第18話いざ筑波へ!? サーキット走行会その3

そして金曜の夕方、私はサーキット走行会に乗っていく車を借りに、志熊自動車まで莉緒の911の横に乗り、向かっていた。莉緒の911も、サーキット走行をするということでホイールは普段とは違うBBSのホイールにタイヤはミシュランのパイロットスポーツカップというやる気満々な足回りへと変更されていた。


「そういえばさ~どんな車を貸してくれるって言ってたの?その社長。」


「それが私もまだわからないのよねえ・・・どんな車が来るのかおっかなびっくりって感じよ。」


「あはは。でも、凛子ちゃん運転上手だしどんな車が来ても凄く速く走らせちゃいそうだし楽しみだなあって。実際、凛子ちゃんの運転してる様子を見るのも楽しみだったし。」


「そ、そんなことないよ。ただの素人だよ私・・・・・。まあ、言われて悪い気はしないけど。」


なんて、二人で他愛もない談笑をしていた。


関越道をしばらくひた走り、降りて下道を走り抜けると遂に店が見えてきた。駐車場に911を止め志熊社長に声をかけた。


「ごめんくださーい!社長、篠塚です~!!」


「おお~、リっちゃんきたか!オーケーオーケー! ちょっとついてきて!!・・・って隣の子、あの白洲莉緒さんじゃない!?」


「そうでーす!莉緒です!いつも凛子ちゃんからお話伺ってます!」


「いやあそうでしたか・・・・。大ファンなんです。こちらこそいつもナンデージャパン見させて頂いてます・・・・ってリっちゃん、一体どういうので繋がったの・・・?」


「え、なんで繋がったのかって・・・・・。まあ、私の勤めてる職場の駐車場でたまたま意気投合したってだけで・・・・それより社長、車の方。」


「ああ、そうだったそうだった・・・。まあ、奥まできなさい。


社長に言われるがまま、工場裏の方に行くとそこにはまた、すざまじいオーラを放った一台が佇んでいた。


そう、1990年代初頭、三菱が技術の域を注ぎ込んで生まれたスポーツカー、三菱GTOツインターボ後期型がそこにあったのだ。

基本の部分こそ、当時三菱自動車が販売していた高級セダン、ディアマンテのものがベースとなっているのだが、最高出力280馬力と、とても強い中低速トルクを発揮する3リッターV6ツインターボエンジンにドイツの名門メーカー、ゲトラグ社製の6速MT、フルタイム4WD、4WS、アクティブエアロシステム(後期型では廃止)などの当時最先端の技術を搭載することによって非常に高い走行性能を発揮するものになっていた。


どうやら今回借りることになった個体は結構チューニングも加えられているようで、ホイールはRAYS製のTE37、タイヤもハイグリップなアドバンネオバに履き替えられ、ブレーキもより大型のものに、そして内装もフルバケットシートが付いていたりステアリングも変えられていて文字通りの走り屋仕様になっていた。


ドシリとしたワイドなボディにペタンとした車高、全身に纏ったエアロパーツによってよりキリっとしたその風貌はまさしく、スポーツカーの名に相応しいものなのであった。




「ほれ、これ乗ってけよ。帰りガス満タンにして返してくれな。」


「はい!ありがとうございます・・・・ってまたこんな凄いの借りちゃって大丈夫なんですか!? 前のエボの時といいビビりまくりなんですが・・・・。」


「なあに。そんな気負う必要はないさ。この車も最近うちの常連さんが手放して下取りで入った車なんだけどさ。その人、かなりのサーキットランカーでこういう風に弄ってあったってわけさ。またうちで売りに出す前に多少モディファイも加えたんでせっかくならリっちゃんにテストドライブしてもらおうと思って。 これなら互いにWin-Winだろ?」


「ええまあそうならいいんですけど・・・・。」


いつも通り、こう贅沢な車を貸してくれるのは嬉しいけど、中々神経使うよな・・・。そんな事を考えながら志熊社長からキーを受け取った。


エンジンをかけてみる。セルモーターの音の後にエンジンに火が入る。ボボボボボという低い重低音が鳴り響いた。この車はライトチューン仕様でなんと450馬力までチューンナップされているようなのだが、その片鱗が排気音からも感じられた。また強化クラッチ特有のシャラシャラ音まで聞こえてきて、借り物とはいえ非常にテンションが上がってきた。


「じゃあ、社長行ってきます。」


「おう。まあ、楽しんで来いよ。」


莉緒とアイコンタクトを取った後、GTOと911はそのまま志熊自動車を後にした。


続く。


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