第311話 ロータの決意と魔物討伐出発
「ふむ……そうだな。じゃあ、私とモニカはビッグフロッグを主に担当し、リクがグリーンタートルを担当。そして、ユノがリザードマンと戦いながら、余裕があればグリーンタートルも狙う……でいいか?」
「そうだね。それが一番良いかもしれないね」
「詳細な数がわからないから、それでも難しい気はするけど……リザードマンの数が多かったら、ユノちゃんだけでは厳しいだろうし、ビッグフロッグの数が多かったら私達が厳しいわ」
「それなら、今言った担当に別れても、自分に向かって来るグリーンタートル以外の奴らは、各自で倒す……というのでどうだ?」
「リクさんやユノちゃんも、自分に向かって来るビッグフロッグを倒してくれるのなら、ありがたいわ」
「それでいいんじゃないかな。もしグリーンタートルが盾に使われたら、そいつからは距離を離して俺かユノを呼んで。先にそいつを倒しに向かうから」
「わかったわ」
「あぁ」
「頑張るの!」
村の近くに出た魔物を倒す打ち合わせをし、その日は解散となった。
解散って言っても、モニカさんやソフィー、ユノが隣の部屋に移動するだけなんだけどね。
宿の受付で、お湯をもらって体を拭き、マルクスさんと雑談をしながら、それぞれのベッドに入って就寝した。
もちろん、エルサは俺がモフモフしながらだけど……マルクスさんがちょっと触って見たそうだったのは、面白かった。
……やっぱり、モフモフは共通言語で癒されるものなんだね。
ちなみに、エルサはお風呂に入れない事に不満そうだった。
というより、風呂上がりのドライヤーが無い事が……かな。
いつも風で乾かしながら寝るからなぁ……癖になってるのか。
――――――――――――――――――――
「おはようございます。イオニスさん、ロータ」
「おはようございます、リクさん」
「おはよう、リク兄ちゃん」
翌朝、支度を整えて宿を出ると、そこには村長であるイオニスさんとロータ、後数人の村人達が揃ってた。
「リク兄ちゃん、これから魔物退治にいくんだろ? 僕も連れてって!」
「ロータ……」
「ロータ、さっきから言ってるだろう? 魔物を相手にするのは危険だから、まだ子供のお前は連れて行けないと……」
「でも……父ちゃんのようになるって決めたんだ。だから……」
ロータは、俺達に付いて来て一緒に魔物討伐をしたいようだ。
というより、魔物を倒すところを見たいのかな?
その手には、父親のヌートさんから受け継いだ剣が、鞘に入ったままで握りしめられてる。
イオニスさんとロータの後ろには、昨日見たロータの母親がいて、ロータの事を心配そうに見ている。
「……ロータ。気持ちはわかるけど……お母さんを心配させちゃいけないよ? ロータはまだまだこれからだ。だから、今はお母さんを心配させないようにして、しっかり力を付ければ良い。戦えるようになるのは、大人になってからで十分なんだよ?」
「……でも……」
ロータの前で、しゃがみ込んで目線を合わせ、言い聞かせるようにして話す。
それでもロータは、諦めきれないようだ。
「ロータ。今は焦らずに、ゆっくりと力を付けるんだ。お母さんや家族を守るのは、ロータの役目なんだからね?」
「……うん、わかった」
何とか納得してくれたようで、ロータは渋々頷いた。
後ろにいる母親も、少しホッとした表情をしてる。
ロータを止めても、聞かなかったんだろうなぁ。
それにヌートさんを亡くしたばかりなんだ、ロータが危ない場所に行くなんて、母親なら心配して当然だしな。
「……わかったけど……」
「ん、どうしたんだいロータ?」
頷いてくれた事で満足していると、ロータが真剣な表情で俺を見て、何かを言いたそうだ。
「魔物を倒して帰って来たら、俺に剣を教えてよ! 父ちゃんはまだ小さいからって教えてくれなかった……でも、もう父ちゃんはいないんだ! だから……」
「そうか……でもなぁ……」
ロータは俺に剣を教えて欲しいらしい。
ヌートさんは、ロータがまだ子供だからもっと成長してから教えようとしたのかもしれない。
それはわかるんだけど……。
俺にはロータに教えられるような剣の知識がほとんどない。
俺がいつもやってるのは、剣を力任せに振り回してるだけだからね。
合同訓練で、剣の握り方を思い出したから、それとあとは刃筋を通して振るくらいしか、俺に教えられる事はない。
こういう時は……。
「ソフィー、ロータに剣を教えてやってくれないか?」
「私か?」
「うん。俺よりも剣の扱いが上手いし……俺が教えてもね……」
「まぁ、そうだな。リクの剣に私は敵わないが……技術という意味では、私の方が上だろうからな」
「うん。それに、エルフの人達にも教えてたでしょ? だから、俺より教え方は上手いと思うから」
「ふむ……わかった。ロータ、私が剣を教えよう。それでは駄目か?」
「……本当はリク兄ちゃんが良かったんだけど……剣を教えてもらえるのに、我が儘はいけないよね。わかった、ソフィー姉ちゃん、よろしく!」
「これ、ロータ! ご迷惑になるような事を言わないの! それに、教えてもらうのなら、言葉遣いはちゃんとしなさい!」
「……わかったよ、母ちゃん……。ソフィーお姉さま、よろしくお願いします」
「う、うむ。それは良いのだが……さすがにお姉さまとまでは呼ばなくて良いぞ? さっきまでの呼び方で大丈夫だ」
「わかりました、ソフィー姉ちゃん!」
俺が教えるのは不十分になるだろうから、ソフィーに教えるようお願いした。
ソフィーはエルフの集落でも、剣の扱いをほとんど知らないエルフ達に教えてたからね。
俺が教えるよりもロータのためになると思う。
了承してくれたソフィーがロータの前に行き、目線を合わせて聞くと、ロータは一応納得してくれたようだ。
本当は俺に教えて欲しいと考えてたようだけど……俺に教わるより、ソフィーに教わった方が良いからね、ロータ。
ロータの母親が、言葉遣いを注意すると、ソフィーの事をお姉さまと呼んだ。
その事に、様子を見守っていたモニカさんが後ろで笑いを堪えてる。
それを気配で察したのか、ソフィーがちらりと後ろを見た後、ロータに訂正させた。
エルサや獅子亭の料理が関わってなければ、凛々しい女性に見えるソフィーだから、お姉さまというのも似合ってるとは思うんだけど、本人やモニカさんとしては、微妙だったようだ。
「それじゃイオニスさん、ロータ行って来るよ」
「お気をつけて……どうか、魔物を退治して下さいませ」
「いってらっしゃい、リク兄ちゃん!」
ロータの師匠がソフィーに決まってから少し、俺達はイオニスさん達に見送られて村を出た。
魔物の所へ向かうのは、俺とモニカさん、ソフィーとユノに頭にくっ付いてるエルサだ。
あと、道案内にと、二人程村の人が付いて来てくれてる。
移動は徒歩で、馬車で行くような場所ではないからとの事。
近道のために、途中で農地を通るから、馬や馬車は通れなくても仕方ないよね。
魔物達がいる場所へ行くには、そっちの方が早いらしい。
ちなみにマルクスさんは留守番だ。
討伐依頼を受けたのは、俺達冒険者だし、もし何かの弾みで魔物が村へ向かい、それを俺達が取り逃がした時の事を考えて、守りのために残ってくれた。
これで、何も心配なく魔物討伐へ行けるね。
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