第66話 イコールコンディション
榛名山を駆け下りていくと、あっという間に17号バイパスが見えてくる。先に降りてきたメイドペアは本線に入る前の交差点に引っかかったので、作戦会議をしていた。
「ユリ、次はどんな感じで行くの。」
「うーんまあ、そのまま17号を前橋方面に向かって降りて、そこから50号線そのまま行くのが一番安パイそうだからそうしようかなと思ってるんだけど・・・・どうかな?」
「それで構わないよ~。 正直あたしもこの辺の道はさっぱりだからさ~。ナビゲートは完全にユリに任せるよ。」
「オッケー!それならアタシもできる限り頑張るよ!」
互いに士気を高めていると、何やら後ろから眩い光と共に、乾いた派手なエキゾーストノートが迫ってきていた。 そう、グンマ―の二人組が駆る英国の小さなMINI《モンスター》だ。
二人は30秒遅れてスタートしていたものの、地元出身の利を活かして、あらゆる道を駆使して差を一気に詰めていたのだ。
「とうとう二人とも来たわね・・・迎え撃たないと・・・。」
芹香はバックミラーに徐々に近づいてくるMINIを見つめながら、闘志を燃やしていた。
「ふう・・・・なっかなかタイトなところばっか通らされるわね・・・・。」
「ふふっ、結構ラリーっぽいタイトな道ばっか選ばせてもらいました☆アハ☆」
いや、アハじゃねえよ。と私は思わず突っ込んでしまった。実際まだ納車から何日も経っていないような真新車だったし、ましてや大事な友達の車だし、傷の一つも付けたら嫌だなと思いながら走るのは中々神経が磨り減るような思いなのだった。
そういう思いを察してか察してないのかはわからないけれど、アレサは
「まあまあ、凛子じゃなきゃあんな道走らせないに決まってるでしょ!あたしは貴方の腕を信用してるからこそ、こういうコース取りにしたんだから!」
とウィンクして応えた。正直そう言ってもらえるとちょっと嬉しさはある。顔も少しだけほころんでしまっていた。私ってひょっとして凄くチョロいのでは?
「そ、そうやって言われると嫌な気はしないけど・・・・。とにかく、ようやくメイドペアに追いついたし、ちゃんとナビよろしくね!」
分かってるって!とアレサは元気よく答えてみせた。
メイドペアのGRヤリスと私たちのMINIはこの時点で信号一つくらいの距離を挟んだ差、接戦であったのだ。
信号が青になると同時に、二台はそのまま信号を右折して17号本線へと入ってゆく。
ここからはいよいよガチンコ対決。双方ともアクセルを踏み込む足に力が入った。
あっという間に差の詰まる二台。ラリーの申し子GRヤリスと、スーパーカーキラーのMINI JCW-GPと、日英の技術の粋が詰まったホットハッチ二台は、手に汗握るデットヒートを繰り広げた。 さながら、夜の街を縫うように駆けてゆく忍者のように。
群馬の大動脈を前橋方面へと下る事数分、渋川伊香保インターを通り過ぎた辺りの分岐が近づいてきていた。
続く。
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