第13話 朕の覚悟と頼み



シグマを家に匿ってから3日が経った。

あの石投げをした日に何か伝えようとしていたが、シグマは一体何を言いたかったんだ?

誰かを助かるとかなんとか、、、マリアの登場によって無かったことになってしまったが、

超気になる。けど自分から聞くのも変な感じだしなぁ。シグマが話してくれるのを待っているが、いつになる事やら、、、



そんな事を考えながら外から家に戻るとシグマの怒鳴り声がお出迎えしてくれた。



「友よ!また要らないものを拾ってきてどうするつもりなのだ!!」



俺の両手に抱えられた拾い物を見るや否やシグマは

厳しい目を向けて俺を非難してきた。



「い、要らなくないし!要るし!」



「木の枝は薪になるから良いとして、その不気味なオーラを放つ人形にクマ魔獣の木彫りの置物は絶対に必要ないのだ!!これ以上家に変な物を置くのをやめるのだ!」



「なっ!別に良いだろう!!木彫り置物とかカッコいいじゃん!!こ、この人形だって、道でなんか

「拾ってぇ」って可哀想な声が聴こえてほっとけなかったんだよ」



「カッコ良くないのだ!邪魔なのだ!!この家ほ置物が多すぎなのだ!処分しろなのだ!後その人形は多分呪われてるからの所にお供えしてくるのだ!!」



「なんだよ!お母さんかよお前!!

俺の家なんだら良いじゃん!もっと置かせてよ!

博物館開けるくらい置物も人形も拾わせてよ!!」



「友が変な物を拾ってくるのを辞めるなら友の母上にでもなるのだ!!普通の物ならまだしも、毎日毎日いわく付きのものを持って来られるちんの気持ちを考えるのだ!」



「そうですわ!そうですわ!あなた拾い物を自粛なさいな!!」



シグマの言葉にソファでくつろいでいたマリアが便乗してきた。くそぅマリアめ!!好きあらば遊び《プロレス》を仕掛けて来やがって!!



しかし今回はマリアの思惑通りに行かず、シグマの怒りの矛先はマリアの方に向いてしまったのである。



「そう言うマリア嬢はもっと常識を学ぶのだ!!森のど真ん中焚き火を始めて火事になりかけたり、洗濯物を擦り過ぎてボロ切れにしたり!!拾い物の置物から出て来た悪魔を家の中で退治して部屋をめちゃくちゃにしたり!!"球"が黒いモヤを吸い込まなかったら部屋が大変な事になっていたのだ!大人しくするのだ!!そんなのだから帝国で王国の暴れ馬とか言われてしまうのだ!」



まぁマリアさんだしなぁ。シグマよ大人しくとか

無理だから、早めに諦めたほうが逆に楽しめるぞ!



「このわたくしに意見するとはシグマも偉くなりましたわね。この家の上下関係を教えて差し上げますわ!お覚悟っ!!」



「やっ!止めるのだ!縦ロール《ドリル》で突くのは止めるのだ!!」



「オーホッホッホ!ならば私に今後は逆らわない事ですわ!」



「負けないのだ!朕はこの悪逆非道の令嬢から家を守って見せるのだ!」



目の前に広がる置物パークを背に、少し涙を目に浮かべながらシグマはいつの間にかマリアと遊ん《プロレス》でいた。シグマお前、この家になんだか馴染んだなぁ、、、。



「見てないで友も加勢するのだ!過去の遺恨は今は捨て手を取り合って悪の星を倒すのだ!!」



「ガッテン承知!!」



「例え束になろうとも私には敵いませんわ!!」



こうやって3人でワイワイして、二人してマリアにボコボコにやられて、笑って楽しく暮らすのも悪くない。俺は心の中でそう思っていたが、シグマの時折見せる影の差した顔がやっぱり気になって仕方なかった。



シグマは少しナイーブだからそっとしておいてみたけどもう我慢できん!!俺は聞くぞ!!



「シグマ!お前、はな」



「友にマリアよ、、、。朕から二人に聞いて欲しいことがあるのだ」



「あ、うん」



俺の声を遮ってシグマが遂に自分の事を話し出した。なんでやねん!こっちのなけなしの勇気を返して!



「フッ 今更ですの?随分待たされましたわね」



「ようやく朕も覚悟が決まったのだ」



「待ちくたびれてしまたわ。それでは聞かせて頂きましょうか?シグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードランが出した答えを、、、」



いや、二人でかっこいい雰囲気出すのは良いんだけどさ?俺の心は地獄だよ?

あとマリアさんシグマの長い方の名前覚えてたんだ。すごいなぁ



「あなたも!いつまでもぼーっとしてないでしっかりシグマの話を聴きますわよ!」



「はいはい、わかったよ。それじゃシグマ、聞かせてくれよ?」



マリアの一喝で我にかえり、顔をしっかりとシグマに向けてその口から出てくる言葉を待つ。一瞬目を伏せたシグマはもう一度覚悟を決めたのか拳を握り締めてこちらをしっかりと向いて話し出した。



「朕はプレス帝国から逃げる際にある人の協力を借りてこの国にきたのだ。その人は長い間ずっと帝国の闇」



「一人で逃げてきた訳ではありませんでしたか。しかしてその人とは?」



「現皇帝の父上。その兄のベルタ叔父上なのだ!」



「ですのっ!?」



どうやらベルタ叔父上なる人がシグマを帝国から逃してくれたみたいだった。ん?でも皇帝って親族を皆殺しにしたとか何とか話がなかったか??



