針小心大

 ある中学生は、トイレの七不思議を試してみた。


「トイレの鏡に『針さん針さん出ておいで』と呼びかけると、大量の針に顔全体を貫かれる」




 たとえ本当に針が飛んできたりしても、1本残らず避ける自信があった。

 スポーツをやっていて、反射神経がものすごくいいから。


 スマホの画面に調子のいいセリフを吐いて、鏡に向き合った。

「針さん針さん出ておいで」




 避けられなかった。1本残らず避けられなかった。1本残らず避けられるはずがなかった。


 なぜなら、針は顔の内側から飛び出したから。

 肉の中に出現し、顔の皮膚を突き上げ、一気に破り、まるで顔から生えるように飛び出したから。

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