第416話 合流して農場予定地調査へ



「それで、私達は今から獅子亭に戻ろうとしていたんだけど、ソフィーはどうしてここに?」

「あぁ、そういえば。獅子亭で手伝いをしてたんじゃなかったの?」

「いや、手伝いは終わったんだ。それで、昼食を頂いた後、ユノがリクの所に行きたがってな?」

「ユノが?」

「リクが何かする気がしたの。だから来たの」


 ソフィーやユノは、獅子亭での手伝いは既に終わっていたらしい。

 俺達が戻るまでゆっくりしてても良かったんだけど、ユノが何やらこちらに来たがったらしい。

 俺が何かをするって……さっき受けた依頼の事かな?


「確かに、依頼を受けたから獅子亭に戻ったら、ソフィー達に説明するつもりだったけど……」

「私が呼んだのだわ」

「エルサが?」

「探査魔法の応用で、少し魔力を広げたのだわ。それで、ユノが何かに気付いてここまで来たのだわ」

「どうしてそんな事を……というより、そんな事できるんだ……」

「リクはもっと魔力の使い方について学ぶべきなのだわ。それはともかく、獅子亭に帰っていたら、遅くなるのだわ。早く邪魔者を追い出して、キューを作るべきなのだわ!」

「あぁ……成る程、そういう事か」

「早いに越した事はないのだわ。すぐに依頼に取り掛かるのだわ!」

「はいはい……わかったよ」

「ふむ。依頼と言っていたが、何か問題があったのか?」

「えっとね、ソフィー。リクさんやフィリーナと一緒に、ヤンさん達と話したんだけど……」


 ユノを呼んだのはエルサらしい。

 どうやら、キューを作るのを邪魔する問題を早く解決して、さっさと作れという事らしいけど……獅子亭に一度帰るとしても、あまり遅くなる程じゃないんだけどな。

 魔力でそんな事ができるなんて初めて知ったけど、ともあれ、エルサの魔力をどうにかして感知したユノが、俺達が何かをすると感じ、先んじてソフィーを連れて冒険者ギルドに来たという事か。

 ユノはエルサを作った張本人だから、簡単に魔力を感じられたんだろう……多分。

 俺達を急かすエルサを宥めながら、ソフィーへ依頼の事やマギアプソプションの事を説明しつつ、冒険者ギルドを後にした。


 ……そういえば、リリーフラワーの人達……冒険者ギルドに来てたって事は、何か依頼を受けたのかな?

 俺達との話でうやむやになってないと良いけど……なんて考えたけど、達成報告に来た可能性だってあるわけだから、無駄な心配か。



「そういえば、ソフィーはさっきのルギネさん達とは、どういった知り合いなの? パーティの誘いを受けてたのはわかるけど」


 依頼のため、冒険者ギルドの建物を出て、ヘルサルの街を移動しながらソフィーへ聞く。

 お互い自己紹介のような事はしたけど、ソフィーとどういう知り合いなのかはわからない。

 ソフィーを自分達のパーティに入れたりと、目的は明らかではあったけどね。

 特にルギネさんは……。


 まぁ、それはともかく、初めてまともに話した自分達とは別の冒険者パーティだから、色々聞いてみたいという事もある。

 考えて見れば、今まで他の冒険者とはあまり関わって来なかった。

 一番関わったのはヘルサルの防衛戦の時だけど、あの時はまだパーティを組んでなかったし、悠長に反してる余裕もなかったしね。


「あぁ、あいつら……リリーフラワーは、センテで組まれたパーティなんだ。元々、センテやヘルサルの周辺で冒険者になったのが、集まってパーティを組んだようだな。……リクは見当が付いていそうだが、特殊な趣味の集団なんだ」

