第596話 エクスブロジオンオーガの違い
「ふっ! ……ん?」
「ギギィ!」
「ギィ! ギィ!」
ある程度慣れてきたもので、動きの遅いエクスブロジオンオーガの攻撃を避けながら、剣を使って倒していく。
ものの数分で半分くらい倒せたかな。
目の前にいたエクスブロジオンオーガに剣を突き立て、致命傷を与えて爆発させる。
小さい傷程度じゃ爆発しないけど、大きな傷を与えたら爆発するから、止めを刺す手間が省けるとも言えるかもね。
これも何度か戦って慣れた事で、どれくらいのダメージを負わせたら爆発するかが、なんとなくだけどわかってきたおかげだね。
部位を斬り離したり意識を完全に奪うまでしなくとも、放っておいたら……という程度の傷を負わせればいい。
剣に気を使って戦わなければいけない状況では、少しありがたい……爆発で迷惑している鉱夫さん達にとっては、ありがたくないんだろうけど。
そんな中、爆発をさせた目の前のエクスブロジオンオーガがいなくなった事で気付く。
「あいつだけ、少し違う……かな?」
残っているエクスブロジオンオーガのうち、一番俺から遠い場所にいるのだけ、違うような気がする。
鉱山内は薄暗く、他のエクスブロジオンオーガの後ろにいるため、体の一部しか見えないけど、色が違って見えた。
「……考えるよりも、近付いてみれば早いかな。……せい!」
「ギギィ!」
動きを止めて考えるのではなく、気になったら見に行くという方を選択。
足に力を込め、まずは一番近いエクスブロジオンオーガに駆け込みながら剣を振り下ろし、爆発させる。
爆発すると一瞬だけ視界を奪われるので、足を止める事になるけど、ソフィーのように備えなくてもいいのは楽かもね。
まぁ、爆発に伴って四散する体に当たると、血が付いたりするから、できるだけ避けるようにしてるけども。
ん……? 血……?
そういえば、エクスブロジオンオーガが爆発する時、体の一部以外に血液が付いていない……というより、体が四散するのに対して血が飛び散ったりする事はない……。
今まで気にしていなかったけど、どういう事だろう? 剣で斬った部分からは、ちゃんと血が流れているのに……。
……いや、今は考えている状況じゃないね。
さっき気になった奴もまだよく見えないし、とりあえずそっちを優先しよう。
考えを打ち切り、エクスブロジオンオーガを倒す事に集中した。
考えるのは、後でもできるからね。
「はぁ! ……ふぅ。やっぱり、他のエクスブロジオンオーガと色が違う……」
「ギギ!?」
違和感のあるエクスブロジオンオーガ以外を倒し終えて、残っているのに注目すると、違和感の正体がわかった。
そのエクスブロジオンオーガだけ、肌の色が赤みがかっておらず、緑色をしていたから。
とはいえ、やはり土や埃で汚れているため、黒や茶色も混ざっている。
「ギィ……ギィ……」
「怯えてる? 他のエクスブロジオンオーガとは違うのかな?」
今まで戦ったエクスブロジオンオーガは、人間……というより俺達を見ると、問答無用で襲い掛かって来ていた。
まぁ、驚いたりする事はあったけど、人間に対して明確に敵意を持っていた。
なのに緑の肌色を持つエクスブロジオンオーガは、俺へと襲い掛かる事もなく、仲間と言える他のやつらがいなくなった事を確認するように、顔をキョロキョロとさせながら、俺から後退りをしている。
「うーん……怯えてる魔物を倒すのは、気が引けるけど……」
散々エクスブロジオンオーガを倒しておいて、今更だろうけど、やっぱり怯えてこちらに向かって来ない相手を倒すのは気が引ける。
多分、エアラハールさんとかがいたら、甘いと言われてしまいそうだけどね。
「ギィ……ギッ!」
「っ!?」
どうしようかと考えていたら、突然残ったエクスブロジオンオーガが、こちらへ手を向けた。
怯えた様子なのはそのままだけど、力を込めたように思う手からは目に見えない何かが飛び出したように感じる。
その瞬間、俺の体に見えない何か……多分魔法だと思うけど、それが当たって弾けた。
「ギィ! ……ギ? ギギ!?」
「今の、風の魔法……だよね? アルネとかが使ってた……」
エクスブロジオンオーガからは、一瞬だけどうだ! というような声が聞こえたけど、俺が傷を負う事もなく魔法を受けて何事もない事を確認し、驚いた様子で声を上げていた。
見えない魔法……確か、アルネやフィリーナが使っていた風の魔法は、目で見えなかったっけ。
風の刃……同じような魔法だとすると、アルネ達の威力が弱い魔法を使ったんだと思う。
幸いにして、俺にはよくわからない魔力の防御があるから、ほとんど何も感じなかったけど、身に付けている革の鎧……ではなく、その下に着て鎧から出ている部分の服が少しだけ切れていた。
やっぱり、風の刃を放ったって事なんだろう。
さっきまで、一切魔法を使って来なかったエクスブロジオンオーガ。
鉱夫さん達は、発見した当初は使っていたと言っていたけど、俺が見るのは始めてだね。
やっぱり、一体だけ緑色の肌をしているのは、何か理由があるのかもしれない……。
「ギ! ギ!」
魔法でビクともしない俺を見て、さらに怯えて混乱した様子のエクスブロジオンオーガは、何度も同じ魔法を放つ。
「うーん……怯えてるのを倒すのは気が引けるって言っても、魔物だし、話は通じそうにないからなぁ……仕方ない。……はぁ!」
「ギギィーー!?」
魔法自体は大したことがなくても、相手は魔物。
このまま逃がすわけにもいかないし、連続で魔法を放っているから、そろそろ服がボロボロになってしまいそうだ。
仕方なく、剣を構えて魔法を放つエクスブロジオンオーガがかざす手の横をすり抜けさせ、そのまま胸部へと突き刺してすぐに抜き去る。
断末魔のような声を上げ、エクスブロジオンオーガの目に光がなくなり、爆発……しない?
「……あれ?」
少しだけ身構えていた体の緊張を解き、ピクリとも動かなくなったエクスブロジオンオーガを見る。
大の字になって後ろに倒れ、目は見開かれているけど白目になっている。
呼吸もしておらず、完全に絶命している事がわかるけど……爆発しなかった。
「えーと……なんで?」
よくわからないけど、そのエクスブロジオンオーガだけが爆発せず、五体満足と言っていいのかわからないけど、初めて形を保ったまま倒せてしまっている。
首を傾げつつ、一応時間差で爆発する事がないよう少し様子を見てから、結界を解除した。
「リク!」
「ソフィー。えっと、こいつなんだけど……」
「あぁ、結界の外から見ていた。離れて見ていてもわかったが、やはり肌の色が違うな」
結界を解除してすぐ、ソフィーが俺に声をかけながら駆け寄る。
近くに来たソフィーに応えつつ、倒れたまま爆発していないエクスブロジオンオーガを示した。
「爆発しなかったのはなんでだろう……? あ、それとこいつ、魔法を使ったんだ」
「結界の外だと何も音は聞こえないから、わからなかったが……あの手をリクへ向けた時か?」
「うん。アルネ達が使う風の魔法よりも弱かったけどね。ほら……」
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