第3話

八月十五日。

クーラーに効いたリビングでソファに座ってテレビを見ていた。

テレビでは終戦記念日の番組ばかりが放送されている。

正直つまらない。

夏休みに入り、宿題はすぐ終わらせた。

今年は珍しくかなりの量があり、終わらせるのに一週間かかった。

きっと直人は今年は終わらないだろう。

そんなことを思っていると、ふと思い出した。

『#宇野橋の恐怖』を。

自室に戻り、パソコンを起動する。

検索エンジンを立ち上げて『宇野橋の恐怖』と打ち込み、検索をかける。

出てきたのは周りを木々で覆われた木製の橋の画像ばかりだった。

どれもこれも古びた橋の画像で、今にも朽ちてしまいそうだった。

まとめサイトも多数あり、そのうちの一つをクリックして開いてみる。

そこにはおどろおどろしいような赤い字で『宇野橋の恐怖』と書かれていた。

こんなに近くにあるのに全然知らなかったが、全国的に有名な心霊スポットで毎年肝試しにやって来る若者が後を絶たないという。

スクロールして記述を読んでいくが、特別怖いというエピソードはなかった。

ほぼページの最後まで来た。

ただの心霊スポットなだけだと思って読んでみると、最後の記述だけ他とは少し異なっていた。


【懐中電灯を一人一つ持ち、有名な宇野橋に大学のサークル仲間六人で夜中の二時に到着した。特別怖いという場所でもない。ただ今にも朽ち落ちてしまいそうなボロい橋というだけだった。それ以外何もないから帰ろうとした。しかし本当の恐怖は違った。帰ろうと言う話になり、踵を返して元来た道を戻っていると、仲間の一人の男性の声がしないことに気付いた。迷ったのかと思い、橋の所まで戻るが見つからない。呼びかけてみても応答がない。トイレでもしているのだろうと冗談を言いながら、橋の側で五分待った。しかし、現れない。手分けして探してみるけど、どこにもいない。携帯に連絡してみても出ずに留守電に?がってしまう。一度戻ってみようと、橋まで戻ってみると、次は一人の女性がいなくなった。ここまでくると、何かおかしいことに気付いた。いなくなった男女は特別深い仲というわけではない。だから私達に隠れて逢引しているとは考えにくかった。女性の名前を呼んでみると、遠くから「キャー」という叫び声が聞こえた。それが彼女のものだったかどうかは定かではない。しかし、その叫びを聞いた瞬間、私達は消えた仲間を放っておいて逃げ出した。急いで車まで走った。息が上がろうが、横っ腹が痛くなろうが、そんなの気にする余裕もなかった。とにかく逃げた。車に到着する時には、また仲間が一人消えていた。車に乗り込み、エンジンをかける。すぐにエンジンはかかったが、何か違和感があった。外に出てタイヤを照らすと全てのタイヤがパンクしていた。逃げなければならない。本能が叫んでいた。車を放置して、一本道をひたすら走った。バタバタと足音が最初はしていたものの、気付くと自分の足音しか残っておらず、振り返ると誰もいなかった。ザッ、ザッと足を擦って歩く足音だけが聞こえた。そして、私は見た。左手に仲間の首を、右手に血濡れた鎌を持った兎のお面を被った殺人鬼を。その後どうやって戻ってきたのか分からない。警察に行って救助を願い出たが、なぜか相手にしてもらえなかった。この町はおかしい。街ぐるみで何かを隠しているとしか思えない。宇野橋には極力近づかない方がいい。命が惜しいならば。】


さすがに少し怖かった。

あの山でそんな怖い事があるのだろうか。

他のまとめサイトを読んでみたが、あの記述のようなことは書かれていなかった。

きっと他の心霊スポットと勘違いしたんだろう。

あの山に殺人を犯した人間がいるなら、警察が黙っているはずがない。

近隣の警察からも応援を呼んで山狩りが行われてもおかしくないはずだ。

そんな話未だかつて聞いたことがない。

でも、なぜか少し気になって仕方なかった。

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