第143話 第2スティントに向けて

ユリの運転するフィットは予定通りの周回でピットにやってきた。 それに合わせて、私たちも構えて待っていた。 基本ピットでのクルマの確認作業などはメカニックの方が行うのだが、ドライバーチェンジの手伝いや、その他手伝いは私たちがやることになっている。


「よっし、セリカちゃん。 レーシングスーツとヘルメットは大丈夫?」


「はい! ばっちりです!! ・・・・ああああ・・・・緊張するううう・・・・」


「大丈夫、大丈夫よ! セリカちゃんの出来ることをやってくればいいから。 楽しんできなさい!」


私は、緊張仕切りのセリカの肩を両手でポンポンっと叩いた。


それに対してセリカちゃんも少し安心したように目を細めて二回頷いた。


それを見て少し安心していると、フィットはもう、こちらすぐまで来ていた。


「おっし、じゃあみんないくぞおお!!」


私が声を張り上げると、メカさんと莉緒、セリカも「はい!!」と返事を返して配置に付いた。


メカさんがロリポップ(停止位置を知らせる標識)を前に掲げ、ユリはそこにフィットを上手に付けた。


その位置で構えていたセリカはドアを開けて、サッとユリと交代した。


丁度降りるときにユリはそっと


「よろしくね」


と耳うちをしていたようで、セリカは小さく「うん」と答えてからユリと少し握手を交わした。


ユリが丁寧にシートベルトを閉めさせ、運転席周りの調整をした後、私もドライバーズシート周りのチェックを済ませると、そっと私はドアを閉めた。


フィットもメカさんがピットイン時に入念にチェックしたものの、全くのノープロブレム。


タイヤも燃料もあまり減らずに済んでいた。 ここのピットタイミングでは、タイム短縮のためガソリンは補給しないことにしていた。


監督であるユリはメカさんからその報告を受けると、うんうん、っと頷いてスタートの指示を出した。


「おっし、じゃあ、セリカ! 行っておいで!」


ユリがそう言って、グッドサインを出すと、ロリポップ役をやっていたメカさんも一瞬コクっと頷いて答えてみせた。 そしてその瞬間、ロリポップは振り上がる・・・・!!


セリカはエンジンを始動して、ギアを入れクラッチをミートさせ、フィットは勢いよくピットロードを後にした。


続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る