2019/08/14(水)

 昨日から今日にかけて四四〇〇字ほどの短編小説を書いたのだが、あまり出来が良くない。恋心を描写しようとするとどうしても雑になってしまう。やはり経験していないことを書くのは難しいのだ。この小説に関しては、大幅に書き直すか、それができなければお蔵入りにする。

 一昨日の「雑感」で、「ここでは小説が持っている基本的な性質について考える。まず第一に、小説は文字で書かれている」と書いた。勢いで「第一」と書いてしまったからは第二についても書かないといけなくなった。小説の第二の性質というのは、それが出来事の記述の集まりだということだ。出来事の記述の集まりという言葉がややこしければ、物語と言い換えてもいい。ただし出来事の記述の集まりであって物語でないものは存在しうる。例えば時系列や出来事の起こる場所がばらばらで話にまとまりがない場合などがそうだ。それで小説が出来事の記述の集まりだから何だというのか。実は、出来事の記述でない文をいくら集めてきても小説にはならないということがわかる。例えば「りんごは赤い」とか「地球は太陽系の第三惑星である」というようなものごとの性質を(あるいはその性質は虚偽のものでもいいが)いくら並べ立てたところで、それは小説にはならないのだ。小説中にこういうものごとの性質を記述する文が出てくるのは、それが小説の世界観や登場人物の説明として最低限必要な場合だけだ。小説を駆動するのは、やはり出来事を記述する文たちである。物語が進行していく「現在」やそれに対する「過去」、時には「未来」の時点で起こる出来事を文たちは記述する。いや、あるいは、出来事の記述を並べていくことによって初めて小説の時間は流れ始めるのかもしれない。

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