第316話 魔物の素材回収
「これで、村の依頼は達成だね?」
「そうね……少し、謝らないといけないけど……」
「……そうだな」
「ん? どうして……? あぁ……」
モニカさんとソフィーが、少し目線を逸らすようにしながら、言いにくそうにしている。
どうしてかと思って周囲を見てみると、ビッグフロッグが倒れてる場所の周辺や、モニカさん達が戦っていた場所を見て理解した。
モニカさんの魔法なんだろう……土や作物が焦げているのが見える。
それと、モニカさん達がビッグフロッグの舌を避けるために、色々動き回っていたから、そこかしこに足跡が付いてる。
まぁ、戦闘したんだから仕方ないと思うけど……。
俺の方も、作物を踏んだりはしないように気を付けて動いてたけど、グリーンタートルの甲羅がそこらに散乱してる。
さらに、斬り裂いたリザードマンだけならまだしも、破裂させたリザードマンもいるから……色々と気持ち悪い物がそこかしこに……。
「まぁ……正直に言って、謝るしかないかな?」
「そうね……魔物はいなくなったんだから、後は任せるしかないし……」
「私達は農夫ではないからな。農地の事は村の人達に任せるしかないだろう。……謝るくらいは……仕方ないだろうな」
とは言え、放っておいたらもっと広い範囲で農地に被害が出ていただろうし、最悪の場合は村に押し寄せて来てたかもしれない。
その事を考えると、怒られはしないだろうと思う。
罪悪感みたいなものがあるから、悪びれずにいる事は……俺には無理そうだけど。
「っと、そうだ。リザードマンとかの討伐証明部位や、素材ってどうなるんだっけ?」
「素材は買い取ってくれるって言ってたわよね」
「リザードマンは、背中のウロコの一部だな。ビッグフロッグは、その長く伸ばす舌だ。それらが討伐証明部位と同時に素材になる」
「成る程ね。……グリーンタートルは?」
「グリーンタートルは、甲羅の破片だ。だが……証明部位としては認められるから、討伐報酬が出る可能性はあるが……素材としては使えない」
「そうなんだ」
ソフィーの説明を聞きながら、散らばっている証明部位や素材を集める作業を始める。
……魔物を倒す事よりも、こういった作業の方が冒険者って感じるのはなんでだろう……?
収集系のゲームが好きだったからかな?
それはともかく、グリーンタートルの破片が証明部位になるようだけど、素材にはならないらしい。
硬い甲羅だから、加工したら防具とかに使えそうだと思うんだけど……加工が難しかったり、ガラスみたいな性質で割れやすいから無理なのかな?
「破裂したリザードマンは駄目ね。ウロコもバラバラになってるから、素材としては使えそうにないわ」
「グリーンタートルも、だな。これは仕方ないのだが……破片が散らばった上に混ざり過ぎて、討伐数を正確に報告できそうにない」
「……そうだね。じゃあ、ビッグフロッグの舌と、無事に残ってるリザードマンのウロコと、少しだけグリーンタートルの破片を持って帰ろう」
「そうね」
「わかった」
「わかったの!」
俺が拳で破裂させたリザードマンは、素材としては不十分な状態になってしまったようだ。
色々と試すためだったとは言え、今度からはもう少し考えて魔物を倒すように気を付けよう。
グリーンタートルは、討伐数がわからないから、討伐したという事だけを証明するため、少しだけ回収する事にした。
ビッグフロッグの方は、戦闘中に切った舌と、残った舌を切り取って回収だ。
「でも……グリーンタートルの破片は邪魔にならないかな? リザードマンはまだしも、こんなに硬い物が土に混じったら、作物は育たないんじゃ……?」
「それなら大丈夫だ。こいつらの甲羅は、死んでしまえば土への栄養分になる。硬いのも、数日経てばやわらかくなるし……日頃土を食べているからか、農地にとって良い栄養になるようだ」
「へぇ~、そうなんだ」
グリーンタートルは、農地なんかの栄養のある土を食べて、倒した後の甲羅は、農地に必要な栄養になる……変な関係だなぁ。
それに、数日経つと甲羅も柔らかくなるというのが、防具とかに加工できない理由っぽいね。
硬い性質を死んでも保てないのなら、素材にならないんだろう。
「それじゃ、グリーンタートルの破片が散乱していても、怒られないのかな?」
「あぁ、むしろ喜ばれるぞ。グリーンタートルの甲羅を肥料にした農地は、作物がよく育つらしいからな」
「さすが、センテで冒険者をやっていただけはあるわね」
「ははは、まぁな。センテの農家から依頼を受けた時に聞いた話だ。あっちはグリーンタートルが出ないから、こっちの地域を羨ましがってたぞ?」
「けど、実際に出たら、耕して丹精込めて作った農地を荒らされるから……一長一短だよね」
「そうだな。……まぁ、無い物ねだりに近いんだろう」
ソフィーは、俺やモニカさんが冒険者になる前から、それなりの期間冒険者として活動してた。
広い農地を持っていて、農作物の街であるセンテにいたから、そういう話には詳しいだろう。
冒険者はその土地土地で、必要な知識が違って来る事もあるらしいから、これも地域性なんだろうね。
冒険者になって日が浅い俺やモニカさんは、マックスさんに教えられた知識以外には弱い。
やっぱり、ソフィーとパーティを組んで正解だったね。
「うへ、気持ち悪い……」
「はは、さっきまで生きていたビッグフロッグの舌だからな」
地面に落ちていた、切り離されたビッグフロッグの舌を拾おうとして手で触れる。
その舌はまだビッグフロッグの唾液なのか何なのか、べっとり湿っていてぬるりとした感触で気持ち悪かった。
魔物の解体には多少慣れて来たけど、蛙のぬるぬるしたのにはすぐに慣れそうにないなぁ。
「こっちもぬるぬるしてるわよ?」
「……平気なの、モニカさん?」
リザードマンの無事だったウロコと、比較的大きなグリーンタートルの甲羅の破片を持ち上げ、俺に見せて来るモニカさん。
両手にそれぞれ持ってるんだけど、何故か見せて来る表情は少し自慢気だ。
……女性だから、爬虫類系のぬるぬるしたのは苦手だと思ってたんだけど……。
「父さんに鍛えられたからね。魔物を使った食材にも、こういうのはあるのよ。だから結構平気ね」
「……そうなんだ。俺は、すぐには慣れそうにないよ」
「冒険者なら、こういうのにも慣れないとな」
「リクさんにも、苦手な物があったのね、ふふ……」
笑いながら俺の様子を見ているモニカさんとソフィー。
ユノはモニカさんにくっ付いていたエルサを引きはがし、一緒に素材を拾い集めてる……あっちも平気そうだな。
爬虫類系とは、これまで縁が無かったからなぁ……縁があったからといって、慣れるものでも無いと思うけど……。
そう言えば、姉さんは蛇とか苦手だったっけ……今はどうなんだろう?
「鞄に入れたくないなぁ……」
思考を別の方向に向けながら、何とか辺りに散らばってる素材や証明部位を集め終わる。
持ち帰るために、鞄に入れる段階になって気付いた。
このまま入れたら、鞄の中にある他の物も一緒にぬるぬるになってしまうんじゃないかと。
エルサ用のキューも入ってるから、そうなったら文句を言われそうだなぁ……。
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