第7話 追放令嬢と王城襲撃




「いやー!離して!!処刑されちゃう!!今度こそ処刑されちゃう!!」




「いい加減往生しやがれですわ!!さっきまでの立派なあなたは何処へいったのですか!?ほら、王族に文句言いに行きますわよ!!」




「いやだ!!許して!!文句とか無いから!!税金下げてとか戦争二度とするなとか、よくある方しか言う事ないから!!」




「ならもうそれで良いですわ!!とにかく行きますよ!!ふんっ!!」




興奮するマリアに抵抗虚しく牢屋にあった布で簀巻きにされ担がれてしまった。もうお嫁に行けない、、。「お嫁に行けないならわたくしの侍女として雇ってやりますわ」とかほざいてるマリアは物凄い速度で王城へ向かっていた。武術凄すぎね??所謂身体強化の術が並の練度じゃ無いんだよなコイツ。魔術の方は野党をズタボロにする位には使えるみたいだしほんとスペックだけは凄い。あんぽんたんだけど。




「いま不敬なことを考えましたわね!!この公爵家の誇りドリルに触れている限り私に隠し事は出来ませんわよ!!」




「あのー、普通に心読むのやめてもらっていいですか」




打撃で壁も破壊できるし、心も読めるし、物も掴める。何なんだろうこの髪の毛、、、。公爵家の誇りってなんなんだろう。呪われてるだろ公爵家




しばらくマリアの高速移動の旅を堪能し、遂に王城までもう少しの所まできた!!ここまで来たらもう腹を括るしか無いか。処刑されたら化けて出てやるぞ王族!!



「マリア!!王城にもうすぐ着くが、どうやって忍び込む!?王様と王太子に聖女をボコボコにするにしても、各個撃破してる頃には見つかっちまうぞ!!」




「問題ありませんわ!!今、現聖女の承認式が行われているはずです!!!そこに乗り込みますわ!!」




「なるほど!!一挙に集まってる所を叩くのか!

一応聞いておくが、それって王族と聖女だけの式か?」




「いえ、騎士に宮廷魔術師、その他貴族に神官に諸々沢山いますわ!!謁見の間で勢揃いですわ!」




「なるほど、つまり無策なのね!!バカ!あんぽんたん!!もう何なの!!どうしてそんな事するの!?」




「「私はいつ何時、誰の挑戦でも受けますわ!」」




「言うと思ったよ!!それ言うと思った!」




「私の決め台詞を被せるのはおやめなさい。さぁパーティの時間ですわ!!」





「嫌ァァァァァァァァァア!!」




公爵家の誇りドリルが唸る。この国のどの壁よりも厚いはずの石の壁を目にも止まらラッシュで削りとっていく。




「ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!ですわ!」




壁に突っ込んだ勢いを活かしマリアが叫びながら厚い壁をぶち破った。すげぇ!!さすマリ!さすマリだ!!こいつの豪快な所は本当に大好きだぜ!!



でもねマリアさん。豪快なのはいいけどさ、しっかり俺を掴んでなきゃダメなんじゃないかな??

いま簀巻きだし、ほら周りがスローモションだし、この数十分でまた死にそうな感じなんですけど?





「ぎゃぁぺぇぇえぇ!!」




床に打ち付けられた衝撃で情けない声が出た。

痛いもんは痛いんだもん!!



そうして顔を上げるとそこには偉そうな人ばかりがずらりと俺を囲んでいた。いや、偉そうな人の円に俺が飛び込んだのか、、、。



うん、その剣抜いてどうするの??いや!!やめて!!乱暴しないで!!その剣が振り下ろされる瞬間




「この者に手を出すのは許しませんわ!!」




公爵家の誇りドリルを触手のように使い剣を受け止めた。





きゅ、キューーーーーン!!





いやこれもまたマッチポンプだわ。危ねぇ危ねぇ

しかしドリルは剣も受け止められるのか、、、





「私の名はマリア!もとバンティス公爵家の正統後継者にして公爵家の誇りを受け継ぐ者!!この聖女承認待ったですわー!!」




マリアはその姿、その声が煌びやかで品があり、その有り余る覇気で周りを圧倒した。




「マリア嬢だと!?」 「死んだと聞いたが?」

「ほんものか?」「あの髪は一人しかおらん本物だ!」




周りが騒ぎ始める中一人の男が俺とマリアに向かってきた。見た目は背が高く金髪でイケメンで一言で言うと持っている奴。いけ好かない感じのする奴だなぁ、その顔面くれ!!




「元バンティス嬢、、、。俺様の事が忘れられないのは分かるが、いい加減身を弁えたらどうだ??貴様はもう罪人なのだ!!兵よ!カール・ベルト王太子が命じる!ベルト王族の名にかけてこの罪人を殺せ!!」




「カール様、、、。あなたは結局お変わりにはならなかったのですね。心は汚れ歪んでしまった。それをそこの女に誑かされるとは、、、笑止ですわ!」





「誰のせいで歪んだと思っているのだぁぁ!!

