第65話 カウントダウン

そして約束の時間がもう目前に迫り、四人は再び同じ場所に集う。


「よーし、じゃあこの後すぐね。ぼちぼち乗り込んで待ちましょ。」


アレサがそうぼやくと、同調したようにそれぞれ二組は車に乗り込んだ。


ミニに乗り込み、ベルトを締めて待機していると、助手席からアレサがこう告げてきた。


「・・ねえ。うちら一応地元勢じゃん?30秒くらいハンデ付けてあげない? あの二人この辺の道知らないだろうし。」


「別に私はいいけど・・・。でもハンデなんて付けたらこっちかなり不利にならない? 車の性能的にはほぼ互角なんだしさ。」


「大丈夫大丈夫!ナビゲーターのあたしの頭を信用してよ。じゃ、そうするか。」


頭を人差し指でツンツンと差しながらアレサは自信満々に言った。 そんなの言ってもなあ・・・とちょっと思いつつ、確かに(私は『元』だが)地元勢の私たちに比べたら、この辺の土地勘のないメイドペアには中々酷な条件であるから仕方ないかな・・・と自分を納得させた。


そうこうしている合間にもう30秒前になり、私はエンジンスイッチを押してミニの心臓に火を入れる。そして、どうやらメイドペアのGRヤリスにも火が入ったようで、二台のエンジン音はオーケストラの演奏のように、綺麗にハーモニーを奏でて榛名山に響いた。


あと20秒・・・・10秒・・・・5秒、4、3、2、1・・・・・・。


コトン・・・と外にある時計の針の音が響いた瞬間、メイドペアのGRヤリスは勢いよくスタートダッシュを決めて、駐車場を後にした。


「っっっしゃああ!!行くぞおお!! ユリナビゲートよろしくうう!!」


「オッケー任されたああ!! ・・・・正直まだ不安なんだけれど・・。」


「え・・・・・」



ナビゲーターに一抹(?)の不安はあるものの、快調に純白スーパーホワイトのGRヤリスは榛名山を下っていった。 ラリーの申し子であるGRヤリスにとってこのような峠道はうってつけの場所なのであった。 コンパクトなボディと短いホイールベースによる旋回性能の高さ、ピックアップのいいエンジン、力強く路面を蹴飛ばしてくれる4WDシステム。ラリーで戦うためのメカニズムは公道でも十分に発揮されていた。


そして二人は「ある違和感」にも気づいていたようであった。


「ねえ、凛子たち、まだ来てなくない?どうしたのかな?」


「確かに・・・何かトラブってなきゃいいけど・・・。」


「ほんとね・・・・あ、えっとリドっちゃんここまっすぐ下ってね。」


「オッケー!任しときー。」


と、こんな具合にメイドペアは下っていっていた。


そして、私たちも約束の30秒が終わろうとしていた。


「おーし!じゃあ仕留めてやろうか!グンマ―連合として!!」


「うん!・・・おおし、行こう!!」


30秒経ったと同時に、私たちのミニもスタートダッシュを決めて駐車場を後にする。


「よーし、すぐ追いついてみせるぞ~!」


私は結構ワクワクさせながらミニをどんどん下らせていった。



続く。

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