第16話 いざ筑波へ!? サーキット走行会その1

ある日の深夜の首都高C1でのこと。ホワイトのFK8型シビックタイプRと、イエローの991型911カレラSが二台で連なって駆け抜けていった。凛子はユリの運転するシビックの助手席に乗り、ユリにドライビングレッスンをし、莉緒はそれを後ろから必死になって追いかけていた。


「はい!そこでブレーキ踏んで!!戻して!コーナー出口に来たらジワッとアクセル踏みこみながらハンドルの舵角を小刻みにゆっくり戻して立ち上がる!!」


「わかってるって!!ふうふう・・・・・・。」


少し前から、ユリに頼みこまれてこうしてドライビングレッスンをするようになったのだが、ユリも段々と前ほどの粗削りさは無くなってきていて、かなり運転技術がレベルアップしてきた。


「よーし、とりあえず2周したし、とりあえず辰巳パーキングに戻って休憩入れるか。」


「・・・了解。」


辰巳第一パーキングエリアにアクセスし、シビックと911を並べて止めて、そのまま自販機で飲み物を買い飲みながら談笑した。 ユリは相当疲れていたらしく、シビックに寄りかかりながらスポーツドリンクをガブガブ飲んでいた。


「ユリもかなり上手くなってきてるじゃない。まだまだ車の動きがぎこちなくなる所はあるけど、正直初めて会った時と比べたらもう、全然別人レベルよ。」


「はあはあ・・・・ありがとう。アタシも凛子から教えてもらうようになって、前より車を上手く操れるようになってきたし、走りに行くのがもっと楽しくなってきたわ・・・・。」


「いーの、いーの。私だって教えるの好きだしさ。せっかく車で繋がった仲だもの。教えあいはどんどんしていかなきゃね。」


「いいなあ。あたしも今度レッスンよろしくね。」


「もちろんよ!莉緒も今度横に乗って色々教えるよ!」


なんて他愛もない会話をしていた。 その時、莉緒が「あっ、そうだ!」と言ってこう切り出してきた。


「そういえばさ、あたしの所属してる仲間内で今度筑波サーキットの走行会開くことになったんだけど、もしよかったら二人も一緒にこない? あ、料金はあたしが持つから安心して!」


筑波サーキット。車好きなら一度は聞いたことのあるフレーズではなかろうか。ある雑誌社やビデオマガジンが各メーカーの新車がリリースされる度に、ここでタイムアタックを行い性能評価をしてきたことでも有名だ。特にコース2000と言われる本コースはタイトなヘアピンから、高速コーナーまでバラエティに富んだ要素が散りばめられていて、車のトータルバランスがわかりやすく表れるという。首都圏からアクセスしやすい立地にある上、前述した魅力が人気を呼んで、なかなか貸切ることは難しいらしいのだが、そんな場所を押さえてしまう、莉緒と莉緒の仲間たち、流石だ(?)



「え・・・・別にいいけど、そんなところお邪魔しちゃっていいの? 莉緒のお知り合いさんとかの迷惑にならないならいいけど・・・・。しかもタダで。」


「そこに関しては問題ないわ!私の仲間はみんなフレンドリーな方々ばかりだもの。 決して弾いたりしないから安心して!」


「んん~。ちょっと悩むけど行ってみようかなあ・・・・あ、でも車はどうしよう。パジェロでも行けなくはないけど流石に・・・(笑) 志熊社長になんか借りれるか相談してみようかなあ。ユリはどうする?」


「アタシはどっちかっていうと走り屋だし公道派なんだけど・・・・でもちょっと興味あるしついていこうかしら。凛子も行くみたいだし・・・・。ほんとにちょっとだけだけど。」


「よかったあ。二人とも思い切って誘ってみてよかった!!あ、日程は来週の土曜ね!詳しいことはあとでまたグルチャにでも投げておくから。じゃ、あたしは明日朝早いからここらで!それじゃ!!」


そう言って莉緒は911に乗り込んで、そのまま飛ぶように帰ってしまった。


「じゃ、アタシらもぼちぼち帰りますか。」


とユリが言ったので私とユリもちょっとしてからパーキングエリアを後にした。


シビックの助手席に座って都心の景色を眺めていると、ユリが話を振ってきた。


「ねえ、そういえば凛子ってサーキット走った経験あるの?」


「うーん・・・まあ、あるよ。大学時代、ミラージュ乗ってた時に自動車部の集まりで本庄サーキットとか走ったことならあるけど。」


「そうなんだあ・・・・。アタシ、さっきも言ったけど本当にサーキットとかああいうとこ全く経験ないからさ。多分知らない人もいっぱいであたふたしちゃうだろうし・・・。当日、わからない事とかあったらまた教えてほしいな、って。」


「そりゃ、もちのロンよ。って言っても、私もラリー畑の人間だからあまりサーキットの事は詳しいわけじゃないけどね。 ま、多分当日座学もあるだろうしどうにかなるって。」



そっかあ・・・でもまあ、ありがとう。とユリは穏やかにニコッとした顔をして答えた。


「あ、当日莉緒にお土産かなんか渡しとくか。手ぶらじゃちょっと気が引けるし。」


「そうね・・・・流石にここまでやってもらって何もないのもあれだしね・・・。」


私も車どうにか手配しないとな~なんて、私はユリに自宅まで送ってもらいながらぼんやり考えに耽っていたのだった。


続く。





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