第315話 魔物討伐終了
「さすがにここまでやって、逃がしたりしないよ? えい!」
「ギャッ!」
パァン!
俺から逃げ出したリザードマンに一足飛びで近付き、そのまま甲羅を割った右拳を背中に叩き付ける。
格闘技とかをした事ない俺だから、パンチの仕方とかよくわからないまま、力任せに叩きつけたんだけど……。
「えっと……破裂した?」
リザードマンの体は、俺が打ち付けた拳の場所から破裂して四散した。
周囲には、リザードマンだった物や甲羅が散らばった。
……殴り飛ばす事を考えてたんだけど……こんな事になるなんて……いや、リザードマンはちゃんと倒せたんだから、結果としては悪くないんだけどね?
「……威力強すぎない?」
今まで剣を使って斬るだけだったから、あまりよくわかってなかった自分の馬鹿力。
野盗相手の時は、気絶させる事を考えてやってたから、思い切り力を籠めるとかはしなかったけど……。
リザードマンの硬い皮相手にこれなら、本気で野盗に叩き込んでたら、意識どころか体を保てなかったんじゃないかな?
……良かった、あの時手加減してて。
危うく大量虐殺をしてしまう所だった。
人間が目の前のリザードマンのように、拳で破裂させられる……という光景に俺自身が耐えられるかわからないし、そんな場面をロータのような子供に見せるわけにもいかないからね。
魔力に限らず、これからは戦う時の力加減にも気を付けよう。
これも魔力が多過ぎる影響らしいから、魔力制御に注意する事になるのかもしれないけど。
バリィィン!
「ギャッ!」
パァン!
「ふぅ……大分数を減らしたかな……」
拳を振り回して、リザードマンと一緒にグリーンタートルを破壊して一息つく。
戦い始めてそれなりの時間が経ち、俺やユノが動き回ってグリーンタートルを破壊して回り、ついでにリザードマンも倒してるから、結構数が減って来た。
リザードマンの相手をしているおかげで、モニカさん達は邪魔される事無くビッグフロッグと戦えてるみたいだね。
ビッグフロッグも、もうあと2体になってる……ここまで来たら、モニカさんとソフィーなら余裕だと思う。
最初は、ビッグフロッグの数と舌の攻撃が多くて手間取ってただけみたいだし。
あとは、リザードマンか……えっと……6体……いや、ユノが今倒したから、5体か。
「さっさと終わらせて、昼食にしようかな……」
日も結構高くなって来たので、そろそろエルサがキューをよこせとうるさそうだ。
エルサはまだしも、ユノは頑張ってるから、終わったらしっかり食べさせよう。
子供はよく食べてしっかり成長しないとね……ユノが成長するかはわからないけど。
……人間とほぼ一緒って最初に言ってたっけ? だったら成長するのか……?
「せい! とりゃ!」
バリィィン! バリィィン!
「ついでに! っと!」
パァン! パァン!
2体並んでグリーンタートルを持っていたリザードマンを、一緒に相手にする。
まず両方のグリーンタートルの甲羅を破壊し、焦って逃げようとしたリザードマンに拳を打ち付けて、破裂させる。
我ながらえげつない攻撃だけど、自分を試すにはちょうどいい。
技とか何も無く、単純に力一杯殴りつけるだけなんだけどね。
割れた甲羅の破片が危ないから、良い子は真似しないようにして欲しい。
……そもそも甲羅を素手で割れないか。
「よし、これで最後!」
「ギャッ!」
パァン!
「ふぅ、これで全部片付いたっと……」
最後のリザードマンは、もうグリーンタートルがいなくなったので盾にする物もなく、闇雲に振り下ろして来た剣を左手で受け止めて、持っている木の盾ごと右の拳で破裂させて終わらせた。
ユノの方もリザードマンを倒してたから、これで全部終わりだね。
「……さて、モニカさん達は……ん?」
「「……」」
モニカさん達の方はどうなったかと、そちらに体を向けて様子を窺うと、二人共棒立ち状態で、口を開けて呆然としながらこちらを見てた。
……そんな事してると危ないんじゃ……と思って視線を巡らせてみると、ビッグフロッグは全部が地面に倒れてて、動く者はいなくなってた。
あ、もう大丈夫なんだね。
さすがモニカさん達だ、相手の手数が減ったから簡単に残り2体を倒したみたいだね。
でも、どうしてこちらを見て固まってるんだろう?
「モニカさん、ソフィー……どうしたの?」
「……どうしたのって」
「無自覚なのか……リクらしいが……」
「はぁ……だから今回はこっちに来たのだわ……」
二人に近付きながら声をかけると、揃って難しい顔をさせる。
エルサに至っては、やれやれという雰囲気を出しながら、溜め息を吐いた。
どういう事?
「ビッグフロッグと戦ってる時から、後ろで妙に大きな音が聞こえて来てたけど……」
「戦いに集中してたから、そちらを見なかったが……見るんじゃなかったな……」
「ええ。途中で見てたら動きが止まって、ビッグフロッグに捕まってしまってたでしょうね」
「あぁ。まさか、リザードマンを素手で破裂させてるとはな……人間に可能なのか?」
「さぁ? 実際にリクさんがやってるけど……普通は真似できないんじゃない?」
「えぇと……なんか、ごめん?」
二人は、俺がリザードマンを素手で破裂させてたのを見て、驚いていたようだ。
……確かに自分でやって驚いたけど……。
俺だけじゃなく、ヴェンツェルさんにもできるんじゃないかな?
見た目は全身筋肉で、怪力を持ってそうだし……訓練では、剣を使って俊敏な動きだったけど。
「こうなるから、今回はリクにくっ付いていなかったのだわ。硬い甲羅の破片が、飛んで来るような所には居たくないのだわ」
「エルサちゃんは、リクさんがこうするってわかってたの?」
「何をするのかはさすがにわからないのだわ。けど、何かをしようとは考えていたとわかったのだわ。……リクが新しい事を思いついたら、周りに被害が出るのだわ」
「……被害って。でも、今回は周囲に何も被害は出してないぞ? 魔法も使ってないし……」
「私に被害が出るところだったのだわ! リクの頭にいたら、あの硬い甲羅の破片が、無数に降り注ぐのだわ! そんなのごめんなのだわ!」
どうやら、エルサは今回俺が何かをしようとしていると勘づいて、モニカさんの頭に移動したらしい。
何をするのかまではわかってなかったようだけど、確かに、グリーンタートルの甲羅の破片が降り注いでくるのは避けたいというのはわからなくもない。
俺は平気だったけど、鋭い破片が当たったら、チクッとくらいはするかもしれないしね。
剣で戦うならまだしも、素手だから距離も近くて、散らばる破片に身を晒してるようなものだしね。
「終わったのー! 疲れたのー!」
「お疲れ、ユノ」
リザードマンを倒し終えたユノが、俺達のいる場所へと駆けて来た。
疲れたと口では言っているけど、その声は疲れを微塵も感じさせないものだ……本当に疲れてるのかな?
まだ鞘に納めていない剣をブンブン振り回して、こちらに駆けて来る様子はまだまだ動く事ができそうだ。
お腹が減ったから、疲れたと言ってるのかもしれないね。
村に帰ったら、すぐに昼食にしよう……戦闘も終わったから、そろそろエルサが騒ぎ始めそうだし……。
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