「あー……うん、そうみたいだね」


 百合の花だしなぁ……。

 女性だけ、男性だけのパーティというのは、珍しくはないみたいで、同性同士でパーティを組んだ方が、気兼ねせずに済むという理由で、よくある事らしい。

 異性が混じると、色々と問題が起こるから……というのは、誰から聞いたんだっけか。

 ともかく、同性で組む事の多いパーティだけど、その中には一部特殊な考えを持つ人もいるらしい。


 異性とは関わりたくない……なんていう人もいるらしいけど、ほとんどが同性の方が好きだからという人だね。

 パーティ名からもそれを感じられるし、さっきの様子を見る限り、はっきり聞かなくともそうなんだろうなぁ……とは感じる事ができた。

 複数の女性を囲うとか、俺にはあまり理解できない状況だけど、パーティとしてそれで問題がないのであれば、俺がどうこう言う事でもないか。

 印象としては、皆ルギナさんに好意を持っている……ような気がするから、あれはあれでいいんだろう……多分。


「まぁ、何故なのかはわからないが……ルギナに気に入られてな。私自身は、あいつの個人的な趣味のパーティに入る気はなくて、ずっと断っていたんだ。まったく、他にも良い相手がいるだろうに……」

「ははは、そうなんだ……」


 ソフィー自身は、何故自分が気に入られているのかわからない様子。

 だけど、もしルギナさんが男性的な目線……俺と似たような感覚を持っていたとしたら、理由はよくわかる。

 ソフィーは、見た目も話し方も凛々しく、騎士のような印象を受ける。

 高潔な女性、という感じだね。


 ルギネさんもそうなんだけど、あっちは中性的で、若干男性的な部分も見え隠れしているような気がする。

 ソフィーの場合、それとは対照的に女性的な凛々しさを感じる。

 モニカさんやフィリーナとは、また違った方向で、凛とした美人……と言えるかな。

 人によっては、少しきつい印象を受けるかもしれないけど、話してみると厳しい人じゃないしね。


 それに、本人は隠してるつもりのようだけど……時折エルサのモフモフを撫でて、色々と緩んでしまっている事もある。

 そういった部分もまた、ギャップのように感じられて、とても魅力的な女性だと思う。


「ん、どうしたリク?」

「あ、いや、なんでもないよ。それで、ルギネさんとは?」


 ソフィーの事を見ていると、不思議に思ったのか首を傾げられた。

 いけないいけない、あまり人の事、特に女性をジッと見続けるのは失礼だよね、気を付けよう。


「あぁ、ルギネとは、センテの冒険者ギルドであった。他のメンバーもそうだな。その頃は、お互いDランクになったくらいだったか。パーティに入るかどうかは別で、依頼をこなすために協力をしたりもしたな」

「へーそうなんだ」


 話を逸らす事に成功し、ソフィーがルギネさん達の説明に戻る。

 パーティじゃなくても、別の冒険者と協力する事ってあるんだね。

 人数が足りないとか、欲しい技術を自分達のパーティメンバーが持っていないとか、理由は色々あるんだろう。

 ……ルギネさんがソフィーを引き入れるために、協力を申し出たような気もするけどね。


「私はソロだったから、こなせる依頼もあまり多くなくてな。パーティで行動しているルギネ達の方が、先にCランクになったんだ。そこから、経験を積むために、センテやヘルサル以外の場所へ旅立って行った。ルギネ達とは、それ以来だな。まぁ、旅立つ当日まで誘われ続けたが……Bランク間近と言っていたから、順調に依頼を成功させていたんだろう」

「成る程ね。それで久しぶりにソフィーと再会したら、別の男がいるパーティに入っていた、と」

「あぁ。それでルギネは必要以上にリクに突っかかったんだろう。私がユノを連れていたため、勘違いした事も大きいだろうが……」


 あぁ、最初はユノの事をソフィーの子供かと、疑ってたみたいだしね。

 というより、どれだけの間ソフィーと会ってなかったのかわからないけど、離れた時から逆算して、ユノくらいの大きさの子供がいるのはおかしい……という考えはなかったのかな?

 まぁ、頭に血が上って、そこまで考えられなかったのかもしれないけどね。

 冷静になる前に俺が出て行ったから、さらに熱くなってたからなぁ。



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