第312話 魔物討伐開始
「あちらです……」
「確かに魔物達が群れてるな……ビッグフロッグがいるのに、リザードマンが食べられずに無事でいるのが不思議だが……」
「そうね。グリーンタートルは……そこら中にいるわね。……土を食べてるのかしら?」
「結構数が多いなぁ……」
村人に案内されて、俺達は魔物から少し離れた場所で、木に身を隠しながら様子を窺う。
言われてた通り、そこにはリザードマンの他、ビッグフロッグやグリーンタートルがいた。
リザードマンは想像通りだけど……ビッグフロッグは初めて見ると大きく感じるね。
馬よりも大きいとは聞いていたけど、実際に見てみると大きすぎてやっぱり気持ち悪い……4メートルくらいあるんじゃないかな……横幅も広いし。
グリーンタートルは、他の魔物達の足元で甲羅から顔と思われる物を出して、地面に突っ込んでる。
ああして、土を食べてるんだろう。
大きさは2メートルもないくらい……かな?
地面にいるからわかりづらいけど、多分リザードマンと同じくらいで、人に近い大きさだ。
あの甲羅だと、リザードマンの全身が隠れそうだし、盾に使われたら確かに面倒だね。
「あいつら、俺達が耕した畑を……」
「先日ここまで移動して来て……ここらの作物や土を食べてるんです……」
「そうですか……」
魔物達へ、憎しみのこもった視線を向ける村人二人。
確かに、精魂込めて作った畑や作物を荒らされたら、農家としては許しがたい事だろうと思う。
誰だって、一生懸命やった事を台無しにされるのは嫌だしね。
魔物達の周囲には、収穫を待つばかりだったと思われる作物が散乱していた。
じゃがいもやキャベツ、キューもあった。
グリーンタートルは地面に顔を突っ込んで、耕した畑の土を食べ、ビッグフロッグは長い舌を出してそこらに散乱した作物を拾い上げて丸呑みにしている。
リザードマンは肉食なのか、作物を食べたりはしていないけど、数十はいそうな数がそこらをウロウロしているため、時折作物を踏み潰していたりする。
この光景を見たら、農家の人じゃなくとも怒りが沸いて来るよね。
「思ったより数が多いな……」
「そうね。特にリザードマンの数が多いわ」
「そうだな。どうする?」
魔物達の方を観察し、ソフィーとモニカさんが小声で相談する。
リザードマンが数十と、グリーンタートルが十数体。
ビッグフロッグは4……5体か……大きくて数えやすいね。
考えていたよりもリザードマンの数が多いから、他の魔物にかまけてたら攻撃を受けてしまいそうだ。
リザードマンは、爬虫類の体に刃こぼれをしていそうな剣と、木の盾を持っている。
ビッグフロッグは、茶色いイボガエルが単純に大きくなった姿で、見た目に気持ち悪い。
グリーンタートルは、人の大きさ程の甲羅を持ち、小さく短い手足と顔を持ってる……あれで重そうな甲羅を支えてどうやって移動してるんだろう?
「……まずは、俺とユノが突撃して、リザードマンの数を減らすよ。その後は、昨日話した通りに……」
「……わかったわ。リクさんとユノちゃんなら、そうそう危険な事はないでしょうしね」
「了解した。……私達が倒す分も残しておいてくれよ?」
「ははは……さすがに全部俺達だけで倒したりはできないよ」
モニカさんとソフィーに、俺とユノで突っ込んで数を減らす事を提案。
二人に了承され、ソフィーの冗談に笑って返す。
……冗談だよね?
