第140話 チームで作戦会議

レース本番の朝。 十分睡眠を取った私たちは、近くのホテルを出て、ツインリンクもてぎのパドックへと向かった。 


私たちのチームのガレージには、メカニックが昨日しっかりとメンテナンスと洗車を行って準備万端なフィットが佇んでいた。 こうして見てみると、中々精悍な見た目をしていてテンションが上がってくる。 いよいよこれでみんなと7時間戦っていけるんだ・・・・私も思い切りやるぞ・・・!!


・・・・と胸の中でこっそり叫んだ。


それから暫くして、監督であるユリがブリーフィングを開いた。 


「さて、みんな集まったかな。 じゃあ、今日のレースの作戦とその他諸々について説明していくわよ~」


「「「はーい!!」」」


三人揃って返事をした後、本題へと入っていく。


「先ずは今日の作戦ね。 みんなに言ってある通り、このレースはドライバー交代を最低で5回はしなきゃいけないのね。 で、給油する場合、最低10分はピットにいなきゃいけない感じになるの。 一応そういうことも加味して決めた出走順として、スタートドライバーはアタシ、2番目にセリカ、3番目に凛子、4番目に莉緒、そしてまた最後にアタシが乗る・・・・って感じで行こうと思うの。で、なるべくビギナーのセリカと莉緒に負担がいかないように、アタシは2スティント(※2回走る事)、あと凛子のスティントも今回長くとることにしておいたわ。 ちょっとキツいと思うけど、チームのためによろしくね、凛子」


「うん、もちろん」


「ありがとう。 一番の経験者としてよろしくね。 あと、このレース、給油する時にガソリンスタンドまで手押しでクルマを持って行かなきゃいけないから、基本ピットインする時は、もちろんメカさんが力あるからグイグイやってくれると思うけど、みんなで押して持っていこうね。 まあ、後、無線は使えないからできるだけサインボードはマメに出すようにするわね・・・・」


と言った具合に、事前確認を入念に行った。 


仲がいいとはいえ、今回初めて出るみんなでのレース。 マメなコミュニケーションが肝になってくるのだ。 そして、Joy耐という競技自体、様々な面で一般的なレースよりもチームワークが要求されるレースなので、そこでも皆と一緒に戦えるチームとしてやっていけるような密な話し合いを行った。


「・・・・さて、アタシからは以上かな。 もちろん、初めて出る競技だから、これから色々イレギュラーな事も起きると思うけど、みんなで頑張っていきましょ。 そして、あわよくばいい順位も取っちゃおう。 そして、楽しんでこう!!! えいえい、おー!!」


おーーー!!! とユリの掛け声に合わせてチームの皆が拳を突き上げた。


晴れた空の元、いよいよレースの始まりが近づいていた。


続く。

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