第61話 ブリティッシュリトルウェポン

「かっこいいなあ!愛らしいデザインに攻撃的なエアロパーツ・・・そそるねえ。」


まじまじとアレサのJCW-GPを眺めながら私はそう頷いた。


「でしょでしょ!特にこの『GP』だと普通のジョンクーパーワークスより更に過激になるから気に入ってるの。納車されてから嬉しくってもう2000キロ走っちゃった。」


「2000キロ!?  まだ納車されて3日って言ってなかったっけ・・・?」


「そりゃテンション上がってたら、そんくらい楽々なもんよ。凛子だってそうでしょ?」


言われてみりゃ私もパジェロエボ納車から数日で5000キロ走っちゃったっけ。 人の事言えないや。


アレサが今回乗りつけた愛車「新型MINIジョンクーパーワークスGP」について説明すると、元々ミニシリーズの中でも、特にスポーツ志向に振ったジョンクーパーワークス3ドアをベースに、よりサーキット走行などを主眼においたチューニングを施したハイパフォーマンスモデルである。 エンジンはノーマルより大幅にパワーアップされ、なんとMINI史上最強となる306馬力を発揮。それを受け止めるサスペンションやブレーキも強化されてる上に、リアシートを廃することで軽量化も果たしている徹底ぶり。更に、より太いタイヤを収めるためのオーバーフェンダーや、サーキットなどでより安定して走るためのスポイラー類などが追加されている。


その結果、0~100キロ加速わずか5.2秒、最高時速265キロ、そして世界でも特に過酷とされるニュルブルクリンクサーキット北コースでは一昔前のスーパーカーにも匹敵する7分56秒という歴代MINI史上最速タイムを記録している、正に小さなモンスターマシンなのだ。


「まあでもほんとこの子はねえ、限定車だから手に入れるのに苦労して苦労して。いつものセールスさんに頼んで、受注開始と同時に発注入れてもらったりしたりね。 おかげさまで、日本での納車第一号なの!」


「流石だねアレサ。 ・・・ところで、フロントフェンダーにある『0032』ってのは何の数字なの?」


すると、フッフッフ・・・とアレサは満足げな笑みを浮かべた。



「よくぞ聞いてくれました・・・・。これはね、シリアルナンバーなの。限定2000台だから、0001番から2000番まであるって感じかな。・・・ちなみに私は無理言ってこの『0032(ミニ)番』を確保してもらったの。」


なんならこの子ナンバーも「・・32」だし、気合入りすぎか。・・・・と脳内で突っ込みつつ、そ、そうなんだ~・・・すげえや。と声を震わせた。 でも、そういう私も自分の車のナンバーは型式(V55W)と合わせてあるし、やっぱそういうとこを凝りたくなる気持ちも凄くわかる。


その後も暫くそれぞれの愛車談議と世間話に花を咲かせていたのだが、途中でアレサからこんな話を持ち掛けられたのだった。


「ね・・・・折角だからさ、アタシのミニちょっと乗ってみる? 凛子なら腕は信用してるから運転してもいいよ~。」



おろしたての新車なのに運転なんてさせてもらってもいいのかな・・・と一瞬思ったが、正直興味津々だったので



「え、じゃあお言葉に甘えて・・・・。」



と、二つ返事で了解してしまった。



この後、思わぬ人物と遭遇することになるなんて私たちは知る由もなかった。



続く。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る