第11話 強過ぎた令嬢と弱かった朕



「や、やめるのだ!!顔はやめるだ!!

えぇい!面妖な生き物め!!朕を誰と心得ておる!!」




家の中で叫ぶちんの様子を見るために

家の中に戻ってみると、オモチャだと思い面白がっているのか、ネーコがバシバシと朕の顔を猫パンチしていた。顔は辞めてあげなさいネーコ。ボディにしなさい。



「きっ!貴様らか!!ちっ朕をこの様にしたのは!!自分達が何をしているのかわかってあるのか!?早ぅ縄をとかぬか!!」



「ご機嫌よう!!わたくしは公爵家当主であり世界の至宝。そしてこの家の主!!マリア・バンティスですわ!」



「マリア・バンティス、、、王国の暴れ馬の名前ではないか!!き、貴様!!朕をどうする気だ!!」



暴れ馬って、、、その通りだな。

帝国にも名が轟いてるとか、何してきたんだ

マリアは?



「私は名乗りましたわ。帝国の皇子とお見受けしますが、挨拶もろくに出来ないとは、、、。帝国と大きく名乗っているだけで大した事は無さそうですわ」



「ぐぬぬぬぅ」



マリアと朕は向かい合いながら睨み合いを続けていた。え?マリアが仕切るの?

しかも公爵家の至宝から世界の至宝にレベルアップしてるし。てか、どさくさに紛れてこの家の主とかふざけんな!!俺の家だぞ!!



「さぁ!帝国の意地を見せてご覧なさい!!さぁ!!」



「ち、朕はプレス帝国ロードラン皇帝の第3皇子、シグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードランである!!」



「なるほど、それではシグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードラン!!貴方程の身分の者が何故帝国から王国に?」



「そ、それは、、、そんな事より早ぅ縄をといてくれ!!この縄が動けば動くほど朕を縛り上げてくるのだ!痛いのは嫌いなのだ!」



「それはシグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードラン、貴方が私の質問に答えてからですわ!!もしや王国に侵略を!?答えぬと言うなら身体に聴くしかありませんわよ!!」



「い、痛いのは嫌なのだ!!」




マリアは片足を上げ謎のポーズでシグマ・マルティスティン・ぱみ、ら、、??ええいっ長いわ!!

シグマを脅していた。しかしマリアの話を聞いて皇子にビビっていたが、あの感じ、、、シグマちょっと泣いてない??



「ち、朕は嫌になったのだ!!血生臭い宮殿も、王座を争い憎み殺し合う兄弟も!!何よりも人の命を何とも思わぬ皇帝が、、父上が嫌になったのだ!!逃げてきたのだ!!」



「もっとまともな嘘をついたら如何ですの!?

帝国の皇子と言えば凶暴そのものと聞きますわ!!私を油断させて縄をとかせて襲う魂胆でしょうか、そうは問屋がおろしませんわ!!ネーコおやりなさい!!」



「ほ、本当なのだ!いだっ!顔はやめるのだ!!

やめるのだ!!!」



側から見るといじめっ子といじめられっ子を見ている様で何だかいたたまれなくなってきた。

多分シグマは話に聞くような皇子とは違うように思える。マリアやカール王太子を見てきたが、本当に高貴な人は何があっても最後の一線は誇り高くあろうとしていた。シグマにはそれが無い、様に見える。



「しゃーなしだな、、、」



「ちょっ!あなたまだ私のターンは終わってねぇですわ!!」



「そう言うなよマリア。多分このシグマ皇子はマリアやカール王太子とは違う。どっちかと言えば多分俺側だ。だからほどいてやっても良いだろ?責任は俺が持つよ」



「むぅぅぅ、、これからでしたのに!!何かあったら串焼きを焼く当番をずっとやってもらいますからね!!」



そう言うとマリアはそっぽをプイと向いてしまった。おいおい、串焼き毎回焼いてるの俺じゃん。



「うちの暴れ馬が悪い事したな。大丈夫か?」



「大丈夫では無いが助かったのである。あの悪魔のような縦ロールドリルを救ってもらった恩は返すのである。朕は今は持ち合わせがないのでな。この指輪を渡そう」



シグマはそっと指輪を外し俺に差し出した。

マリアが「誰がドリルですか!不快ですわ!不敬ですわ!ギルティですわ!」とドタドタしていた。

シグマ君が怯えちゃったでしょ!そのドリル仕舞いなさい!!



しかし、指輪を渡そうとしたシグマは今の情けない姿とは打って変わって、マリアに似た高貴なオーラが出ていた。なんだこいつ、、、何かアンバランスだな??