殺せ!この女を殺せ!!」




カール王太子の怒号で兵士が襲い掛かるも牢屋での記憶よろしくマリアのドリルと拳にボコボコにされていった。避けて殴る、避けてドリル。単純作業の様に見えてその一つ一つが洗練されていてまるで舞いを見ている様だった。周りの人間も「美しい」「これが公爵家の至宝」などと口にしていた。




「殿下、もうやめましょう。私の勝ちですわ。そこの聖女の名を乗っ取った女の術を解き王を解放しなさい。魅了はこの国では禁忌、争いの力になりますわ」




「ぐぅぅぅ、、いつも俺様の邪魔をしよって!!そんなに楽しいか!俺様はいつまでもお前の下では無い!!なめるな!なめるなよ!!ベティー魅了をかけろ!!」




「わかりました、殿下。全ての男は私の奴隷、みな私の奴隷になりなさい」



そうベティーとか言うおんなが手を上げると赤色の波動がほど走り先ほどまでおとなしくしていた貴族や僧侶までもマリアに襲いかかり始めた。多勢に無勢、負けはしないが数か多すぎて上手くマリアは身動きができなくなっていた。



話に置いてけぼりになっているが、

マリアの才能に恐怖した王子が魅了女をつかって

マリアを王都から追放したって感じの筋書きのようだ。いつか詳しく話してほしい所だな。



「惨めな女。誰からも愛されない。貴方の強さは罪なのよ、無駄な努力で身につけた強さも教養もカリスマ性も、ただ殿下を追い詰め、王を恐怖させただけ。お陰で王もすぐ私の魅了にかかりました。心の隙間が大きいほど私の魅了は効果を高める。王ほどのお人がどれだけ貴女のカリスマに恐怖していたのでしょうね?王の椅子を必ず奪われてしまうと」




「そうだ!お前の様な女は聖女でも俺様の婚約者でもない!貴様が男であればとっくに殺している所だ!だからこそいま死ね!バンティス!!」





容赦のない罵詈雑言にマリアは心に確かなダメージを受けていた。たとえ誰よりも輝かしく強靭な心を持っていようと言葉の刃は等しく心を切り刻む。



公爵家の令嬢として努力し、何より公爵家の誇りの継承者として努力した。選ばれた者の証をもつ者。

天賦の才を持つ者として。



父も母も誇りの継承はされなかった。

いや、この数十年で誇り持ちは皆無だっただからこそ、誰もが期待し嫉妬した。そしてそのプレッシャーがマリアをより強くした。強くしてしまった。




耐えれてしまったのだ。

その常人では壊れてしまうプレッシャーと高い要求に。際限ない人間の悪意に。



誇りを持つ者だからなのか?

そんなマリアだからこそ誇りを継承したのか?

どちらかは分からないが、その人離れした力と忍耐力がマリアをいっそう孤立させたのは間違いがなかった。





「お前はいつもそうだ!俺様を見下しやがって!!この化け物が!!お前は"にんげん"じゃないんだよ!」




「そうよ!貴方みたいな女はいない方がみんな幸せなのよ!!友達も恋人いない孤独な化け物!!」





(情けないですわ、、、こんな言葉で)





操られた男どもにもみくちゃにされながら見えた

マリアの顔は酷く悲しそうだった。



あの自信満々なやつがあんな顔するなんてな、、、。友達いなかったのかマリア。友達ってより舎弟?みたいなやつが街には多いしな。

でもなんかあれだな、なんか、、、腹立つ!!




腹立つぜ!




「てめぇら!!ふざけんな!!」




俺は操られている男共をかき分け、王太子殿下様と魅了洗脳くそ聖女の顔面に一発





「ぐぉぉぉぉお!?」




「わたしの魅了にかかっていない!?きぁぁ!?」



ぶちかましてやった!

レペゼンスラムは高貴も女も関係なく腹立つ奴は

殴り飛ばす。それが俺たちのルールだぜ。




「テメェら好き勝手言いやがってふざけんな!!

人間じゃねぇ??孤独??それが何だ!テメェら

結構長い付き合いなんだろ!!それなのにマリアの何も分かってねぇーのな!!こいつはな偉そうで自信満々でやたら強いけどな、めんどくさがり屋で自分から厄介ごとに突っ込んでいくお人好しで、野菜嫌いなお肉ジャンキーなんだよ!!だらしのない人間だ!!こんなやつは人間なんだよ!!マリア・バンティスは人間だぁぁぁぁあ!!!!」





好き放題言いやがって、いい加減イライラする。

勝てないなら勝てないなりにどうにかしろってんだ、それが王の器ってもんだろ?




「あなた、、、」




「マリアもこんな奴らに言われて凹んでんじゃねぇ!!おまえらしくねぇぞ!!俺の知ってるマリアはそんなやつじゃねぇ!さてはそのドリル偽物かぁ!?!?」




「全くあなたと言う人は、、、不敬ですわよ、、、

ですが助かりましたわ。私、もしかしたら挫けてしまっていたかもしれませんもの」




「いいって事よ。俺たちベストコンビだからな」





「そうでした。私たちベストコンビでしたわね」




なんだか照れ臭くて顔は見れなかったが、俺たちはお互いにサムズアップした。




「くそ、あまり調子に乗るなよ!!お前もバンティスと共に殺してやるわ!!やれベティー!」




「聖女の顔をなぐるとは下郎!!殺してやりますわ!」




王太子と魅了聖女は起き上がるとそのヘイトを俺にむけていた。やべぇ!!魅了されてる男達がめちゃめちゃこっち来る!!

ただの生身だぞ!!やめて!!泣きそう!!

啖呵切っておいて情けないけど武器ちょうだい!!




「やらせませんわ!」




迫る敵を薙ぎ払いマリアが助けに来てくれた。

しかし何回目だろな助けられるのは、、、いい加減カッコ悪くてたまらねぇ。俺もやるぜ!!殴り倒された兵士が落とした剣を拾い上げ構える。背中にはマリア。 心強すぎるなぁ、、、

見せてやるぜベストコンビの連携ってやつよな!!




「やれ!!その二人を殺せ!!」




「「さぁ!反撃かいしだぜ(ですわ)!!」」






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