第100話 フィーリングチェック

ゼッケンを愛車に貼って、ご満悦になっているも束の間、あっという間に慣熟走行の時間が与えられた。 


私たちはクルマに乗り込み、ゼッケンの通りに順番待ちをして、出走を今か今か、と待っていた。 待っている間、車内から各車の動きを見てみると、どうやらこのクラスは常連さんが多いらしく、どの選手もびっくりするくらいコンパクトなコースを素早く、まるでみずすましのように駆け抜けていた。 シンプルな競技とはいえ、やはり常連組の動きを見ていると不思議と熱が入るし、自分ならどう走るか、というイメージが頭の中でうごめいていた。


先ずは慣熟走行、ゆったりいくぞ・・・・! そんな事を考えていると、あっという間に順番が訪れた。


前走車がコースを走り切ると、スターターの人が合図を送ってきたので、私も手を挙げて答えた。 すると、カウントダウンが始まった。


「はい、スタート五秒前!」


いつも、こういう合図を聴くと胸が昂る。ダートトライアルの時と同じだ。


思いっきり・・・・いや、慣熟走行だからまずは大人しく・・・・


「4、3、2、1・・・・スタート!!」



合図と共に、アクセルをグッと踏みこみ、ステアリングを切り込んで、第一関門の360ターンに入る。 一速に入れたまま、とりあえずサラッと、クリアーするとあっという間にスラロームに差し掛かる。


「っと・・・っと」


何となくリズムを取りながら、綺麗にスラロームを通り切ると、今度は頭を突っ込んで完全停止する場所に差し掛かる。


「よし・・・・それっ!!」


とりあえず、優しくキュッとブレーキを踏んで、フロント二輪をラインの向こう側へまずは綺麗に運んだ。 すると、旗が上がったので、今度はそのままバックギアに入れて、スルッと、回り込むようにガレージセクションにパジェロを進ませる。


パジェロの車体感覚の良さが光った。


ガレージセクションに綺麗に速く駐車すると、旗の合図が上がったので、またスムーズに脱出して、最後のスラロームセクションへと向かう。


先を、先を読んで、スムーズに走り切り、見事ゴールイン・・・・!!


「ふうう・・・・なっかなか走りごたえあったなあ・・・・」


なんて、思わず車内でぼやいてしまったりした。


慣熟走行が終わり、ブリーフィングという事で改めてコースを歩いて確認した後、暫く休み時間になったので、三人はまた井戸端会議を開いていた。


「いやあ結構シンプルというか、オーソドックスなレイアウトだけど、走りがいある感じねこれ」


「そうそう。私も練習から結構汗かいちゃったわよ。 でも、911ちゃんと結構シンクロしたような気分になって楽しいかも!」


なんて、私と莉緒で意気投合しているかと思えば、


「いや、中々しんどかったわねえ・・・・ もっとこういう細々したところ練習しないとなあ・・・・アタシ。 じたばたしちゃった」


なんて、ユリがポツリと呟いたりしていた。


「大丈夫だよ!この後また練習走行もあるし。 ユリも、もうちょいスムーズにコントロールできればいい線行ける気がするなあ」


「本当・・・・? それならまあ、次はもっと気を使って練習してみようかな」


「私も、もっと線でつないだような運転できるようにしときたいなあ・・・・折角お化粧直ししたばっかの911の良いところ見せたいもの!」


三人は思い思いに会話、そしてアドバイスをし合って時間を過ごしていた。


次の練習走行も、もうすぐに迫っていた。


続く。

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