第67話 分岐と組み立て。

迫る分岐、並んだまま駆け抜ける二台。 少し緊迫した雰囲気の中、選択の時は迫った。


「ねえ凛子、あの分岐降りて!」


アレサは檄を飛ばした。


「う、うん。分かった。」


合わせて私は答えながら、MINIの進路を変えた。



一方、GRヤリスに乗るメイドペアは、横から消えたMINIを尻目に、17号をそのまま直進していった。


「ちょっとあの二人、バイパス降りてったわよ!?下の道からいくのかしら・・・。」


「でも道的に考えたら圧倒的にバイパスのが一直線な分楽なはずだろうになんでなんだろうね・・・。向こうも何か秘策があるのかも・・・。」


「だね・・・。どんどん踏んでってね!リドっちゃん!!」



「もちろんよ!」


GRヤリスも、深く踏み込んだアクセルに忠実に答えるように、夜の17号に鼓動エンジンサウンドを響かせながら、白い身体を溶かすように車速を伸ばしていった。



下の道に降りた私たちは、橋を渡って右折した後、旧17号線を気持ちよく駆け抜けていっていた。 正直バイパスよりも不利なルート取りになるんじゃないかと危惧していたのだが、思っていたよりも道は空いていて、ずっとハイペースを保って走っていられた。


街灯は少なくて道は暗かったけれど、明るいLEDライトに助けられて、闇の中を迷うことなく切り裂くように走り抜けられた。


少し安堵した表情を浮かべながら運転をしていると、アレサは得意げな表情をこちらに向けながら私に話しかけてきた。


「だ―いせいかいでしょ、凛子。」


「うん・・・正直なんで下の方にわざわざ誘導したんだろ、って思ったんだけど、これなら納得。」


「でしょ?この辺、大学時代よく通ってたのよね。榛名で走り込んでからの帰り道とかでさ。 17号も一車線区間はそれなりにあるし、敢えてこっちを使うのもありかなと思ってこっちにしてみたの。それに・・・・」


「それに?」


「・・・山岡家アプローチするなら、ある側の車線から行った方が絶対いいしさ・・・。50号二車線道路だし。」



「・・・・あ~そう言う事ね。納得。」



私はアレサの意図を完全に読み取った。 というのも、アレサが言うように17号から50号バイパスを前橋方面の方にアクセスすると、山岡家があるのは反対方面の車線になってしまうため、何処かで上手くUターンを取らないといけないので、近そうに見えてロスをしてしまう格好になるのだが、こちら側からアクセスすれば途中で市街地を抜ける分若干のロスはあるものの、夜間ならさほど交通量もないし、それに山岡家の方の車線なので直にアクセスができてロス分を吸収でき、素早く着くことができるという算段なのだ。


一見、無駄があるように見えて実はしっかりとルートを組み立てているアレサの頭の良さに改めて凛子は感動していた。流石は自動車部時代に散々ペアを組んだだけあるな、と思った。


暫く続いた幹線道路の面影の残る区間を抜けて、いよいよ市街地の方へと進路を進める。私はドキドキした気持ちのままMINIを前へ前へと進めた。 絶対にメイドペアにラーメンをゴチになるんだ・・・! すきっ腹を原動力に心の灯もどんどん強くなっていった。


続く。

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