第104話 研究の成果

そして二走目。 私は心の準備をしっかりと済ませ、万全の態勢で備えた。


「・・・・っしゃあ!! 莉緒にあれだけ見せつけられたんだもん。 次はもっと頑張るぞい!!」


あっという間にまた自分の番は訪れ、スタートラインへとパジェロエボを付けると、スターターの人の合図を注視した。


前走車が走り終えそうなところで、旗が準備される。


「はい、じゃあカウント始めまーす!! 5、4、3、2、1・・・・」


カウントに合わせて、アクセルを煽り、スタートの瞬間を待ち構えた。


スタートっ・・・・!! という掛け声と同時に、旗が振りあがる。


私はクラッチを上手くミートさせて、軽快にスタートを決めた。


一走目に比べて、私は更に一つ一つの操作をより丁寧にして、ギクシャクした動きを減らす方向で走行した。


どちらかというと、一走目のようなキレキレさよりも、スムーズに繋げるような慎重な走り方に切り替えてタイムアップを狙いにいっていた。もちろん、先ほどの莉緒の運転を研究した成果である。 あのスムーズでスピーディーな動きを、どうにか自分でもモノにしようと、私は上手く考えながらドライブを続けた。


最初の360°ターンを抜け、スラロームもスルッと抜け、線マタギからの車庫入れも、一走目のようにギクシャクしないように、丁寧な動作を心がけた。


最後のスラロームも、綺麗に線をなぞるように走り抜け、一気にフィニッシュラインに・・・・!!


「結構これはいけたんじゃない・・・・?」


自分でも中々自身が持てる走りができ、少し安堵していると放送でタイムが読み上げられた。


「ただいまのタイム、32.1秒!!32.1秒!!」


僅かコンマ4秒だが、なんとかタイムは削れていたようであった。クラスでも今のところは2位のタイムだった。


「うーん・・・・莉緒のタイムには流石に追いつかなかったけど、中々悪くなかったかな・・・・」


パジェロの中でポツンと私は呟いた。


走り終わってパドックへとパジェロを進ませ、私は残りの参加者たちの走りを眺めていた。


莉緒がぶっちぎりのトップタイムをマークし、周りの熱が入ったからなのか、全体的にタイムを上げてくる選手が多数出てきて、中々の盛り上がりを見せていた。 


そして、暫くまわり、遂にユリと莉緒の車が連なって前の列まできて、スタートまで秒読み段階になっていた。


最後の二走目。 二人がどんな走りを見せるのか、私はコースサイドからワクワクしながらその時を待っていた。


続く。

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