第304話 休憩場所の作成と合流



「情報部隊? ハーロルトさんの部隊ですか?」

「はい。ハーロルト様は国の内外問わず、全ての情報を収集、管理をしているのです。部隊は各地に大量に送り込んでおり、野盗達や裏稼業をしている者をはじめとした犯罪の捜査もしております」

「そうなんですか、大変そうですね……」


 ハーロルトさん、そんなに色んな事をしてたのか……確かに情報を扱う部隊を率いて、忙しそうな人だと思ってたけど……。

 日本で言うと、警察機構のような捜査機関も兼ねてるのかもね。

 それでいてヴェンツェルさんや姉さんの相手……ハーロルトさん倒れないと良いけど……。


「それじゃ、昼までしばらくここでのんびりね」

「そうだね。討伐隊の人達が来て、引き渡さないといけないからね」


 マルクスさんとの話も終わり、モニカさんと焚き火の前で話す。

 連れて来た女性達は、警戒しているわけじゃないだろうけど、少し離れた場所に座り、不安そうにしている。

 もう安全なんだけど、経緯が経緯だから、不安がまだぬぐえないのは仕方ないのかもね。


「じゃあ、皆の分も昼食の用意をしておくわ。今回は馬車で来て良かったわね、荷物が多く持てるから」

「そうだね。いつもは持てる分だけだけど、それ以上の荷物を運んで収納していられるのは、馬車の利点だね」


 モニカさんが馬車の方へ行き、荷物を入れておいた所から食料を取り出す。

 エルサに乗って移動する時は、荷物は基本手に持てるだけだから、それ以上の物を運べる馬車はやっぱり便利だね。

 エルサにはそれ以上の荷物を載せられるだろうけど……地上に降りた時、困るからね。

 さすがに、エルサがずっと大きくなってて、荷物を持ってもらうわけにはいかないし……大きいとキューも大量に食べるしね。


「ふむ……皆で食べるには、ちょっとスペースが狭いかな?」


 モニカさんが食材を調理し始めたのを見ながら、周囲を見渡し呟く。

 テントは森と道の間でギリギリ何とかなったけど、皆で食事をする事を考えると、少しスペースが狭い。

 さすがに、道の上で焚き火をして食事するわけにもいかないしね。

 木に繋がれてる野盗達は……どうでも良いか。


 馬車や馬もいるから……横に広がるくらいしかできないだろうし……。

 やっぱり、食事は皆で囲んで皆で食べたいよね……という俺の願望? から一考する。

 確かここって、森のほぼ真ん中あたりだから……ちょうど良いか。

 ここに休憩所を作ってみよう。


「おっと……勝手に行動するのはだめだね」


 さっきモニカさんとソフィーに怒られた事を思い出しつつ、焚き火の傍を離れ、何やら剣の話をしているマルクスさんとソフィーに近付いた。


「マルクスさん、ソフィー。ちょっと相談なんだけど……」



 マルクスさんとソフィーに相談し、許可を取ってから皆と少し離れた場所へ。

 ロータの父親が眠っている墓標の近く……ここなら、多分大丈夫だね。


「……クエイク!」


 ズガァァァァン!! という激しい音を立てて、俺の前にあった森の木々が吹き飛ぶ。

 ちょっと派手にやり過ぎたかもしれないけど、根っこから飛ばしてるから、飛んで行った木は後で再利用できそうだ。

 抉れた土が吹き飛び、穴が開いていたので、土を動かすイメージの魔法を使って埋める。

 土台は固い方が良いだろうから、踏み固めるよりも固く、土が凝縮する感じだね……うん、何とかなった。


 魔法で細かい魔力や、小さな魔法を……と考えていなければ何とか失敗しないで使う事ができるね。

 ロータの父親を弔った所にも影響が及ばないように調整したし……大丈夫そうだ。


「皆、できたよ」

「……リクさん、そんな気軽に……」

「まぁ……今までの事を考えると、これくらいはできても驚かないが……森を切り開く者達が見たら、泣きそうだな」

「リク様の魔法は、ここまでの物なのですね……凄まじいです」

「リク兄ちゃんすげぇや!」

「「「「「…………」」」」」


 木を取り払って、ある程度整地を魔法でして……考えていた事を実行して、皆の方へ振り替える。

 モニカさんとソフィーは呆れたような雰囲気だったけど、マルクスさんとロータは感心してくれた。

 まぁ、ロータの方は何だかよくわからずに喜んでるだけのようだけどね。

 助けた女性達は……目の前で起こった事を理解するのに大変なようで、口を開けてポカンとしてる。

 ……もう少しゆっくり、驚かさないようにやった方が良かったかな?


「今の音は何だ!?」

「向こうからだ! 何者かが戦っているのかもしれん!」

「魔物が誰かを襲っているのかもしれん、急ぐぞ!」

「「はっ!」」


 広場を作って満足していると、北側の道の方から、馬が走る音と叫び声が聞こえて、こちらに近付いて来た。

 ……何か、聞いた事のある声も聞こえた気がしたけど……王都からの討伐隊かな?


「リク殿!? この場所は……ここで一体何が!」

「あ、ハーロルトさん? えぇとですね……」


 馬に乗って駆け付けて来たのは、ハーロルトさんとそれに続く兵士さん達。

 さらに筋肉鎧と金属鎧に身を包んだヴェンツェルさんもいた……。

 さっきハーロルトさんの話をしたばかりで、ここで会う事になるとは思わなかった。

 情報部隊が捜査組織も兼ねてるのなら、わからなくもないけど……ヴェンツェルさんまでどうしてここに……暇なのかな?



「成る程……野盗達から女性達を……それで、この広場は?」

「いやー、王都から来る討伐隊を待つ間、皆が休憩する場所を作ろうと思ってですね……広い場所を作ってみました」

「リクさん、簡単に言うけど……普通はそんな事気軽にできる事じゃなからね?」


 馬から降りたハーロルトさんに、モニカさんと一緒に事情を話す。

 ヴェンツェルさんは、ロータと一緒に父親の墓標で祈りを捧げていて、ソフィーとマルクスさんは、他の兵士さん達に言って、繋がれていた野盗達を連れて行ってる。

 なんでも、捕まえたり討伐した野盗を連れて行くために、幌馬車を持って来ているのだとか……激しい音が聞こえたから、ハーロルトさんやヴェンツェルさんが先行したけど、後ろに待機しているらしい。

 ユノとエルサは、捕まってた女性達の所でゆっくりしてる。

 さっき俺が使った魔法から目を逸らすように、見た目が子供のユノとモフモフのエルサを可愛がって、癒されているようだ。


「ふむ……この場所にこの規模の広場……これは使えますね」

「そうなんですか? というより、討伐隊がこんなに早く到着するとは思わなかったので……無駄な事をしたかなーと思ってたんですけど……」

「リク殿が出発して、陛下に急かされましたから……野盗達を殲滅せよとの命でした。……まぁ、リク殿に襲い掛かるという無謀な事をしたため、我々の出番はありませんでしたが……どもあれ、この場所ですな。この森は、国の南西に行く時によく通る場所なのです。今までは弱いながらも多少は魔物もいるため、突っ切るしかなかったのですが……」


 姉さんがハーロルトさんを急かして、早めにここへ来させたらしい。

 野盗達がいるとの事で、姉さんとしても早めに何とかしたかったんだろう……実際、被害に遭った人達がいるしね。

 それはともかく、ハーロルトさんは、俺が作った広場を利用できないかと考えているようだ。

 少しの間休憩をするための場所として作ったんだけど……無駄じゃなかったのかな?



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