第148話 あと一仕事
そんな我慢の走行に入ったのだけれど、全く退屈な事はなかった。
ステアリングから伝わるタイヤの感触やアクセル、ブレーキ操作で変わる車の挙動、そして他に走る車の動きを読んだりしながら揺さぶりをかけたりと、結構楽しんでいた。これほどの台数の中レースをすることは中々なかったし、周りの出方も伺いながら、フィットを前へ前へと走らせた。
こうして淡々と、でも時に少しペースを上げたりしながら、周回数をどんどんと重ねていった。フィット持ち前の燃費の良さとチームが頑張って仕上げたセッティングによる操縦性の良さで気づけば順位はなんと総合2位(クラス順位も2位)まで上がっていた。
ピットからユリが興奮たっぷりでサインボードを振っている様子を見て、その事に気づいたのだった。
「おっほほ~・・・・マジか!! 2位まで来たんだ!!っしゃああああ!!」
・・・・と、なんやかんやで私もテンションマックスになっていた。
このまま、チームの皆を表彰台に持っていくぞ・・・・!!そう心の中で叫ぶと、残り少ない自分のスティントではあったが、思い切りペースを上げてマキシマムアタックに入った。
少しでも前の位置で莉緒にバトンを渡すべく、懸命にもてぎのコースを駆け抜けた。
そして、いよいよ莉緒へとバトンを渡す時が迫っていた。
続く。
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