第105話 衝撃の2走目
「3、2、1・・・・スタートっ・・・・!!」
スターターの人の旗の振り上げと同時にユリのシビックは勢いよくスタートを決めた。
先ほどとは打って変わって、いつも通りのキレキレな調子に戻ったユリは、小さいコースを、豪快に、リズミカルに駆け抜けていた。とは言え、無駄な動作をすることは前に比べてなくなっていて、多少のスムーズさもしっかり備えたものになっていた。
1走目に失敗していた線マタギからの車庫入れも、ちょっとゆっくり目とはいえ無難にこなして、残りのパイロンスラロームも綺麗にこなし、ゴールへと一気に駆け抜けた・・・・!!
タイムは32.2秒。私のタイムと0.1秒違い。なんと1秒も短縮してきていた。
上手くユリらしいリズムを刻みながらも、スムーズさを身に着けてきた成果が出てきたような気がした。
一瞬のインターバルの間にユリもこちらの方に愛車と共にやってきて、二人でコースサイドで莉緒の走りを眺める運びになった。
「いよいよ莉緒の二走目ね・・・・どんな感じでまとめてくるのかしら」
「そうねえ・・・・私も結構楽しみなのよね。さっきの走りで私も度肝抜かれたし。 楽しみだね」
そんなこんなで話しながら待っていると、莉緒の2走目が始まろうとしていた。
「じゃあ、カウント始めます!! 5、4、3、2、1・・・・」
カウントと合わせるように莉緒の911はエキゾーストノートを奏でて、今か今かとスタートを待っていた。
そして、私とユリの二人もコースサイドから固唾を飲んで見守っていた。
「スタートっ!!!」
いよいよ旗が振りあがり、莉緒の911はスムーズにシュッとスタートを決めて、一気に360°ターンを決めた。
「「おおおお・・・・!!すごい・・・」」
1走目と変わらないスムーズさを保ったまま、でも更にペースを上げて莉緒の911はコースを駆け抜けた。 さながら、腕のいい騎手が優れた馬を従わせて馬術競技をやっているように、莉緒と911は完全に心を通わせて駆け抜けた。
スラロームを華麗に駆け抜け、線マタギをしてからの車庫入れも丁寧に、そして最後のパイロンスラロームもびっくりするくらい素早く駆け抜け、ゴールラインへと駆け抜けた・・・・!!
「・・・・タイムは!?!? タイムはどうなの!?!?」
ユリが興奮交じりに叫んでいると、遂にタイムがアナウンスされた。そして、そのタイムに会場中にどよめきが走った。
「タイムは・・・・29.9秒!!」
「「ええええええええええ!?!?!?!?!?!??」
ユリと二人で、驚愕してしまっていた。なんと、この日走った人では唯一の20秒台のタイムなのであった。
「え・・・・ちょっと待って。速すぎない??」
「今日確かに莉緒絶好調そうだったけど・・・・凄いたまげたね・・・・」
そんな事を言っていると、莉緒もこちらへとやってきて
「凛子、ユリ、ヤッホー!! かなりいい感じにいけちゃったわ~!!」
ニッコニコの笑顔を浮かべて莉緒は帰ってきていた。 心なしか、911もいつもより元気そうに見えた。
「いやあ、莉緒凄いね~!おめでとう!! 超上手かったよ・・・・」
「ほんとほんと・・・・強烈だったわね・・・・ どうしたらあんなに攻められるの?」
「ん~まあ、ほんといつもよりちょっと力を入れて走っただけよ。 911とひたすら心を通わせて頑張ったわ。 あ~楽しかった!!」
莉緒らしい、いつもと変わらない走りが生み出した結果だったようだ。
結局、この日は莉緒が総合でもレディースクラス両方で優勝、ユリもクラス2位で総合5位、私もクラス2位、総合4位を取った。
最後にファミレスで打ち上げをして家路に着き、こういう気軽に楽しめるモータースポーツもいいな、と思った一日であった。
続く。
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