第144話 監督の風格
ピットに一旦戻り、モニターを見つめる。 とりあえず、セリカの駆る私たちのフィットは無事コースインをしていたようだった。
その様子を見て、思わず私は「ヨシっ」とガッツポーズを浮かべる。
横にいたユリも同じような感じであった。
走り切った後、爽やかな汗を流しているユリにペットボトルを手渡す。 ユリは爽やかな笑顔を浮かべて、それを受け取る。 封を開けて、一気にごくごくッと一気に飲み干した。
「ふう・・・・ありがと、凛子」
「いえいえ~ お疲れ様です、監督さん。 本当にいい走りだったね。 手堅く綺麗だったよ」
「ん~、まあね。 レースの序盤って一番アクシデントが出るところでもあるじゃない? だから、敢えてこちらは引くつもりで走ったの。 7時間もあるレースで先が長いし、ここで私がクルマを消耗させるわけにはいかないからさ。みんなで走ることを楽しみたいからね~」
ユリはニコニコしながらそう答えた。 みんな思いのユリらしい優しい考えが覗けた。
そして、こうして話している間にも、セリカが操っているフィットはもうドライバーチェンジして2周が経過しようとしていた。
「さあて、ここからが正念場ね。 一応セリカには多少は元気よく走ってもいいよ~って言ってあるけど、どんな感じになるやら・・・・ そろそろコースサイド側にでも行ってみましょ」
私も間髪入れず、うん!と答えて、二人でコースサイドの方へと向かった。
向かってみると、サインボード係をしている莉緒が、こちらに向かってニコッと笑って、「おーい!」と声を上げて手を振ってきた。
「凛子ちゃん、ユリ、やっときた。 ねえねえ、セリカちゃん結構頑張ってるんだよ。 ピットイン早かったから少し順位は落ちちゃったけど、今34番手くらいまで上がってきてるよ~」
「おお、結構いいペースできてるんだね~ 流石はユリのマブダチ」
「ふっふ。 当然よ。うちのセリカちゃんは山で走ってた頃だってブイブイ言わせてたんだから! セリカのスティントは短めにしてあるけど、思いっきり走り切れるといいな・・・・」
そう3人で話し込んでいるうちに、私たちのフィットがメインストレートまで戻ってきた。
莉緒が周回数を掲示したプレートを下げて合図し、更にそこから私とユリがひょいと出て、手を思いっきり振っていると、セリカも「見えてるぞ~」と言わんばかりに手を振ってからパッシングをしてきた。
「あの様子なら大丈夫そうね~ さあて、私たちも次のピットインまでに色々仕事しなきゃね」
うん、っと3人で頷き、私たちは再びこれからの作戦を確認しあった。
続く。
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