第112話 激化する争い。

少しのインターバルをおいて、二走目が始まろうとしていた。


久しぶりの女帝の復帰、そして地元勢以外の躍進という事もあって、二走目はどのクルマも思いきりペースを上げてきていて、かなり白熱した走りが見れていた。 そんな中、私たち三人も来るべきその瞬間に向かって準備を進めていた。


短い間に女帝は愛機の調整を行い、涼はコース図を軽く見て研究し、私ももう一度各車の走りを研究して備えていた。


三台のヤマネコたちは、只ならぬオーラと闘志をみなぎらせて、縦一列に並んでその戦いの時を待っていた。


そしてとうとう、この三台では先頭にいた女帝こと、増岡さんのV78パジェロがスタートラインに着いた。 スターターの合図に合わせて、エキゾーストノートが響く。


5・・・・4・・・・3・・2・・1・・・スタート!!


合図と同時に、女帝のパジェロはロケットスタートを決めて、コースに飛び出した。


一走目からド派手な走りを見せつけてきた女帝であったが、二走目にはそれに更に凄みが増していた。 派手なアクションの中にあるキレ味、そしてコーナー脱出の時の姿勢の正確さは明らかに増していて、その走りは別次元と言っていいものであった。 まるで、パリダカールラリーに参戦していたパジェロのラリーカーのように、足を綺麗に沈ませ、持てる力を全て地面に伝え、駆け抜けていた。


高いペースを保ちながら、一つ一つのコーナーを全くミスなく駆け抜け、あっという間にゴールラインへと駆けこんだ・・・・!


主催者から間髪入れず、タイムが読み上げられる。 そのタイムは、先ほどの一走目を更に上回るものだった。


「タイムは・・・・1分34秒1!!!」


なんと、一走目のタイムから更に一秒も縮めてきていた。これは、一つ上のクラスにも匹敵するものなのだった。



「こりゃほんとに化け物だなあ・・・・増岡さん。 強烈すぎる・・・・」


一人でそんな事を車内で呟いている合間に、涼のパジェロもスタートを決めていた。


涼も一走目とは比べ物にならない気迫で、コースのコーナー一つ一つを攻め抜いていた。


しかし、いつものクレバーな走りとは違って、所々粗が見えていて、なんだかぎこちなかった。 そして、そのほころびは大きく出て、ある一つのコーナーでハーフスピンを喫して、タイムは1分43秒と振るわなかった。


いよいよ、今度は私の二走目の番。ミスなく楽しくやり切るぞ・・・・!と心の中で唱えながら、その時を待った。


続く。

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