第19話 いざ筑波へ!? サーキット走行会その4

関越道をひた走りながら、凛子はGTOの様子を見つつ、フィーリングを確かめていた。 相棒のパジェロエボとは全く違う視点の低さ、乗り心地、ターボ車特有のタービンの音や加速感が新鮮な感じがした。

元々サーキット仕様であった個体だったと聞いていたから、もっと気難しいものを想像していたのだが、実際そんなことは全然なく少し遮音材などが省かれている分、メカニカルな音は入ってくるのだが、それ以外は全く普通の車のように乗れてしまっていた。乗り心地も固めだが不快なほどではないし、エアコンもちゃんと効く。 車の素性がいいのか、はたまた志熊社長の調律が上手くいってるからなのかはよくわからないが、とにかく乗りやすくていい車だというのが第一印象なのであった。

とはいえ、ひとたび低めのギアに落とし、思いきりアクセルを踏み抜けばV型6気筒エンジン特有のドスの効いた低いエンジン音とタービンの回る音と共に、まるで巨人に後ろから手で押されたようなすざまじい加速を見せてくれた。 以前乗ったランサーともまた違う加速感に私は夢中になった。 


その後は高坂サービスエリアで莉緒と予定通り休憩を取ることにして、二台を仲良く一緒に止めた。 丸い可愛らしいヘッドライトで、如何にもずっしりした大きいお尻の911と、切れ長でキリっとした顔つきにムチっとしたボディのGTOと、カッコいいスポーツカー二台を並べて眺めるのは興奮ものなのであった。


うーん・・・・たまらぬ!ヘラヘラしながら眺めていると頬っぺたにヒヤッとした感触が。


「ヘアっっっ」


「ほーら、凛子ちゃん。缶コーヒー買ってきたよ。」


「あ、ありがとう莉緒ちゃん・・・・。ごめんね。車に見とれてて・・・・。」


「うん、わかってる(笑) 全く凛子ちゃんったら。 しかしGTO迫力あるよね~。今見ても全く色あせてないし、むしろ迫力じゃ負けてないよね。スーパーカーみたい。」


「ほんと・・・ね。何だかんだ、当時は三菱のフラッグシップスポーツカーだったし、風格満点だよねえ・・・。あと、デザインの事だと特に私このサイドの括れたデザインが大好きでさ・・・・・・」



そしてここでも暫しの間車談義になった。


暫く高速を経由して、莉緒と別れ、私は首都高C1で「テスト走行」をしてみた。


関越道では試しづらかったコーナーリングや中速での車の様子を探っていたのだが、これもまた素晴らしかった。GTOの弱点である頭の重さは最小限に抑えられていて、首都高のコーナー群の中でも軽やかな身のこなしを見せてくれた。エンジンも低回転から粘り強く力を発揮してくれるので鋭く立ち上がれるし、これは筑波を走らせたら楽しいだろうな・・・・ そんなことを考えながら夜のC1を駆け抜けていった。


「テスト走行」を終え、首都高から降りて給油を済ませ、タイヤの空気圧チェックなどもした後、自宅アパートの駐車場に向かい、借りてきたGTOを我が愛車のパジェロエボの横に駐車した。三菱のフラッグシップカーが二台も並んでいるという光景は、それはもう眼福なものであった。形もジャンルも違えど、技術の粋を詰め込んだ宝物のような車たち。 どちらも本当に素敵な車だと思った。


暫く眺めてにんまりした後、明日は朝早いし、私は部屋に戻ることにした。


明日は思いきり楽しんでくるぞ~~!! 遠足に行く前日のような興奮が私の中で渦巻いていた。



続く。


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