「帝国の皇帝って親族を皆殺しにするのが基本みたいな事を聞いたが?」



「そうなのだ。それが当たり前でありルールでもあるのだ。叔父上は帝国のそのルールを嫌い早くのうちに継承権を放棄して、自分の力を使って帝国のルールを変えようと尽力していたのだ。兄弟が皇帝の座を求めて殺し合いをしない様に、血塗られた歴史を終わらせるために立ち回っていたのだ。父上はその優しさを今でも覚えていると言っていたのだ」



「そうですの、、、」



「しかし前皇帝がそれを良しとせず、叔父上に公務を与え遠くに飛ばしたのだ。それをきっかけに皇帝の座を巡り争いが起き、父上が勝利したのだ。父上は親族を皆殺にしたあと、唯一自分を害さなかった叔父上だけは生かしたのだ。けれど叔父上は父上が親族を皆殺しにした事を悲しみ、諭してしまった。その事で父上は激怒して叔父上を宮殿に幽閉したのだ。」



叔父上めちゃくちゃハードな人生じゃん、、、

争い事が嫌いだったのか、俺が叔父上でも継承権なんざ放棄して帝国から逃げ出す。それを他の兄弟の事も考えて動くとか凄過ぎじゃん。



「朕は幼い頃から叔父上が幽閉されていた宮殿で育てられ叔父上に関わる事も他の兄弟より多かったのだ。叔父上と関わり朕もこの帝国が嫌になったのだ。でも朕は勇気がなくて叔父上のように帝国を変えるぞと動く事ができなかった。叔父上はそれでも良いと川から王国に逃げれるルートを朕に教え、逃走の段取りまでしてくれたのだ」



そうか、シグマが皇帝の直系の割にトゲがなく、変に素直なのはその叔父さんとの交流のおかげって訳か。



「なるほど。そんな人なら助けてあげたいと思うのが人情だろうな。けどなシグマ、助けた後の事はどうするつもりなんだ?帝国の兄帝なら絶対に皇帝は追ってを放つ。下手すれば殺されるぞ?」



そう言うとシグマは痛いところを疲れたように目を下げた。激烈な皇帝の事だから今度は幽閉なんて甘い処罰じゃ終わらないだろう。



「わかっているのだ。だから朕は一人でどうにかしようと思っていたのだ。けど、この短い間に朕は友とマリアに確かに絆のような物を感じたのだ。

だ、たからお願いがあるのだ!!一緒に着いてきてほしいのだ!!協力してほしいのだ!!朕は帝国を変えたい!!必ず変えてみせる!!だから助けてほしいのだ!!」



「シグマ、私たちがそれを断わった時は貴方どうしますの?」



マリアが少し厳しい声をシグマに向けて、何かを見定めるように質問した。



「朕は一人で行くのだ。覚悟はもうできたのだ。

2人と出会って、過ごして、何が大切なのかを改めて朕は思い知ったのだ。何気ない平穏な日々を過ごせる国にしたい。皇帝の威にいつも怯えながら民が暮らす国を許しておかないのだ!朕は自分の生まれから、責任から逃げないのだ!例え失敗して殺されたとしても朕の意志はきっと残る。深紅の証明ブラッドプライドに誓うのだ、シグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードランは命を賭けてベルタ叔父上を救い、皇帝を、、父上を倒し、帝国を変えるのだ!!」



おいおい、皇帝を倒すって、、、無茶言うぜ。

皇帝を倒して国を変えるか。叔父さんを助ける所から随分と大きくなったもんだぜ、、、。

なんだよ、シグマお前かっこいいじゃねーか!!



「良く言いましたわ!!その言葉を私待っていましたのよ!!初めて会った貴方はそれは情けない顔をしていましたが良い顔をする様になりましたわね!!もちろん力を貸しましょう!!マリア・ル バンティスの全てをシグマに貸してあげますわ!!」



マリアは満足げにうんうんと頷きながらシグマの肩をバンバンと叩いていた。力強いぞマリア。シグマがだんだん前のめりになってるぞ?



「ありがとうマリア。と、友はその、、、

朕と共に来てはくれないだろうか?」



「俺か?なぁシグマ、俺はマリアみたいに力は無いし役に立たないぜ?それでもいてほしいのか?」



「力とかそんなのじゃなく、友には見ていてほしいのだ。朕に初めて出来た友達だから、朕の決めた道を、進む道を。あの日寄り添ってくれた友に朕を!」



「そっか。全くよ、とんでもない奴をまた拾っちまったぜ!命がやばくなったら俺は1番に逃げるからな!!」



「全くあなたも素直じゃないですわ」



「ありがとうなのだ。2人ともありがとうなのだ」



シグマは少し涙声で恥ずかしいのか俯きながら俺達にお礼の言葉を口にしていた。初めて出会った頃の少し生意気な感じが懐かしいぜ。イケメンってのは泣いても絵になるのがなんかムカつくけどな!



「良し!とにかく叔父さんを助けて皇帝を倒すなら早い方が良いが、どう動く?相手は大国だし作戦を考えないといけないぞ?」



「そんなの簡単ですわ」



「マリア、何か良い作戦があるのだ?」



待て待て待て、嫌な予感がする。嫌な予感しかしない!!このマリアの自信満々のパターンはきっとロクでもない事を言うぞ!



「奇襲ですわ!正々堂々正面突破ですわ!」



「それ奇襲って言わないから!」



そうして打倒プレス帝国の作戦は始まっていったのである。








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