「貴方達は、先に村へ帰っていて下さい。万が一、魔物がこちらに来たら危ないので」
「わ、わかりました!」
「はい!」
ここまで案内してくれた村人二人を、先に村へと向かわせる。
もし、こちらにリザードマンとか、ビッグフロッグの舌が伸びて来たら危ないしね。
戦う俺達以外の人が危険な目に遭う可能性は、できるだけ下げるべきだ。
「よし、そろそろ行こう。ユノ、準備はいいかい?」
「いつでも良いの!」
「……私はこっちにいるのだわ」
「今回、エルサちゃんはこっちなのね……。ちょっと変な感じだけど、何とかするわ」
「エルサ、邪魔はするなよ?」
「わかってるのだわ!」
「……こっちでも良かったのだが」
村人達が十分に離れるのを見守って、ユノへと声をかける。
ユノは、剣と盾を持っていつでも突撃できる状態だ……むしろ早く突撃したいようにも見える。
エルサは、俺の頭にくっ付いていたけど、ふわふわと飛んでモニカさんの頭へ。
……俺が暴れるとでも考えてるんだろうか?
ともあれ、モフモフが感じられなくなるのは寂しいけど、モニカさんの方には問題がなさそうなので、任せる事にする。
エルサに邪魔をしないよう注意をしつつ、魔物達へと視線を向け、突撃するのに備える。
ソフィーが少し羨ましそうな目で、モニカさんを見ていた気がするけど、それは気にしない。
「じゃあ、行くぞ!」
「はいなの!」
木の影から飛び出し、畑を踏み荒らしてるリザードマンへと向かって走り込む。
「ふっ!」
「はいっなの!」
まずはとばかりに、一番近くにいたリザードマンを、ユノと二人でそれぞれ1体斬り倒す。
俺は持っていた盾ごと体を半分に、ユノは首に剣を一閃させて跳ね飛ばした。
皮膚が硬いと言われてたけど……思ったほどじゃないね……剣が良いからなのかな?
そのあたりで、魔物達が俺達の存在に気付いた。
……今頃気付いても、もう遅いよ。
「野菜を! 無駄に! するな!」
「私が! 食べる! 物だったの!」
言葉を発するたびに、剣を振り、そのたびにリザードマンの体を一刀両断する。
ユノも同じようにして切りかかってるんだけど……さすがに全部ユノが食べる物じゃなかったんじゃないかなぁ?
「「ゲコォォォォォ!!」」
「ビッグフロッグがこっちに向いたな……はぁっ!」
「舌が飛んで来るの! せいっ!」
蛙の雄叫び? を上げてビッグフロッグが全て俺達へと体を向ける。
その間に、さらにもう一体、リザードマンの体を袈裟斬りにして斬り捨てる。
ユノの方も、リザードマンの手足を切り刻んで、最後に首をはね飛ばした。
……俺にはできそうにない早業だな……そんなに野菜を駄目にされたのを怒ってるのか。
食べ物の恨みは恐ろしい……。
「ゲコォ!」
「ユノ!」
「大丈夫なの! ん!」
離れた場所から、ユノに向かってビッグフロッグが口を開け、長い舌を伸ばした!
思わずユノに向かって叫ぶが、ユノはわかっていたようで、軽々とその舌を盾で防ぐ……が。
その舌は盾に当たって防がれるだけでなく、その後盾に巻き付いて捕まえてしまった。
……触手みたいに、自由に動かせるのか……厄介だね……。
「ゲコッゲコッゲコッ」
ユノの盾に舌を巻きつけて、引っ張るようにするビッグフロッグ。
それは、捕まえた事を喜んで笑っているようだった。
「ユノ、大丈夫か? ふん!」
「大丈夫……なの!」
ユノの方に声をかけつつ、近くにいる襲い掛かって来たリザードマンを斬り捨てる。
ユノは大丈夫と言ってるけど、巻かれた舌が盾を引っ張って、踏ん張るので精一杯なようだ。
剣を使う余裕は無さそうで、両手で盾を持って引っ張り合いをしている。
できれば助けに行きたいけど……少し距離が遠いな……10歩くらい離れてるし、そろそろリザードマンがグリーンタートルの甲羅を持ち始めた。
ユノに構わずリザードマンとグリーンタートルを相手にするか、助けに行くか……どうするか……。
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