第99話 パドックの朝

茨城のインターチェンジを降りて、暫く下道をひた走ると、遂にそこにたどり着いた。


今回のオートテストの舞台となるのは、茨城県石岡市にあるサーキット場「茨城中央サーキット」だ。


茨城中央サーキットは他のサーキットとは違い、基本的に他のサーキット場のように固まったコースはなく、広いアスファルトの広場にパイロンでコースが形成された、言わばジムカーナ場のようなところである。 今回のこのオートテストでは専用に組まれたコースを走って競技をすることになる。


今回のコースレイアウトは、スタートしてすぐに右折して360度ターン、スラロームをして線またぎゾーンでいったん停車。そこからバックして、そのまま車庫入れスペースへイン。

その後はまたスラロームをしてゴールインという、シンプルながらクルマの動きを楽しめるものとなっている。


クラス分けもなされていて、競技経験者が主に活躍するMT/ATレギュラークラス、主に競技経験のない、ないし少ない人で構成されたMT/ATビギナークラス、女性向けのレディースクラスの5つで構成されている。 今回の私たちの場合、私は今までに競技はそれなりに経験があったのでMTレギュラークラス、莉緒とユリは競技経験が少ない形だったのでレディースクラスへの参加となった。


一旦受付をするために、サーキットの駐車場に三台仲良くクルマを並べて、私たちは降り立った。


クルマから降りて、ゆっくりと私は背を伸ばして息を吸う。 朝の少しひんやりした爽やかな空気が心地いい。


「・・・・んん~はああ。 着いたねえ」


「ね、結構早くに着いちゃったね。しかし、結構いいところだね、ここ。筑波山なんかも結構近いみたいだし」


「そうねえ。帰りにそっち寄ってくのもいいかもね」


莉緒と私が談笑していると、ユリも少し遅れて入ってきた。



「筑波山も面白いわよね~ アタシも昔たまにだけどパープルラインとか走り来てたわ」


「そうなの? ユリって首都高ばっか走ってるイメージだったけど」


「リドっちゃんが峠好きだったからねえ・・・・東京から近かったから、ライブが終わった後とか、そのままこっちきて朝が来るまでひたすら走ったりとかしたなあ・・・・懐かしいなあ」


どうやら、ユリは中々茨城の方とはゆかりがあったらしい。 今日もユリの後ろに付いて走っていたけれど、妙に動きがスムーズだった理由が分かった気がした。


「じゃ、そろそろ受付しに行きますか」


「「はーい!!」」


私が掛声をかけると、二人は元気よく返事をした。


受付に来て、それぞれ名前を確認し、ゼッケンが手渡される。私は偶然「55」番であった。


三人揃ってクルマにゼッケンを貼り付け準備を整えた。


「ゼッケン付けると、やっぱ競技に出るって感じがしていいな~! カッコいい」


「フフっ、そうね。 やっぱシビックにこういうの貼ると雰囲気出ていいな~って」


二人も悦に入っていたようだった。


次はいよいよ習熟走行。コースの雰囲気を掴むぞ、っと私は意気込んでいた。


続く。


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