第27話 (ミライ)
「クリーチャー」
私が呼ぶと、クリーチャーはこっちを見た。
やっぱりそうだ。レンは理性がない、って言ってたけど、クリーチャーは一号の言うことを聞いていた。言葉がわかるんだ。
「クリーチャー、よく聞いて。今からあなたの体を、少しだけ小さく、弱くする。そうすれば、私たちはあなたを殺さなくて済む。殺さなくて済むようになれば、一号も喜ぶの。少し痛いけど、我慢してくれる?」
たくさんあるクリーチャーの目が、じっと私を見つめる。
クリーチャーは私の前まで歩いてきて、うずくまった。通じたんだ。
私は炎の瓶の蓋を開けて、中身をクリーチャーの体に垂らす。ぼっ、と火がついて、肉の焼ける嫌な匂いが鼻をつく。クリーチャーの無数の口から、苦しげなうめき声が漏れた。
肉が炭化して、端の方からボロボロと崩れる。もがいて空を切る手の指先が、パラパラと灰にになって落ちる。核はどこだ。
私は燃える肉に手を突っ込んで、核にあたる部分を探す。熱い。痛い。でも、やらなきゃ。
クリーチャーの体の中央に、まともな形の頭がついているのを見つけた。首から下は自分の肉に埋まっている。
私は一度寝転んで、全身に水をかぶった。濡れ鼠になっている今の状態なら、少しの間くらいは火に耐えられるはずだ。
「よし」
私は、クリーチャーの頭を胸に抱きしめた。濡れた服の上を熱い炎が撫でていく。クリーチャーの体が、炎によってだんだん分解されていく。私はぐっと抱きしめる力を強くする。私の腕が、焦げて脆くなった肉にめり込んで、核になっている体の肩に触れた。
この子にまとわりついている余分なものが全部燃え尽きるまで、こうしていよう。
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