第114話 紅き蜃気楼
NXCD最終戦から暫く経った、ある日の休日。 凛子はまた地元群馬県へと戻り、志熊自動車の手伝いに来ていた。
無論、私自身はここに直接勤めているわけではないのだが、愛車をメンテナンスしてもらう時や、人手が必要になった時などにこうして赴き、整備の手伝いや、雑用、中古車のテストドライブ(?)など、色々な事をこなしてきたのであったが、この日も、主に受付や整備の終わった車の納車など、色々な手伝いをこなしていた。
この日も、朝のうちに仕上げたい手伝いを手際よくこなし、早い段階で終わらせることが出来ていた。
「いやあ、ありがとう。リっちゃん。 車検が沢山あったから大忙しだったんだよ・・・・助かったよ」
「いえいえ、私も社長には以前からお世話になってましたから。休みも特に予定なかったですし・・・・まあ、小遣い稼ぎにもなりますからね」
「ははは、そうか。 ま、この後バイト代も夕方には渡すから持ってってくれ。 ・・・ところで今日は、もう一つバイト代を用意しといたんだが・・・・よかったら、どうかな?」
「もう一つのバイト代・・・ですか?」
首を傾げて私は答える。
「ああ。まあ、ちょっとしたご褒美みたいなもんだよ。・・・・こっち来てみな」
志熊社長に促されるまま、工場の裏口の方に回り込むと、そこには深紅のボディが眩しい、懐かしの一台が佇んでいた。
「うわあ・・・・これまた懐かしいクルマ入ってたんですね・・・・カッコいい!」
「はははは。実はこの間、うちの常連さんがこれを手放す、って聞いて引き取ってきたんだ。 中々綺麗な一台だろ?」
そう、そこに佇んでいたのは、私がかつて愛車にしていたCJ系ミラージュのグレード違い、パルマ―レッドのCJ4AミラージュサイボーグZRがそこに佇んでいた。
クルマについて解説すると、ミラージュには三代目モデルからサイボーグという名のスポーティモデルが設定されていたのだが、この五代目となるCJ型にも継続して設定されたのがこのモデルなのだ。
エンジンは、先代型から継続採用された1.6リッターDOHC・MIVECエンジンを搭載し、最高出力は175馬力、それに強化された足回りやブレーキを組み合わせている。
シャーシ自体は四代目のミラージュと同じものを使っているものの、車体は少しコンパクトに、そして強化され運動性能を向上させている。
そして、この五代目ミラージュサイボーグには二通りのバリエーションがあり、私がかつて乗っていた競技向けに簡素化、軽量化や各部の強化が行われたサイボーグRSと、今回乗らせてもらう事になった、アルミホイールの装備、快適装備を充実させたサイボーグZRの二種類が設定されていた。
今回志熊社長はこれを手伝いのご褒美として、店が閉まるまで乗り回してもいい、という事らしい。
「まあ、そういうことだから、これちょっと乗ってきなよ。テストドライブがてら。・・・・気に入ったら買い取っちゃってもいいんだよ(笑)」
「まーた、社長ったら。 そうですね!折角ですし、ちょっとドライブに出てこようと思います。 いい機会を頂きありがとうございます!」
「おう! あ、鍵なら指しっぱなしにしてあるから。行っておいで」
そう社長に言われた後、私はミラージュの車内へと乗り込んだ。
そうそう、これこれ懐かしい・・・なんて、車内に入ってインパネを眺めているだけでも色々な思い出がよみがえってきた。
エンジンキーを捻って、軽快な音を奏でるエンジンを始動させ、私はドライブに出かけた。
続く。
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