第20話 いざ筑波へ!? サーキット走行会その5

そして土曜の早朝。結局興奮しすぎて殆ど眠れなかった私は危うく遅刻寸前になりながらも、急いで準備を済ませ、約束の公園の駐車場まで猛ダッシュで向かった。


駐車場に止まっている二台の横に急いで横付けして降りると、ユリがムッとした顔をしながらこっちに詰め寄ってきた。


「凛子遅―い!!何やってるのよ!!」


「ごめんごめん・・・興奮しすぎて寝れなくてさ・・・・。とりあえず間に合ったから許してちょ・・・・。」


「ま、とりあえず凛子ちゃんも事故とかじゃなくてよかった。・・・・起床事故は起こしてるけど(笑)」


「もおお、莉緒ちゃんったら上手いこと言わないで!!」


と、三人でまたコントのような掛け合いをしながら笑いあっていた。やっぱりこの三人でいるとちょっとしたことでも面白く感じてしまう。


「じゃ、行きましょっか。」


私とユリは「うん!」と元気よく返した。


3人がそれぞれの車に乗り込み、エンジンをかけ、エキゾーストノートが公園中に響いた。


そしてそのまま連なって、駐車場を後にした。


筑波サーキットはアクセスも非常によく、首都高を経由し、三郷インターから常磐道にアクセスし、谷和原インターチェンジで降りて30分ほど走ればついてしまう。そのため、私が寝坊気味だったとはいえ、全然余裕を持ってついてしまった。指定されたスペースに三台仲良く並べて止めると、


「ごめん、あたし運営の仕事ちょっと任されちゃったから、また後でね~。」


と抜けていってしまった。


しょうがないか~ということで、私とユリでとりあえず持ってきた折りたたみ椅子に腰かけて、受付が始まるまで朝ご飯を一緒に取ることにした。


私は道中で買ったコンビニおにぎり3つ、ユリは自分で拵えてきた手作り弁当を食べていた。


2人で黙々と食べていると、ユリがこう切り出してきた。


「・・・しっかし来てる他の車、高そうな車ばっかね。 莉緒の交友関係の凄さがわかるっていうのか、なんていうのか・・・・。なんだか肩身狭いわよね・・・・。」


確かに。駐車スペースを見まわしてみると、莉緒と同じポルシェの911シリーズに、ケイマン、メルセデスAMG-GT、ロータスエキシージや、アウディTT-RSなど、所謂名門と言われる高級輸入スポーツカーばかりが並んでいた。国産の車は私たちの2台と一台だけいたZ34フェアレディZニスモくらいであった。


「確かにねえ。今回は莉緒の医者仲間でやる走行会みたいだったしねえ。いい車ばっかよね。」


「乗ってる人もみんななんだか社交性高そうだし、なんかキラキラしてるっていうのか。・・・ぐぬぬ。元が根暗なアタシには余りに居づら過ぎる環境だわ・・・・。」


「根暗って・・・・。ユリだってメイドであれだけ頑張ってるんだから人との関わりは得意な方なんじゃ・・・・。まあ、私も莉緒もいるし大丈夫だよ。そんな事より、今日は思いきり走っちゃおうよ!!」


「それもそうね。今日は思いっきり暴れてやりましょ!!!」


最後の、暴れて・・・の件が気にはかかったものの、そうね!っと言って私はVサインを返した。

その後、受付の時間になったので受付を済ませ、そのままサーキット内の施設で座学を受けることとなった。


ここでは、コースインの手順や注意点、フラッグの種類や見方などを勉強した。いくらでも思いっきり走っていいサーキットとはいえ、ルールは公道と同じように厳格に定められている。こうしたルールがあって始めて誰もが安全に楽しく車の能力と己の能力を最大限発揮して走る事ができるのだ。


車検も無事に全員通過し、今度は3周、マーシャルカーの後ろに着いて習熟走行をすることになった。

コースインして、まず目に飛び込むのが1コーナー。180°以上クルっと回りこむタイトなところを上手く切り抜けると、緩いS字コーナーがあり、そこを直線的にスルッと抜けていくと、第一ヘヤピンコーナーが待ち構えている。ここでは無理にアウトインアウトのラインを取らずに、インに上手く着いたまま、小さく回り込むのがポイントだ。ここを過ぎるとダンロップコーナーという中速コーナーがあり、軽くブレーキをチョンとかけて、無理なくスムーズに抜けていくと、次は第二ヘヤピンがある。ここでも姿勢を重視して飛び込み、後は脱出スピードを上手く稼ぐためにVの字を描くように脱出する。そして少し長い裏ストレートを抜けていくと、高速コーナーである最終コーナーが待っている。進入で上手く膨らまずに、しかししっかり速度を維持しながら抜けていくとホームストレートに戻り、一周となる。


マーシャルカーが付いてくれてたおかげで、走行ラインはかなりイメージが掴めた。全長2キロの比較的小さめなコースとはいえ、コーナーもバリエーション豊かで本当に面白い。


ユリもあれだけ弱気そうだったのに、実際に習熟走行を終えてみるや否や、


「アタシの手にかかれば絶対好タイム出せる気がしてきたわ!!」


なんて、いつもの調子に戻っていたし、莉緒も


「思ってたよりリラックスしていけそうだわ!あたしもいいタイム出すぞ!」


とウキウキしていた様子だった。


さて、この後は遂にフリー走行。思い切っていくぞ!!


続く。

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