第115話 思い出と駆ける

下の商店街をすり抜け、脇道へと入り、いつもの赤城南面道路の方面へと入る。


その道中を軽く流しているだけでも、私は昔に帰ったような気分になっていた。


「うわあ・・・こんな感じだったなあ。懐かしい」


ステアリングの感覚、シフトの感覚、乗り心地、そのそれぞれの感覚が走り込むたびに鮮明に戻ってきた。 


ワインディング区間に入ると、凛子は少しペースを上げ始めた。 そしてミラージュは、そんな凛子のドライビングに答えるように、軽やかにエンジンを吹き上がらせ、コーナーを縫うように走り抜けた。


僅か1トン弱しかない軽量な車体、そしてスポーティにセッティングされた足回りのおかげでこのワインディングロードを、軽いフットワークで駆け抜けていけた。 そして、それ以上に凛子のハートを高ぶらせたのは、その心臓エンジンであった。


ミラージュに積まれている4G92エンジンは、パジェロエボと同じMIVECを搭載していて1.6リッターながら175馬力というハイパワーさと、鋭い吹き上がりが気持ちよかった。 そして、気持ちのいいエンジン音と、抜けのいい排気音とが、凛子のハートに火をつけていた。 思わず低いギアで思いきりエンジンを回して、音と回転フィールを堪能しながら、夢中になって走り込んでいた。 


気付けば、あっという間に休憩しようと思ってた大胡グリーンフラワー牧場へとたどり着いた。 駐車場にミラージュを止め、それを眺めながらソフトクリームをついばんた。


「こう見るとほんとコンパクトだなあ・・・・赤いカラーリングもカッコいいし・・・・いいなあ、買い取りたくなっちゃうなあ・・・・」


でも今そんな余裕ないしなあ・・・・なんて、自問自答しつつ、数十分の休憩時間を過ごした。 そして、次の目的地へと向かうための準備を始めるべく、再びミラージュに乗り込んだ。 太陽の熱で車内はいくらか熱くなってしまっていたが、かつて乗っていた私のミラージュと違い、このサイボーグZRにはエアコンが付いていたので、あっという間に車内を快適な温度まで戻すことが出来た。 やっぱエアコンって偉大だ。


「さてさて・・・・次は思い出のあそこに向かってみるか」


車内でそう呟くと、凛子はミラージュのギアを入れ、次なる目的地へと走り出していった。

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