第647話 報告へ出発



「前に言っていたように、のんびり飛ぶのだわ?」

「今日は、そのために急いで移動する必要があるからね。のんびりするのはまた今度だ。とりあえずルジナウムの街へ急ごう!」

「わかったのだわー!」


 のんびりするのは、今やる事が終わってから。

 エルサに言って急いでもらい、時間をかけないようにルジナウムへ向かった。

 空を移動するのも慣れたけど……もっとゆっくり景色を見ながら、モフモフを堪能したいなぁ。

 まぁ、それを目指して今頑張るんだけどね。



「えっと、フランクさんか、ノイッシュさんはいますか?」

「リク様! ようこそお越し下さいました。ギルドマスターは今出ているますが、子爵様はいらっしゃっていますよ。案内しますね?」

「お願いします」


 ルジナウムの街へ到着して、すぐに冒険者ギルドへ。

 モニカさん達の出迎えがないのは少し寂しいけど、今日こちらへ来るとは伝えていないのだから、仕方ない。

 きっと、ノイッシュさんや他の冒険者さんと協力して、森の方を調査してくれているんだろう。

 受付の女性にノイッシュさんやフランクさんの事を聞くと、フランクさんの方はギルド内にいてくれたようだ。


 すっかり、冒険者ギルドの一室にいるのが定着してるなぁ……。

 情報が漏れないようにしたり、調査の事を話すのにはノイッシュさんもいる冒険者ギルドは、便利なんだろうけど。

 案内れながら、ノイッシュさんの事を聞いてみると、どうやら調査の方で進展があったらしく、直接確かめに行っているらしい。

 ギルドマスターが直接というのは大事だろうけど、街が壊滅の脅威にさらされたのだから、その原因を探るのに出るのもおかしくないか。


「失礼します。リク様がお見えになりました」

「リク様が? わかった……」

「失礼します、フランクさん」

「リク様、今日はどうされたので? もうブハギムノングの方は片付いたのですか?」

「いえ、鉱山は広いので、もう少しかかりそうです。今日は、進捗を伝えるのと……こちらの事を聞くために来ました」

「左様ですか。あ、どうぞお座り下さい」

「はい」


 受付の女性に案内され、馴染みとなって来ている部屋に入ってフランクさんに挨拶。

 急に俺が来たので驚いていた様子だったけど、すぐに納得して話す態勢になってくれた。

 本当は、伝令とかそういう知らせを届けたりするものなんだろうけど、エルサで移動した方が早いからね……突然来る事になるのは仕方ない。

 確か、ルジナウムとブハギムノングを片道でも、馬で一日かかるとかそれくらいらしいし、体感で一時間程度で来れるのはエルサに感謝しかない。


「それで、ブハギムノングの方はどうですかな?」

「最初は、ルジナウムの事でちょっと混乱していたようですけど、今はもう平穏を取り戻しています。エクスブロジオンオーガが出る原因も取り除いているので、増える事もないですし、後は残った魔物を討伐するだけで終わると思います。だた……」

「何か、気になる事がおありなのですか?」

「気になるというか、問題が少し。ブハギムノング自体の問題というわけではないのですが……」


 まず、街や鉱山の様子やエクスブロジオンオーガの事を報告する。

 そこからイオスやモリーツに関する話に入って、なんらかの組織が関与、紛れ込んでいる人物がいる可能性も話しておく。

 もしフランクさんの近くにそういう人間がいたら、フランクさん自身が危険に晒される事もあるかもしれないからね。

 それは当然ノイッシュさんも一緒で、冒険者という一応は誰でもなれる職業と関わるギルドのマスターなのだから、こちらの方が危険かもしれないけど……そちらにも、注意を促すようにお願いしておく。


「そうですか……多かれ少なかれ、配下を持つ者というのはそういった事を考えねばなりませんが、リク様の言う通り、注意する事に致しましょう。……あまり、人を疑う事はしたくありませんが」

「それは俺もそうです。疑い始めるときりがないですし……誰でも怪しく思えてしまいますから」

「はい。まぁ、そのイオスという男が紛れ込んだのは、割と最近であるという事を考えれば、昔から仕えてくれている人物である程、信用に足るとも考えられそうですな。もっとも、目的や組織の大きさすらわからないので、絶対とは言えません」


 イオスのいた組織というのが、ずっと昔からこの国で暗躍していたかどうかはわからない。

 けど、イオスやモリーツさんがブハギムノングに来たのは、結構最近であると考えれば、他に場所で紛れ込んでいる人物がいたとしても、動き出したのは最近と考えられる。

 なんにせよ、情報が少なすぎてこうだという断定はできないけど、フランクさんの言うように古くからの知り合いであれば信用できる可能性は高くなる。

 あとは、注意深く見ていればいいだけだね……疑い過ぎても、疑心暗鬼になってしまうだけだから。


「こちらも、考えさせて頂きます。さて、今度はこちらから報告しますかな」

「はい、ノイッシュさんの事ですね?」

「えぇ。今はギルドの外へ直接出向いて調査をしています。まぁ、それだけギルドマスターとしても、真剣に調べているという現れでしょう」


 冒険者ギルドは国に寄らない組織だとしても、この国のこの街、ルジナウムに支部を持ち、そこでギルドマスターをやっているからね、そんな場所を魔物の集団が襲って来たのだから、ノイッシュさんが真剣に調査をするのも当然か。

 ギルドを別にしても、自分が住んでいる街って事になるわけだから。


「今は、モニカ殿達と一緒に、街の北側……正確には、北東辺りを調べています」

「モニカさん達と一緒なんですね。でも、北東とは? 魔物達は南の森から来たはずですが……」

「調査をするなら、魔物達が集まっていた森付近を調べるのが当然なのですが……とある冒険者が、気になる発見をしましてね?」

「気になる発見、ですか?」


 モニカさん達という事は、ユノやエアら―ハールさんも一緒なんだろう。

 ギルドマスター直々に動くんだし、さっきの話じゃないけど、信用のできる人と一緒だから安心できる。

 それはいいんだけど……調査をしているのは北東って、森とは別方向だけどそこに何があったんだろう?


「魔力の道……とも言えるものを見つけたのです」

「魔力の道、ですか?」

「はい。まぁ、呼び方はこちらで勝手に呼んでいるだけですが……街の周囲を兵士と冒険者で協力して、警備していたのです。魔物が近くまで来ましたから、民達を安心させるためもあります。他にも、魔物が街に近付かないかの警戒ですな」


 強力な魔物、集結していた魔物は倒したけど、それで周辺から全ての魔物がいなくなったわけじゃない。

 実際に戦ったり見たりはしていなくとも、魔物が押し寄せるという経験をしている街の人達からすると、安心を得るためには当然の事だと思う。

 また同じような事がないかとか、不安になったりするものだからね。


「その警戒中に、とある冒険者が偶然見慣れない物を発見しましてな? いえ、物を発見というより、察知したという事ですが……」

「それは?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る