第33話 新事実、発覚

 お目当てのお肉を買って、急いで帰宅!


 類のせいで、長居してしまった。いや、人のせいばかりしてはいけない。反省。

 一回だけという約束だったのに、流れで延長戦を許してしまった。思い出すだけで恥ずかしい、情けない。でも、(すごく)よかった。ああ、猛省!


 さくらが家に着いた十分後に、あおい&玲も帰ってきた。


「まま、たっだいま~!」

「おかえりなさい、あおい。玲も、ありがとう」


「あおい、ずっと元気で楽しかったよ。食事の支度、手伝おうか」

「れいは、あおいとおふろー」

「おふろも沸かしてあるよ」


「れーい、いっちょはいろ? きょはあおいがれいをあらったげる、ね!」


 浴室に直行したふたりだったが、なんか違う。違う?


「呼び名が、『れいおじちゃ』から、まさかの『れい』に昇格」


 信じられない。そこまで懐いたの? てか、おじさんだよ、おじさん。しかも、『ままの元彼』なんだけど。


 玲はもう一日、東京に滞在するという。明日、日曜日は涼一と近くの公園へ行くらしい。


「じいじとかいくんと、こーえん!」

「じゃあ、私もお弁当を作って」

「ままは、いーの! れいとじいじとかいくーん!」


 つまり、逆ハーレムか。三歳児のくせに、くっ。末恐ろしいわ。


「でも、母さんの様子を少しでも見てくれると助かる」

「うん。そうする。お弁当を持って、ピンポンしよう」


 午前中は、親の家に顔を出そう。そして午後は? 類は相変わらず仕事だ。


 ごくごく普通に、あおいと玲とさくらの三人で、食卓を囲んでいる。類の帰宅はおそらく、午後九時ごろになる。


 玲があおいをだっこしてごはんを食べさせている。正直、そこまでお手伝いしなくてもひとりで食べられるはずだが、あおいは玲に甘えている。


「ねえ、いつから『玲』って呼び捨てになったの?」


 思い切って、聞いてみた。


「『れいおじちゃ』は長いだろ。ましてや、これから一緒に行動する時間が増えるんだ。『玲』だけのほうが簡潔でいい」

「ね、れーい?」


 娘と、兄が仲いいことはうれしい。だけど、ちょっとだけおもしろくない。あおいは玲を私物化している。


 ひととおり、食事が終わったところで玲が言った。


「じゃ、俺はここで」

「は? 泊まらないの?」

「叶恵さんに呼ばれているんだ、家飲み」


「か、叶恵さんとこ?」

「壮馬さんもいるっていうし」


「三人で? また、その三人? この作品、三人同時プレイはないって」

「……同時とか、プレイとか、清純派主人公が発言するな。ちょっと飲むだけだ。壮馬さんとこに泊まるかも」


 しかし、あおいがぐずって玲を引き留めた。一緒にねんねー、と。


***


 あおいを寝かしつけると、ほぼ同時に類が帰宅し、玲は類と少しだけ会話を交わして部屋を出て行った。


「忙しいね、玲も」

「気をつかっているんだよ、私たちに」

「そうかな。ぼくのあおいを独占して、ほんとは許せないけど。類からあおいを奪ったぞって、心の中では嘲笑<ざまぁ>しているんだ。このあとだって、乱交パーティーでしょ」


「ただの飲み会だって」

「そうかなあ? そろそろ、叶恵さんに押し倒されるんじゃない? 玲、きっとずいぶんご無沙汰だよ」

「壮馬さんもいるって」


「じゃあやっぱり、三人同時プレイかあ」

「だからちがうって!」


 妄想がたくましいのでつい、思わず、大きな声で突っ込んでしまった。さいわい、あおいは起きなかったが。


「そういうえば、まふゆん。ぼくとのこと、さくらになんて説明していた?」

「……言ったほうがいい? 付き合っていたって言われました」

「は。付き……、えええええ?」


「真冬さんは函館で、男女どちらでもオッケーみたいなことを言っていたけれど、まさか類くんまで、なんて」

「ちょっとさくら。信じていないよね、ぼくがまふゆんとなんて。そりゃ、ふたりで女の子をひっかけたこととか、ふざけてキスしたぐらいはあったけど」


「いい。もう、いい。過去話はもう、じゅうぶん。私がすきなのは、今の類くんだから」

「でも、誤解されたままじゃ、ぼくが困るし」


「類くん、すごいよ。さすが、経験あるねって、逆に尊敬。相手が真冬さんなら、同性でも許しちゃうかもしれないよ」

「妙な尊敬はやめてって。類くんは女の子一筋だよううううう、今はさくらにしか発情しないし!」

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