第15話 NXCDにチャレンジ!!後編
上のクラスの番が終わり、もうすぐ二走目が始まる。私はまたパジェロエボの元へと戻り軽く点検をして気を紛らわせていた。とりあえず、車はまだまだ平気そうだ。
・・・・後は私が万全にならないと。 とりあえずまた深呼吸をしてコーヒーを飲み、気分を落ち着かせてから、私はヘルメットを被ってグローブをはめて運転席に座った。緊張はすれど、やはりこの場所は凄く気分が落ち着くし、同時になんだか攻め切る勇気が湧いてくる。
次こそは・・・・次こそはもっといい走りをしてやるぞ。ね、私のパジェロエボ。
目の前の車がスタートし、いよいよ出番が近づいてきた。 目を瞑ってゆっくりと瞼を開ける。視界が晴れてきた気がする。
前の番の車がゴールインした。私はスターターの指示に従って、車のエンジンに火を入れ、ギアを1速に入れ、スタートラインまでパジェロエボを進める。
はーい、それじゃあ5秒前のカウントはじめまーす!!という声が聞こえてきた。
「っししゃああ!! 行くよパジェロエボ!!」
私は車内で叫んだ。 そしてアクセルを煽って4~5000回転でキープし、スタートダッシュに備える。
「4、3、2、1・・・スタート!!」
フラッグが振り下ろされると同時に、クラッチを上手くミートし、アクセル全開でスタートダッシュを決めた! 1走目以上に素早く発信できた気がする。そのままメインストレートはアクセル全開で駆け抜け、一コーナーへ。素早くヒールアンドトーを決めながら減速し、上手くテールを滑らせながら、あっという間に抜けていった。さっきよりもずっと呼吸が合ってきた気がする。アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルをダンスステップを踏むようにスムーズに決め、ステアリングもそれに合わせて鮮やかにさばき、コーナー群を舐めるようにすざまじい勢いで駆け抜けていった。
他の選手や観客はそのあまりに迫力のある走りに圧倒され、あらゆるところから「あれ本当にNクラスかよ・・・・。」「しかもルーキーだぜ・・・・。」なんて声が聞かれたらしい。
コースももう半分を走り切り、ラストスパートを掛けに、私は更にヒートアップしていた。
問題は例のタイトターンするポイントだ。 今度は成功するといいが。
いよいよ、そのポイントに差し掛かり、突っ込み過ぎないように頭の中でカウントしながらブレーキングをして向きを変えた。
3・・・2・・・1・・・今だ!! 素早くブレーキングをし、荷重をフロントに上手く移動させながら、私はターンインした。その瞬間、リアがフッと流れる。ステアリング操作と素早いアクセルコントロールでパジェロエボのトラクション性能をフルに引き出し、脱兎の如く、スムーズに立ち上がった。
「やったああ!!」
そう叫びながらも、後のコーナーも無駄なくキッチリ駆け抜け、ゴールに駆け込んだ・・・・!!!
目の前の電光掲示板を見ると、信じられないようなタイムが表示されていた。
「1分・・・31秒80!?!?!?」
なんと上位クラスのPNクラスにも肩を並べようとするような勢いのタイムなのであった。
私は興奮しすぎて、パジェロエボのなかで、やったああああああ!!!と叫びながら腕を思いきり上げてしまった。
パドックに戻ると、涼も心底びっくりしたような顔をして出迎えてくれた。
腕を大きく振り上げるような激しい握手をしながら、涼が健闘を称えてくれた。
「おめでとおおお!! 凛子凄すぎるよ!!! 感動しちゃったよ・・・」
「ありがとう・・・私も全身全霊で走ったよ・・・・。腰痛い。」
「あははは。でも、あれだけ強烈な走りはアタシ久しぶりに見たよ・・・・アタシも思いきりいってこなきゃ。」
「うん! アタシだって負ける気はないよ!!」
その後、涼が二走目にいったが、遂に凛子のタイムが破られることはなかった。
なんと私はNXCDに初めて参戦した(スポット参戦ではあるが)のにも関わらず、いきなりクラス優勝を飾ってしまったのだった。(ちなみに涼はクラス2位だった。)
表彰式では久しぶりにてっぺんに登り、優勝カップや、優勝賞品のブレーキパッド1台セット分無料券を頂いた。
その後、色々なエントラントに質問攻めにあったりもした。正直、結構嬉しかった。
その後、私は片付けをし、お疲れ様、と涼に一声掛けてから帰路に着いた。
凛子が去った後、RADIUSのエンジニアは涼にこう話しかけた。
「なあ、涼。あの人一体何者なんだ・・・?」
「篠塚凛子さんよ。・・・・・・アタシの、もう一つの目標みたいな人よ。」
涼はどこか遠くを見つめながらそう言った。
家に帰って一人でプチ祝賀会をやりながら、私は次戦のNXCDにまた参戦しよう、そう思った。ずっと大好きな車と、競技に出る楽しさに凛子はまた目覚めてしまったのであった。
そしてこのNXCDという競技をキッカケに、凛子の運命はまた少しずつ動き出すことになったのであった。
続く。
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