第8話 一件落着とサヨナラ令嬢
カール王太子の怒号と共に聖女ベディーに魅了されていた騎士や宮廷魔術師神官などが俺たちを囲ったが、マリアは怯む事なくドリルとその鋼の肉体を駆使し脅威を跳ね除けていた。一方俺の方は啖呵は切ったものの、戦闘力は少しだけ強い一般人であり
王宮勤めのエリート達に太刀打ち出来るわけもなくマリアの背中を守る事に専念していた。
「はんっ!!あれほどの口を叩いて女の後ろに引っ付いているだけとは情けのない愚図だな!!」
「うるせー!!ちょっと気にしてるんだから言うのやめろ!!」
「貴様の様なゴミは無様に散るのがお似合いだぞ!"大地よ力を示せ"!!」
「うおっ!?」
カール王太子が魔術を発動し、展開した魔法陣によって足元の地面が崩れて体勢を上手く保てなくなる。王太子のくせに狡い魔術使いやがって!!
性格の悪さでてるぞ!!
「なめるなぁ!!」
日々のギルドの雑務で鍛え上げられた体幹でなんとかバランスをとって、敵からの攻撃を防いだがこれは長く続けれない。どうにかしねぇーとなと考えていると、ふと魅了された人達がバランスを崩し何人かが転倒しているのが目についた。
これ幸いと剣の柄や蹴りをお見舞いして気絶してもらったが、魅了された人は軽い混乱状態であまり物事に対応する力がないのかもしれない、、、。
ここに逆転の目がアリと見た!!!
「おーいおいおい、、、。王太子ともあろうお人がご自慢の魔術でゴミで愚図の平民すら倒せないなんて情けのうございやすねーw」
「き、貴様!!」
「あれー??もしかして今のが精一杯でした??
え!?嘘でしょ!?嫌だなーこんなしょぼい事しか出来ない奴が未来の王様とか俺嫌だなーw」
「ゆ、許さぬぞ、許さぬぞゴミ風情が!!」
掛かった!!こいつは少しの事でプッツンしてしまうプライドの高いやつみたいだな。扱いやすくて助かるぜ!!
「這いつくばらせてやるぞ愚民!!
"大地よその大いなる力をここに解放せよ"!!」
「今だ!!マリアさんヘルプ!!!」
「何か策を講じていると思えば、、、。
カール皇太子の魔術が発動するその瞬間にマリアに合図し魔術によって隆起する地面からマリアと抱きかかえてもらい上に逃れた。俺の思惑通りに魅了されている人達は魔術に巻き込まれほぼ全て人がダウンしたのであった。
「作戦通りだせ」
マリアに地面に着地してもらい、未だかつて無いほどの"ドヤ顔"で王太子を挑発してやった。
戦いはクールなやつが最後に勝つんだよ。
「ぐぅ、、、なぜだ、、、なぜなんだ!!」
「それが分からないから王太子殿下、あなたは私に勝てもしないし隣にも並べないのですわ」
「うるさい!うるさいうるさい!!バンティス!!貴様だけはここで殺してみせるぞ!!」
「決着をつける時ですわ!!」
向き合ったマリアとカール王太子が激突した。
お互いに武術を展開して一進一退の攻防をくりひろげる。
「なんだよ王太子、マリアとタイマンできるくらい強いのかよ、、、。」
すぐに終わると思っていた戦いだが、意外なほど王太子は粘っていた。男としての意地と王族のプライドがその実力を何倍にも跳ね上げているのか??
「俺様は負けんぞ!!お前にだけは負けんぞ!!
俺様は王族なのだ!!負けるわけにはいかぬのだ!!」
「カール王太子殿下、、、。そのお心が曲がらなければ貴方は立派な方になれたはずですわ。私のせいで曲がったと言うのなら、今ここで叩き直すのが私の使命ですわ!!でぇーーすぅーーわぁーー!!」
永遠に続くかに思われた強烈なラッシュの叩き込み合はマリアの捻りを効かせた拳の一撃によって幕を閉じた。王太子は体の全てが限界の様で、フラつき今にも倒れそうに見える。
「俺様はまたお前に負けるのか」
「そうですわね。けれどカール王太子殿下、、
ラッシュの時に私は感じましたわ。貴方の思いと努力と誇りを。今回は間違えた道を行ってしまいましたが、やり直せるはずですわ。貴方はきっと良い王になれる。誰が何と言おうとも、マリア・バンティスがカール・ベルトその人を認めますわ!!」
「認めるだと??フッ、、公爵家のくせに生意気だ、、、ぞ、、、」
そう言うとカール王太子は崩れる様に力尽きた。
力尽きたその顔はどこか晴れやかで憎しみに曇っていたさっきまでと打って変わっている様に見えた。マリアの「認める」と言う言葉が胸に響いたのかもしれないな。
「あーあ、、、出来損ないの王太子がやられちゃった。」
「!?」
全てが終わったと思い込んでいたが、まだコイツがいるんだった!!現聖女にして男を魅了して操る力を持つこの女が!!
