第264話 花火のイメージと馬の練習
「火が飛び散る……円形が良いかな。まぁ、花火だし……花のイメージで……明日にでもこの世界の花を見せてもらおう」
この世界の花をじっくり見た事がないから、花のイメージが中々できない。
日本の花で良いのなら、すぐにできるんだけど……この世界に住む人達が見るんだから、馴染みのある花の方が良いだろうしね。
「色は……赤だけじゃなくて、青や緑とかかな? これも、花を見せてもらってから決めよう」
色も花に合わせるのであれば、花の観察をした後に決めた方が良いだろうね。
「あとは、変わり種で人の顔とかも良いかな? いや、文字か? あーでも、この世界の文字は詳しくないからな……」
日本語で書かれても、この世界の人達は読めないだろう。
読めるのは姉さんくらいかな?
以前何の気なしに聞いたけど、この世界に来る時、魂にこちらの世界の文字を刷り込んだらしく、読む事はできるようにしてくれていたらしい……それが無かったら、ヘルサルの獅子亭で店員募集がわからず、今頃どうなってたか……。
それはともかく、書く事はまだ完全じゃないから、文字を花火で表現はまだ難しそうだ。
「かといって、誰かわからない人の顔を花火で上げてもなぁ……?」
誰でも知ってるような人の顔……なんてのがあればいいんだけど、この世界じゃテレビも無い。
写真も当然無いのだから、人の顔は伝わりにくいだろうね。
「……いや、待てよ……一人だけ知名度があって顔が知られてる人物がいるな……」
パレードの時集まるのは、多くがアテトリア王国の人々だ。
他の国から来た人もいるだろうけど、この国に住んでる人の方が多いのは当然か。
だから、その中でよく知られてる人というのは、一人しかいない。
確か、即位する時にパレ―ドをやったって言ってたしね。
「姉さんの顔を花火にしよう。……いや、前の世界じゃなく、この世界での姉さんだな」
俺にとって、馴染みのある姉さんの顔といえば、まだ俺の姉だった頃の姉さんだ。
でも、この国の人達に知られてるのは、今の姉さんの顔……当然そっちをイメージしないといけない。
まだちょっと慣れて無い姉さんの顔だけど……明日にでも観察してイメージを固めよう。
「とりあえず、こんなところかな?」
花火魔法が炸裂した時のイメージは、色々見て明日以降に決めるとして、入念に火や煙、炸裂条件や打ち上げのイメージを固める。
完ぺきとは言い難いかもしれないけど、明日以降にまた考えて、ちゃんとした魔法イメージを固めれば良いだろうと思う。
根を詰め過ぎてもいけないしな……イメージが大事だから、じっくり考えたい。
あと、線香花火で試しに使う事もしてみたいしな。
試してイメージを変える部分も出るかもしれないし……ともかく明日にしよう。
「さて、そろそろ寝るか……」
花火のイメージを切り上げて、寝るためにベッドへと入る。
結構長い時間集中して考えてたみたいで、時間も大分遅くなってしまった。
明日もまた、パレ―ドのための準備……というより、主に馬に乗る練習があるから、寝不足にならないように気を付けないと。
「ぐぅ……スピー……だわぁ……」
「ぐっすり寝てるな……」
寝ているエルサの隣、モフモフを堪能しながらゆっくりと目を閉じ、就寝した。
――――――――――――――――――――
翌日の朝、朝食後に皆が集まったくらいに、ハーロルトさんが書類を持って部屋を訪ねて来た。
「リク殿、これがパレードの行程になります。皆様の分もありますので……」
持って来てくれたのは、昨日宰相さんが言っていた書類だ。
俺だけじゃなく、モニカさん達も分もあって、それを皆に渡す。
「私のもあるの!」
「ユノの分まで。ありがとうございます」
「いえ、ついででしたし。ユノさんにも、パレードには参加してもらいますからね。ユノさんの剣の腕前は、この年頃とは思えない程でしたからなぁ」
「ははは……」
さすがにエルサの分は無いが、ユノの分はあるようだ。
まぁ、俺がワイバーンと戦ってる間に、城に押し寄せて来る魔物の対処を、モニカさん達と協力してやってたからだろうと思う。
剣の扱いに関しても、軽々と魔物を切り刻むのだから、ハーロルトさんの言う事もわかる。
……俺の魔法で、魔物達に囲まれるような場所に飛ばされてたけど。
「これで、行程の確認ができるわね」
「口頭で伝えられただけだと、忘れる事もあるからな」
早速書類を見て、昨日伝えられてた事の確認をする。
全員の分の書類を、昨日から今までの間に用意するのは、苦労したんだろうなぁ。
この世界にコピー機を始めとした、印刷機なんてないだろうしね……実際書類も全て手書きだし。
「わざわざありがとうございます。貴族の方達にも渡したんですか?」
「それはこれからですね。私の部隊の者が渡す手筈になっております」
「ここには、わざわざ隊長さんが届けに来てくれたのね?」
「まぁ、私はこれからリク殿が馬に乗る練習もありますからね。これも、ついでです」
皆がそれぞれ書類を見て行程を確認する中、俺にはゆっくり確認する時間はないようだ。
馬に乗る練習もあるから、仕方ないか……後で、暇な時間を見つけて覚えておこう
ハーロルトさんに連れられ、今日もまた馬に乗る練習のために場所を移動する。
昨日と同じ場所で、同じ馬だ。
また馬を怯えさせてはいけないので、途中でエルサはモニカさんに預けた。
「リク、馬のたてがみより私の毛の方が良いのだわ……」
「ははは、それはそれ、これはこれ……だよ」
俺が、馬のたてがみを褒めた事を気にしてるエルサを撫でて宥め、離れて馬の所へ行く。
そこからしばらく、昼食の時間を挟んで馬に乗る練習をした。
「これだけできれば、十分でしょう。パレードでは、この馬で出てもらいます」
「ハーロルトさんが、しっかり教えてくれたおかげですよ。それに、この馬ならおとなしくて安心ですね」
パレードには、練習の時に使った馬をそのまま使うらしい。
他の馬よりも大きいから、見栄えが良いのかもしれないね。
それに、練習で何度も乗り降りしたりして接してるから、お互い慣れて来たところなのでちょっと嬉しい。
これで本番が違う馬とかだと、初めて乗る馬に不安を感じる所だった。
「でもリクさん、まだ完全に乗りこなせるわけじゃないわよね?」
「まぁね……ちょっと怪しい所もあるかな……?」
「馬に乗って戦うわけではありませんからね。移動もゆっくり歩くだけですから。パレード用と考えると、十分でしょう」
馬に乗って走るくらいはできるようになったけど、まだ全速力を出せる程じゃない。
それに、走りながら曲がる……というのが難しいんだよなぁ……歩きながらなら、問題なく落ち着いて曲がれるんだけど。
でもハーロルトさんお言う通り、走って移動したり、戦うわけじゃないから、パレードのためならこれで良いんだろう。
またいつか、時間がある時にでもちゃんと乗れるように練習すれば良い事だしね。
……その時は、またこの馬に乗れると良いな。
「リク様……」
「ヒルダさん? どうしたんですか?」
馬を厩に連れて行くハーロルトさんを見送り、帰って来るのを待ってると、ヒルダさんが入れ替わりで俺のところに来た。
夕食には早いけど、どうしたんだろう?
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