとだ、横に誰かいるくね?」「あれは…赤田先生じゃん!まじー?笑」「本当に出来てるんじゃないの?」「うわー笑」「これは皆に教えないとね笑」「まじまじ笑」


………


岸華「今日はありがとうございました」

男「うん、新人戦まで頑張ってね」

岸華「もちろんです、絶対皆で優勝目指しますから」

男「そっか。僕も出来る限り手伝うから何でも言ってね」

岸華「ありがとうございます」

男「学校生活でもさ、もし何かあったら教えてよ」

岸華「そう、ですね…」

男「…何か、悩みとかあるの?」

岸華「いえ無いです」

男「…そっか、じゃあまた」

岸華「はい、また明日」


岸華(…)


カミングスーン


膝枕って案外寝づらいのね、少し首が痛くたなったからまたアイツを呼び出してやろうかしら。…え?放課後は忙しい?そ、そう。じゃあ昼休み…え?忙しい?なっ…なによ!私を馬鹿にしてるの!?ふざけんじゃないわよ!次回、「イチゲキ」!アンタがお嬢様って言うな~ッ!(名桐)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る