「せっかく殿下の劣等感を煽って煽ってマリアを追放したのに、そこの冴えない男を連れて戻って来ちゃうんですもの。嫌になるわ」
「やはり殿下も貴方が操っていたのですね。
殿下はあの様な曲がり方をするお方ではなかった筈ですわ!!」
「まぁ、そうですけど。半分はちゃーん貴女のせいでもあるのよ??貴女が完璧すぎて殿下はどこに行っても針のむしろだった。だから教えてあげたのよ?マリアを消せば全てが解決するって。魅了を掛けながら洗脳したらコロッと落ちたのよ??アハハハッ」
「この卑怯者!!ベティー貴方だけは許しませんわ!!」
「アハハハッ怖ーい!!貴方を倒すのは大変そうね??でもちょうど良いのがそこに居るわ」
俺が何だこの胸糞悪い女はと話を聞きながしている時に丁度、ベティーはこちらを指差した。
ん?おれ?
「あのマリアがワンちゃんを飼うなんてねぇ??
小汚いけど大事にしてるみたいじゃない???そいつを洗脳して貴方と戦わせてあげる。そのワンちゃんが死ぬまでね」
「貴方と言う人は!!どこまで!!」
「アハハハアハハハッ!!さぁ私のものになりなさい!!」
ベティーは手のひらを俺に向けその手から赤い波動を放った。波動は蜃気楼のように空間を歪め、俺の周りを囲った。
「あ、あなた!気をしっかり持つのですわ!!」
「アハハハッ!無駄無駄!さっきは弱い術で効かなかったから、とっておきの術をかけたわ!王様も王太子も耐えられなかったんだから、ワンちゃんに耐えられるわけないじゃない!!さぁこっちにおいで」
俺は深い事は考えず、ベティーに呼ばれ自然と体がそちらへ向かった。一歩一歩しっかりとした足取りで何の問題もなくベティーの側に着いた。
「なんてことですの、、、。私はどうすれば」
「その顔最高に素敵ねマリア!もっとゆがましてあげる!!さぁワンちゃんあの女の顔をもっと歪ませて!!」
「顔が歪むのはお前じゃーーい!!!」
「「え!?」」
なんの躊躇いもなくグーパンを再びベディーの顔面に叩きつける。あんだけ油断してくれれば俺だって隙をついて攻撃くらいできるぜ。あんまワンちゃん舐めんなよ!!
「な、なんで私の魅了??」
「お前みたいな性悪女に誰が引っかかるかよ!!
反省しやがれ!!スラムパンチ!!」
「きぁぁぁあ?!」
生きるために何でもやったスラム時代に編み出したスラムパンチは男女平等、相手は死ぬ!!
スラムパンチをモロに食らったベディーは呆気に取られながら気絶した。
「ふぅ、、、。なんとか片付いたな。王様は王太子の魔術に巻き込まれてなんか気絶してるし、一件落着だな!!」
「まったく、あなたを簀巻きにして連れてきて正解でしたわ。ありがとう、あとは私にお任せなさい。」
マリアと今後のことを少し話していると騒ぎを聞きつけた女王陛下が現れ、その場を一旦収めてくれた。そうして俺は何度かの尋問?質問?に答え解放された。
世間話に尋問官に「マリアはこの後どうなるのか?」と聞いた所、魅了のせいで不当に追放された身であるため公爵家の人間に戻るだろうとの事だった。こうして俺とマリアのプチクーデターは成功に終わった。
3ヶ月という長い様で短い付き合いだったが、いざ家に帰ってくるとマリア居ないだけで随分と寂しく感じるものた。色々あってほんとに疲れたぜ。
しばらく家を空けていたのでネコのネーコも心配してくれたのか今日は一緒のベットで眠ってくれる様だ。ネーコしゅきしゅき。
森で拾った行き倒れ公爵令嬢は自分の居場所へと帰って、俺は自分の居場所で眠りにつくのだった。
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