第1062話 しばらくセンテでの活動が続く日々
「今日は、こんなものかな」
「そうね。他の場所はまだ安置所ができていないし、物も運ばないといけないから」
「ずっとついて回っていたが、前回同様中々大変だな……」
東西南北の区分けされた農地を回り、順番にハウス化を完了させる。
農地の中央に行かなくてはいけないので、それなりに移動で時間がかかってしまい、すでに日が暮れ始めていた。
やろうと思えば、端の方からでも結界は張れるんだけど、フィリーナも絶対にクォンツァイタがある中央に来なければいけないから、一緒に行動しているからね。
基本的に移動は距離があるため、エルサに乗ってなんだけど、結界を張ったらその外に出るまで乗れないため、必ず徒歩移動があったし。
エルサが飛ぶには、結界の高さが足りないからね。
馬に乗る事も考えられて、今度からは移動用の馬が用意されるらしく、少しは短縮できるだろうけど。
ちなみにエルサは、いちいち小さくなったり大きくなったりするのが面倒だったので、途中から俺達を目的地に降ろした後は、結界を張る前に出入り口指定された場所で、結界の範囲外で待機するようになった。
「明日は中央をやるとして……シュットラウルさん、他にも準備できる場所はありますか?」
「ふむ……どうだ?」
現状でいつでもハウス化ができる準備が整っている……安置所ができているのは中央管理棟用の場所だけなので、それ以外の別けた区画がどうなのかを聞く。
俺の言葉を受けて、一緒にいた執事さんに問いかけるシュットラウルさん。
執事さんは、ハウス化作業をする俺達に付いて来ていたわけではなく、最初にフィリーナが指示を出していた場所で待機して、方々から届く報告を受ける役割だった。
「わかった。――明日には、数か所の準備が完了する。他にも、滞りなく進めば三日以内にはできるようだ。まぁ、それぞれの安置所は凝って作る必要がないし、魔法具は運ぶだけだからな」
「わかりました。順番にやって行けばいいかな」
準備を終えた場所から順番にハウス化作業をするとして、数日作業になる事を決めて、エルサに乗ってセンテに戻る。
それからの数日は、ハウス化作業を俺とフィリーナが担当し、魔物関連の調査はモニカさん達、ワイバーンは変わらずカイツさん、そして街中の情報収集はリネルトさんやアマリーラさんを始めとした、シュットラウルさんがやってくれた。
これまで、ハウス化作業について来てくれていたシュットラウルさんも、二日目以降はやらなければいけない仕事もあるらしく、宿でもお世話してくれている執事さんに任せて、庁舎へこもっていた。
その際、街での情報を集めたり指示を出したりとかもしてくれていたらしい。
さらに数日……他の農地のハウス化をしたり、モニカさん達の調査を手伝ったり、また兵士さん達との模擬戦をしたりが続く。
魔物の調査の方は目ぼしい成果はなく、兵士さん達とはさすがにもう演習をしたりはしなかったけど。
そうして、センテに俺達が来てから大体十数日が経った。
「ふぅむ……やはりまだわからぬ事が多過ぎるな」
「そうですね……」
恒例になった、夕食を食べながらの報告会。
俺達がワイバーンを倒してからも、センテの南には魔物の死骸が運ばれてきている。
数はその日によって違うけど、今は冒険者ギルドの人達や他の冒険者さんも、回収を手伝ってくれていたりする……討伐者などは不明としているため、回収した魔物はその冒険者さん達の物になるので喜ばれて入るんだけど……。
でも結局、ワイバーンの仕業じゃないか? と考えていたのにワイバーンを倒しても続いている事で、本当にそうなのかという疑いも出て来ていたりする。
とはいえ、魔物の死骸は空から落とされたのだろうというのは、ほぼ調査を進めて行ってほぼ確定しているため、結局ワイバーンに考えが向くんだけどね。
その他、倒したワイバーンの調査はカイツさんが進めてくれているけど、多少の報告はあっても全部調べ終わるまではっきりした事は言えないと、こちらは今もわかっていない状態。
まぁ、もうすぐ終わるらとカイツさんも言っていたし、フィリーナも時折手伝っているようだから、こちらは報告待ちだね。
ハウス化の方は、センテ周辺ではほとんどの場所が終わって、少し離れた場所も追加でやっていたりする。
これは、慣れたのもあってハウス化にかかる手間が少なくなって来たのと、先にハウス化した農地から今のところ悪い報告がない事が影響していた。
とは言っても、さすがにセンテからあまり時間がかからずに連絡を取り合える範囲で……だけどね。
「あぁ、そういえばシュットラウルさん。前にリネルトさん達から報告のあった、怪しい人物というのはどうですか?」
「ふむ……あまり動きはないようだな。時折ふらっとどこかへ行って姿を消す事はあるみたいだから、何かをしている可能性はあるのだが……今のところは何もないな。そろそろ張り付いて調べる者を出そうというところだな」
「そうですか。それで何かわかればいいんですけど」
センテの街で見かけられたという、怪しい人物。
この人が何かを狙っているとか、何かしているんじゃないか……という疑いもあるんだけど、確証が今のところない。
さすがにこちらから無理矢理聞き出そうと接触して、違ったらいけないし、ブハギムノングの時ルジナウムへ魔物が押し寄せるきっかけになったような事になるといけないので、今のところ対応は慎重にしている。
あの時は、俺とソフィーがブハギムノングでの企みに踏み込んで、それが原因……というか主に結界で魔力を遮ったせいで、ルジナウムに集結して来ていた魔物が動き出したからね。
魔物がそれなりに増えていると言っても、あの時みたいに集結している様子は見られないので、大丈夫かなとも思うけど……どこに何を仕掛けているかわからない。
だから、直接接触するよりも周辺から徐々に調べて行っていた……シュットラウルさんがそろそろと言っているから、もうすぐ何かわかると思う、多分。
「リク殿の方はどうだ? 新しいワイバーンはその後見つかっていないようだが……」
「はい。時折センテ周辺をエルサで飛んでみたりもするんですけど……空は異常なく、探知魔法でもワイバーンの反応はありません。もしかしたら……」
「もしかしたら?」
シュットラウルさんに聞かれて、最近のワイバーン調査を伝えながら考える。
二体の再生するワイバーンを倒してから、それ以降俺の探知魔法に引っかかる事もなく、エルサで飛び回っても他の人達からも、別のワイバーンに関する目撃情報は一切ない。
本当に周辺からいなくなったのかな? と思う事もあるけれど、魔物の死骸は毎日追加されているようだから、他にもワイバーンなりなんなりがいるのは間違いない。
ちなみに、一日中センテの南を監視していても、いつの間にか人の目の届かない所に魔物の死骸が置かれていたりする。
見つからないよう動いているのは間違いない――。
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