「指輪は良いよ、それより話を詳しく聴かせてもらっても良いか?」



「う、うむ。話すのだ、聞いてほしいのだ、、」



そうして聞いた話をざっくりまとめると

・皇帝が無意味に国民の命取りすぎて見てられない

・他国に対しての宥和ゆうわ政策を提案したら軟弱者として殺されかける

・兄弟親族が王座をかけた殺し合いをやめない

・力だけが正義の帝国の性質が辛い

・王座は放棄したいのに放棄するなら死ねと殺されそうになり、王座を狙っても放棄しても死にそうなので逃げた



と言う事だった。話し方や考え方言葉の柔らかさを聞けばわかる。シグマは根本的に帝国に向いていない。王国の王太子として生まれたら良い感じに暮らせたかも知れないな。正直そんな国の皇子に生まれちまったのは同情するぜ。「それは大変だったな、とりあえず追いつくまでこの家でゆっくりしていけよ」とシグマに声をかけて時



「軟弱ですわ!!貴方の考え方は優しく立派ですけれど、それを口にするのは誰にでも出来ますわ!

しかし行うは難し!!政治や改革を行うには高い身分が必要な事もあるのです!その身分を持ちながら戦わず逃げるなんて、、、持つべき者として恥ずかしいですわ!!」



とマリアがその激しい口を開いた。



「おっ、おい!マリア言い過ぎだぞ!!」



「いいえ、あえて厳しく言いますわ。シグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードラン。悪逆非道な皇帝一家から目を逸らし、殺されていく国民からも目を逸らし、貴方は全てを捨ててこの国に来たつもりなのでしょう」



「そ、そうだ!朕は全てを捨ててこの国に逃げてきたのだ!!」



目を瞑りシグマを責めるように淡々と言葉を紡ぐ。

俺が知らない公爵家としてのマリア・バンティスの姿が、人の上に立つ者の姿がそこにあった。



「ならば何故その名を名乗ったのです?

名を聞かれても唯のシグマと名乗ればよろしかったでしょう。そうして事情を話してくれれば、私も優しく迎え入れたでしょう。大変でしたねと、貴方には荷が重かったですねと」



「!?」



「つまり、どう言う事なんだマリア?」



「シグマ・マルティスティン・パミラミ・ガナバヤタバサ・ロードラン。貴方はまだ諦めきれていないはずですわ。国民の命も、皇子としての誇りも。

その臆病さと優しさで覆われ隠れてしまった

勇気ブラッドプライドは今、貴方の中でくすぶっている筈です!そうでなければ貴方の様な臆病な人間は、わざわざその名を自分から名乗らない筈ですわ!!

答えなさい!!貴方はどうしたいのです!?」



「ち、朕は、、、朕は、、、」



ダッ!!



「あっ!待てシグマ!!どこに行く気だ!」



マリアの厳しい言葉に耐えられなかったのか、シグマは家を勢いよく飛び出して行った。あーあ、、、ちょっと厳し過ぎやしませんか?マリアさん。

大体、先に「帝国の皇子だと思うけど、名前くらい言わんかい!!」ってふっかけたのマリアじゃん。



「あの方は人に同情される事で、その大いなる名前を捨てようとしていました。自分で捨てるならいざ知らず。誰かに委ねるのは許せないですわ」



「そうなのか?」



「そうなんですの。レペゼンスライムにもあるでしょう? 矜持というやつですわ。

すいませんがあの方の事、、、お願いしますわ」



「矜持か、、、なるとほど。それでも言い過ぎだけどな!!繊細な子なんだから優しくしてあげなさいスパルタめ!!まぁ任せとよ。シグマは俺寄りだ。上手いことフォローしてやる」



「まったくあなたは、、、一言多いですわ!!

よろしく頼みましたよ。あの方がどうするのか、私少し興味があります」



マリアの考えを聞き俺はシグマが走り去った方へ向かった。名前か、、、。スライム育ちじゃその名前の重さはわからないけど、矜持があるのはわかる。

それを自分で捨てるのではなく、誰かに手伝ってもらって捨てるのがマリアは許せなかったようだ。



強いマリアらしいといえば、らしいけどな。

反対に俺は誰かに手伝ってもらってもいいと思ってる。本当に身動きが取れないのを自覚してお願いするのも、また強さだろ??

シグマはそれを自覚してなかったのが良くなかった、、。だからそれをシグマに伝えてやろう。

考え方なんて人の数あるんだから。自分なりの強さを見つければ良いってな!






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ここまでお読みいただきありがとうございます!

いよいよ第二章が始まりました!!

強過ぎたお嬢のあとは脆さのある皇子です!!

どうなっていくのか!!私も描きながらキャラが動くので先が分からずワクワクです!!


この前ランキング1400位と言ってましたがなんか

900位くらいまでなってました!!凄い!

皆様のお陰です!ありがとうございます!!



モチベになりますので、ハートや星、コメントやレビューの書き込みなどよかったらお願いします!

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