OPT.06

「こちらクヴァル17。現在CN-2876をホールド。敵AWACSをスパイク、機種は不明。方位140でツーオクロック、ビーム。そろそろビンゴだ」

〔ハニーポッドからクヴァル隊、空中給油機クミス06がEA-1672にて待機している。監視任務を交代し、補給の後一旦エリア11上空にて待機〕

「着陸できないのか?」

〔駄目だ。現在テティス隊とセクメト隊が着陸待ちをしている。基地上空でCAPを実施しろ〕

 それを聞き、KZ-900電子偵察ポッドをぶら下げた殱-8ⅡF 長鬚鯨のパイロットは溜息をついた。

「こちとら偵察任務から帰ったっていうのに」




 4月 29日、敷島学園 第11分校。

 滑走路から、次々と空対艦ミサイルを搭載した戦闘機が飛んでいく。その一方で、ヘリポートから救難ヘリコプター・ソネットヘリコプター/パシフィックエアロプレーンプロダクツ CV-22B オスプレイと中型輸送ヘリ・JJカプローニ/ペッターズエアクラフト マーリンHC.3Aが離陸していく。

 そんな中、射撃場では銃声や砲声が鳴り止まない。10式戦車やメルカバMk4、PT-17が120mm滑腔戦車砲を打っ放し、89式装甲戦闘車やFV510 ウォーリア、Strf-9040/56といった歩兵戦闘車が隊列を組み、遠く離れた標的へと機関砲で射撃する。

〔訓練終了、訓練終了。各自、安全装置を確認せよ〕

 そのような指示が出され、戦闘車両達はヤードと呼ばれる駐車場に集まった。

 そして、生徒達は車両から降り、水を飲んだりして休む。しかし、光は自身の89式装甲戦闘車を見上げていた。

「どうしたよ、分隊長殿?」

 副分隊長である義広が、光にペットボトルを投げ渡す。光はそれを受け取り、蓋を開ける。

「サンキュ。いやね、砲塔に機銃載せたいなぁって思っててさ」

「IFVには要らないだろう。市街戦をするならともかく、俺達は野戦専門だ」

「そうだけどさぁ、対ヘリとかで使えるかなぁって」

「んな事より、歩兵隊の指揮の下手くそさを何とかしろ。歩兵戦闘車(IFV)は主戦車(MBT)違って紙装甲なんだ。そんな事も頭に入れず、突撃だなんてただのバカだ」

 通りかかった六郎が、そんな事を言った。それに、義広が突っかかる。

「おい岡崎、そんな言い草は無いだろう」

「何でだよ。明智、お前には歩兵隊の指揮官の才能なんて無い。俺は、無能な指揮官の下で戦いたくねぇんだ」

 そう言って、六郎は去っていく。

「岡崎!」

 呼び止めようとした義広を、光は止めた。「いいの。才能無いのは事実だし。わたし、戦車に憧れてこの学校に入ったけど、その結果がここだもん」

 光の言葉に、義広は何も言えない。

 すると、光はニコッと笑い、口を開いた。

「ちょっとトイレ行ってくる」




 お手洗いを済ませ、簡易便所から出た分隊の選抜射手(シャープシューター)・那須 天狼は、即席の水道で手を洗う。その時、すすり泣きの音が聞こえた。茂みを掻き分けると、そこには光がいた。

「分隊長?」

「天狼……かっこ悪いとこ、見せちゃったね」

「構わない。また六郎か」

「彼は悪くないよ。分隊長の器が無いわたしが悪いだけ」

「確かに、あんたには歩兵の本領が分かってない。けど、あいつの暴言は人間としてなってない。分隊長、あたしらはあんたの駒だ。あんたの指示に従う。もし間違ってりゃ副分隊長が訂正するだろうし、あたしらもフォローする。それが歩兵分隊だ。戦車隊と違って、お互いのフォローが届くのが歩兵の強みだ」

 天狼の言葉に、光は涙を拭いた。

「天狼……ありがとう!」

「どういたしまして……だ」




 森林の中、開けた場所に大型輸送ヘリ・多摩重工 CH-47ZA チヌークが着陸する。その機内から、1両の高機動車が出てきた。その後部には、偵察機材が搭載されている。そして、森の中へと走っていった。それを見届け、CH-47ZA チヌークが離陸していく。


 高機動車は、軽装甲機動車やBVDM2-T偵察装甲車などが待機する場所へと合流した。

「こちらヘルメス、陸戦情報科 1年 147組です。3年のフローラ隊でありますか?」

 高機動車に乗った生徒が出迎えた生徒に尋ねると、その彼は答えた。

「ご苦労。それと、確認する時は相手部隊の名前を口にするな。変装した敵の可能性がある」

「分かりました。以後気を付けます。それと、我々ヘルメス隊はラシーヤ側への隠密偵察の出掛けます」

「行ってこい。つい1時間前、俺達も威力偵察に出たが、斥候らしきT-72に阻まれた。連中、こちらの動きに気付いているらしい、気を付けろ」

「了解しました」

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